アニメ『異種族レビュアーズ』第11話の感想です。
いよいよラス前になりました。
本作は決して「ストーリーもの」ではないので、ここで思い切り盛り上がってラストへ――というものは必須ではないのですが、単純に「今後はどんなことをしてくるのだろう」というのは気になるところ。
では、順番に追っていきましょう。
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絶倫の客人
魔法都市から、いつもの食酒亭に帰ってきたスタンク達を待っていたのは、とある客人と、その居付きぶりに愛想を尽かしているメイドリーでした。
客人とはもちろん、前回の第10話ラストで登場したインキュバス。
アバンではとんでもない絶倫ぶりが描かれており、何やら危険な匂いをまとった要注意キャラなのか……と思いきや、ちょっと様子が違います。
いざベールがなくなってみると、そこにいたのは「女性はみんな素晴らしい」を標榜する、ちょっとナルシスト気味の変な男。
スタンク達のレビューに一家言あるようなのですが、敵対的ではほとんどなく、柔和に持論を展開しにやって来た、という感じ。
前回のラストで、個人的には「おっ、ラス前に何か場をかき乱す奴が現れたか?」と身構えたのですが、それは序盤のうちにどんどんしぼんでいきました。
このインキュバス曰く、スタンク達が低い得点をつけたお店の嬢達も、駄目ということは全然なく、むしろ満点に値する素晴らしいところなのだと。
いちいちお店の嬢をすべて体験してきて平気でいられる辺り、インキュバスの中でも上級にあたる凄い奴みたいなのですが、どこか間の抜けた雰囲気があり、そこがお茶目。
そんな彼は、低評価のついたお店を、次々と自分のレビューで「10点満点のお店」であると主張し始めます。
このくだり、普通に次のようなことを考えてしまう作りになっています。
「もしかしてこの男、物事の良い面を徹底的に探し出す、ものすごく良い奴なのでは……?」
万能性が多様性を見る
そして、スタンク達が低評価をつけたお店で、このインキュバスが嬢の相手をする回想が描かれるのですが……。
ここで強調されていたのが、インキュバスとしての彼の万能性。
例えば、灼熱のサラマンダーと触れ合っても全然平気だとか、小さなフェアリーに合わせて自分のモノのサイズを自由に調節できるとか。
彼の主張は、その何でもありな体質を前提としたものだったわけですね。
このことは、本作における(ある意味での)隠れテーマである「多様性」を、べつの面から語る結果になっています。
これまでスタンク達を中心にして描いてきた多様性は、次のようなものでした。
「ある者にはぴったり合うものでも、べつの者にとってはそうではないこともある。その雑多な世界で異なる価値観の存在を当たり前と思うのが多様性ある世界である」
しかし今回、インキュバスが示してみせたのは、それとは異なる方向からの多様性礼賛でした。
すなわち、「(ある意味での)上位存在にとっては、種族の違いなど些細なことにすぎない、みんな等しく素晴らしいのだ」というもの。
ちょっと現実の話をしますと、私達の多様性は、私達のスペックから考えて前者のかたちをとるべきだと思います。
どうしたって許容できないものは出てくるので、「尊重しつつ距離を置く」みたいな対策が必要になるわけですね。
しかし一部の思想の人は、無理にこのインキュバスのように「すべてを愛そう」みたいな方向を目指し、でも実際には全然それができておらず自己矛盾を引き起こしているようにうかがえます。
あくまで「私の目には」ということですが、今回のインキュバスは、その辺りのことを非常に遠回しに風刺しているようにも感じられました。
閑話休題。
で、今回のお話はどのように展開していくのだろうと思っていたのですが、意外とあっさりオチが来てしまいました。
恋人らしき(あるいはそう思っていただけの?)女性が食酒亭にやって来て、浮気者となじった挙げ句にインキュバスを刃物で深々と刺してしまう。
刺されたインキュバスは倒れますが、しかしそれでも「君への愛は本物だ」と宣言。
刺した女性も、そんなことはわかっていると号泣。
インキュバスは病院送り、女性は警察により逮捕。
