2020年の冬アニメ『異種族レビュアーズ』の第1話を視聴したので、ざっくり感想を書いていきたいと思います。
結論としては、とても面白く、今後に期待できるスタートを切っていたのではないかなと。
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明快でわかりやすいテーマ
本作のテーマは単純明快です。
「異世界で様々な種族の風俗に出向き、えっちしてその評価をする」
これ以上、何も足すことはありません。「要するに」とか付ける必要は一切なく、まんまこれがすべてなお話です。
しかしその単純明快さは、そうであるが故に逆に奥深くなっているんですよね。
詳しくは後述しますが、価値観の相違というものが、非常にわかりやすく、しかも優しく、表れているのです。
いろいろな種族がひしめく異世界が舞台で、人間はあくまでもその一員にすぎない。
そういう設定の中で、あくまで面白さを出すために、人間の価値観がたくさんの中の一つでしかないこと、何ならマイノリティに属することもあるのだということが語られるわけですが、ここがとても「教育的」なのです。
風俗という題材と、その教育的なところが、エンタメとして見事に融合していることに、思わず感心してしまったのは私だけではないでしょう。
また、その本質が序盤の短いやり取りで100%理解できるようになっている構成も、作劇のお手本のようで良かったと思います。
前半のエルフ談義で登場したパワーワード、どれも輝いていましたね。
500歳の美人エルフを指して「マナが腐ってる」「腐葉土をイメージさせる加齢臭」。
50歳の熟女人間を指して「内在する生命力が芳醇」。
こんな世界観説明能力の高い猥談、初めて聴きました。
キャラクターもOK
人間、エルフ、天使
メインキャラは、人間のスタンク、エルフのゼル、天使のクリムの3人。
スタンクとゼルに関しては、あえて特筆すべきところのない造形を選んだなという感じで、良い意味で感想は出てきませんでした。
でもクリムは変化球でしたね。
最初は女の子かと思っていたのですが、両性具有。しかも、あとの2人と風俗巡りをすることになるので、物語上に役として表れるのは主に男性性のほうです。
これってなかなかマイナーなニーズを押さえに行っている気がしたのですが、それ系が趣味ではない私にも面白く感じられたので、正解なのでしょう。
個人的には、天使の輪の欠け方と、何だかんだで流されるように風俗にハマっていく堕天ぶりが観ていて楽しかったです。
メイドリーの立ち位置
この種の異世界モノにはお馴染みですが、本作にも舞台のメインとなる酒場に、看板娘的なキャラがいます。
メイドリーという有翼人の少女。
この子が良い感じに彩りになっているのが、私には印象的でした。
風俗の話で盛り上がる男衆を尻目に「嫌ね男って」みたいなことを言いつつ、心底軽蔑するには至らず、何だかんだである程度の親しみを持ってくれるポジションが、個人的に好みだというのもあります。
今回の「レビュー」対象が自分と同じ有翼人だとわかったときの、何とも言えない恥じらう感じがまた可愛らしくて良かったですね。
いつかスタンクと彼女のあいだに、何かあるかもしれないな、という淡い期待を持ってしまったのは私だけでしょうか……?
ストーリー・イズ・シンプル
テーマが先述した通りなので、ストーリーもとにかくシンプルです。
中には「ストーリーなんて無かった」と主張する人もいるのではないでしょうか。
とにかく大事なのは「風俗に行って異種族の嬢と致してレビューする」ことであり、本作におけるストーリーとは、それをお話のかたちに整列させる仕事のことなのです。
もちろん、それでまったく構わないわけですね。むしろ余計なことをしたら焦点がぼやけてしまうとさえ言える。
有翼人を一人一人レビューしていくシーンは、素直に面白かったです。
TV番組風の演出は、かなりふざけているのですが、実を言うと視聴し終えて改めて考えたときに初めて、そのふざけ具合にピンと来ました。
それくらい、良い意味で何でもアリなストーリーだったんですよね。
クリムが「砂浴びプレイ」の需要を疑問視するところとか、各レビュアーのコメントも凝っていて、異種族感もばっちり出ていたと思います。
ちなみにレビュー関係で個人的にツボだったのは、10点満点で点数をつける際に、フツーにアラビア数字が使われていたことですね。
通常、異世界モノだったら、それっぽさを演出するために文字関係はオリジナルの「読めないもの」を用いるのですが、本作はそういうことはしません。
ついでに言えば、お店の看板なども全部日本語。
これを他の異世界モノがやったら手抜きであり突っ込みどころにしかならないのですが、本作の場合はこれで全然平気なのが、ずるいと言えばずるい作りではあります。
女体を押さえた作画
まだ1話なので、作画をどうこう言うのは早すぎるとは思うのですが、とりあえず女体にはしっかり力が入っていたので、この感じなら最後まで要所は押さえてくれそうだな、という期待は持てました。
基本、そこさえきちんとできていれば、それで成立してしまう作品なので、制作がピンチになっても、リソースの振り分けで何とか乗り切って欲しいところです。
欲を言えば、えっちい絵に止め絵が多く、おっぱいが揺れるシーン等が観られなかったのが物足りなかったかもしれません。
これはコストがどうのではなく、放送できるできないのリスクの問題だったかもしれないので、簡単にああしろこうしろとは言えないところなのですが、やはりアニメなので、そういう描写にも動きが欲しいなと感じるところではありました。
深堀りの余地
テーマの項でも触れましたが、本作はその世界観に、ある種のメッセージ性が備わっています。
多種族が異なる価値観で生きていることを強調したお話であるがゆえの、非常にタイムリーな「多様性」描写です。
ここで重要なのは、作者が何を考えて本作を生み出したかは、この際まったく関係がないということです。
こういうことを話題にすると、よく「作者はそこまで考えてないよ」みたいなことをしたり顔で言う人が出てくるのですが、それは的を外した主張でしょう。
なぜなら、作品考察は「何を作ろうとしたか」ではなく「何が出来上がったか」に焦点を当てて行うものだからです。
小難しい用語で言うと「作者の死」とかになるのですが、まあそれは置いておくとして。
そんなわけで、本作には多様性について考えさせられるくだりが(作者の意図がどこにあるかとは無関係に)随所に観られるのが、一つの魅力になっています。
そこについて考えたときに、私が興味を持ったのは、いわゆるリベラルな方々が本作を視聴したときに、「多様性がわかりやすく描かれていること」と「女性が性的消費されていること」のどちらを大きく見るかな、ということでした。
前者に重きを置くなら、本作はコメディでありながら、社会的にとても有意義なコンテンツにもなり得ます。
しかし後者に重きを置くなら、いわゆるリベラルな方々が親の仇のように憎悪する対象となるでしょう。
果たして彼らに本作を見せたら、どちらの反応が返ってくるのでしょうね。
基本的には「彼らに見つからないまま無事に放送を終えて欲しい」という感じなのですが、その一方で、もしもの話としての「リベラルと本作の邂逅」にある種のワクワク感を抱いてしまう、そんな第1話でした。
おわりに
紳士アニメは大好きで、どのシーズンにも必ず1本はそういうものがなければならない! と思っている人間なので、本作のようなものが観られるのは本当に嬉しいことです。
まだ始まったばかりで、これからのことは何とも言えませんが、ぜひ勢いと鮮度を保ったまま、最後まで駆け抜けて欲しいですね。
というわけで、『異種族レビュアーズ』第1話の感想でした。
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