……まあ、寸劇というか、茶番というか、そんな風な畳み方でした。
低評価のついたお店をあえて回り、そこにいる嬢達を楽しみ、満点をつける活動。
それを指して、カンチャルがぼそっとこう言います。
「種族の多様性って凄いね」
この一言はけっこう重いぞと、私などは感じてしまった次第です。
放蕩がお金を生み出すシステム
後半はまず「お金がない」というところから話が始まりました。
クリムを連れてお店に繰り出そうとするスタンク達でしたが、クリムは今まさに金欠状態で、お仕事を抜け出すわけにはいかないとのこと。
仕方なくレビュー報酬の先渡しをするスタンクなのですが、クリムはそれを受けて「生活費の足しにする」と優等生発言。
それに対し、スタンクもゼルも「レビューで稼いだあぶく銭は嬢に使うべき」であると主張します。
話はクリムの雇用形態に移り、天使としての「闇属性以外に耐性がある」ところを使って、何か割の良い仕事はできないかと模索する一行。
しかし、天使は大抵のことができそうな反面、どんな仕事であってもそれに特化した属性を持っている種族がおり、彼らによって席はすでに埋まっているという実態が語られます。
このくだりから想像できたのは、本作の世界は多様性がものすごく上手く機能しており、その結果としてゼネラリストにはあまり出番がなく、生き残るためには(しっかり稼ぐには)何かのスペシャリストになる必要があるようだ、という構図ですね。
この辺りも、私達の現実の多様性と、スペシャリスト・ゼネラリストの需要と供給についてちょっと考えさせられるところがありました。
そこへやって来たのが、カンチャル。
よくよく考えてみると、本作の話の起点は彼であることが多いですね。おいしい話を聞きつける才覚がある、ということでしょうか。
カンチャルがやったのは、他のレビュアーがレビューを書いたら、そこから本家であるスタンク達にマージンが渡るシステムを構築したこと。
これにより、一行の手元にはかなりの大金が集まることになりました。
それを祝す意味も込めて、スタンク達はそのまま食酒亭が閉まるまで飲み続けます。
そして、呆れ気味のメイドリーにもう注文は締め切っていると言われたことをきっかけに、お酒を出す嬢のお店に場所を変えることになったのでした。
酒ですべてを失う典型例
一行が向かったのは、クルーラホーンのお店『みんな酒の精』。
実際に行為に及ぶ前に、とにかく店中で飲んで飲んで飲みまくる、というのが特徴の場所となっている様子。
そこでスタンク達は、すでに泥酔状態にあったにもかかわらず、それに重ねて飲みまくり、そのまま嬢との行為に及び――。
気づいたら、朝。目覚めたのは宿屋のベッドの上。
昨夜のことをまったく覚えていないスタンク達(アルコールの効かないクリム除く)でしたが、足元には、どうやらそれでも何とか書いたらしいレビューの紙が散らばっていました。
しかし、その内容はまったく意味不明で、売り物として使えるものではない。
ではもう一度お店に行こうかと思いきや……手元のお金は、昨夜の豪遊ですべて使い切ってしまった模様。
こうなれば仕方ない。
そう腹をくくったスタンク達が始めたのは、もともとの本業である冒険者稼業。
戦って戦って、依頼を次々とこなして、何だかわかりませんがその家庭で世界崩壊の危機まで救ったとか救わなかったとか――。
というところで、オチました。
おわりに
今回は、個人的にはちょっとパワーが足りなかったのではないかな、というところです。
多様性についての面白い刺激は得られたのですが、お話としての「お馬鹿なテンション」には少し欠けるところがあったのではないかなと。
インキュバスに一波乱作って欲しかった願望が、ほとんど叶わなかったせいかもしれません。
あと、前半も後半も茶番的なオチだったことが、私には少し興ざめの方向に働いてしまったのかもしれません。
いよいよ残すところはあと1話となりました。
べつにラストだからといって何か特別なノリが繰り広げられるとは思えず、あったとしても「なんちゃって」なのではないかと予想しているのですが、さてどうなるでしょうか。
楽しみに視聴したいと思います。
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