天国的底辺

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中国輸入で大失敗し、1年で借金抱えて撤退した話:その8

 中国輸入ビジネスの大失敗談、第8回です。

 続き物となっておりますので、第1回目の記事から順にお読みいただければと思います。

 

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価格設定と広告費

 すでに述べたことですが、Amazonのアルゴリズムに変更があったと見られるため、第一の商品と第二の商品では、初期の販売戦略が大きく異なりました。

 第一の商品のときは、とにかく可能な限り安い値段をつけて、できるだけ多くの個数を売ることで、検索順位の上位にのぼっていき、1ページ目のトップレベルまで行ってから値段を本来の高さに戻して利益を取りに行く、というやり方をしていました。

 しかし第二の商品のときは、極端な安売りが――というか、その後の極端な値上げが、大きなマイナス評価に繋がってしまう、というのがコンサルタントさんの分析でした。

 従って、初動の値下げはそこそこに留めておく必要がありました。

 

 では、その代わりに新参者が何を武器にしてのし上がっていくかというと、広告です。

 Amazonの広告は「スポンサープロダクト」と呼ばれているのですが、この広告は基本的に、キーワードごとの入札形式となっています。

 例えばスマホケースを売るとしたら、「スマホケース」「スマホケース かわいい」「スマホケース 軽い」といった、お客様が検索しそうなキーワードを選び、入札額を設定するのです。

 その入札額が大きければ大きいほど、検索結果一覧のスポンサープロダクト枠の先頭に近い位置に、商品を表示することができるようになるわけです。

 

 第二の商品は、最終的な値段を約1,900円にする予定でいました。

 以前なら、これを500円とかで投げ売りしていたところですが、そういうわけにはいきません。

 そこで、Sさんからのアドバイスも参考にして、1,480円という値段でスタートしました。

 そしてその代わりに、広告の入札額を、第一の商品のときより大きく設定しました。

 

 このときしんどかったのは、入札額の高さです。

 Amazonのアルゴリズム変更は、すでに一定以上のレベルのセラーのあいだでは周知の事実となっていたようで、以前と比べてあらゆるキーワードの入札額が高騰していたのです。

 具体的には、第二の商品の種別を表すキーワード単体では360円、そしてそのキーワードに用途も加えた2語では最大490円に設定しないと、スポンサープロダクトのトップに表示させることができませんでした。

 それはつまり、前者なら1回クリックされるごとに最大360円をAmazonに支払うということを意味します。

 

 Amazonからしてみると、この変更は二つの意味でおいしかったのだと思います。

 まず、過剰な値下げを抑制することで、質によるガチンコの競争を活性化させる効果が一つ。

 そしてもう一つは、これまでお客様に「還元」しているに等しかったお金を、広告費のかたちでAmazonが得られるようになったことです。

 

 売る側からしてみると、すべきことが単純化されたというメリットもありました。

 例えば、ロケットスタートを切るために商品カタログからFBA納品までの間隔を過剰に意識する必要はなくなりましたし、値下げのラインを見極めることに神経をすり減らす程度も軽くなりました。

 Amazonの狙い通り、商品カタログの出来と広告費、この二つによる殴り合いに収斂されたのです。

 

 しかし、広告費の高騰はかなり激しいものがあり、出費という意味では、以前のアルゴリズム以上に厳しいものがありました。

 こうなると、はじめから潤沢な資金を持っている人ほど勝ちやすい、という資本主義の傾向が、より強まることになります。

 私のようにギリギリの資金で決死の戦いをしている者には、しんどい変更であったと言えるでしょう。

 

市場の第二位へ

 しかし、そういうルールになった以上は、それに従って戦うしかありません。

 私はとにかくスポンサープロダクトのトップに自分の商品を表示させることにこだわり、入札額については決して妥協をしませんでした。

 1回クリックされるたびに数百円。もちろん、クリックされたからといって買っていただけるとは限らない。

 それは本当に痛みを伴うことでしたが、そこで引いてしまったら商品を露出させる機会が潰れるだけで、他に量を売る手段はなく、前に進むしかありませんでした。

 

 その効果と、市場が基本的に一強状態であったことが功を奏し、2月上旬のうちに、検索順位の第二位にまで上がることができました。

 まだそんなに数が売れているわけではなく、単にトップ以外の商品が弱かったというだけのことだったのですが、それでも第二位という位置は、その市場を検索したお客様の目には確実に留まる、良いポジションです。

 

 個数で言うと、広告をかけ始めてから1週間で、1日最大10個ほど売れるようになっていました。

 ランキングと市場規模からSさんが見立てた、トップ商品の販売個数は1日20個ほどだったので、それを上回れば私の商品がトップになれることになります。

 私の商品が登場してから瞬く間に、この市場はトップ商品と私の商品の一騎打ちの様相を呈するようになったわけです。

 

 これは行けるかも、と高揚する自分もいたのですが、やはり広告費が厳しく、それが唯一にして最大のネックでした。

 先ほど入札額のシステムを説明しましたが、その他にスポンサープロダクトには、日毎の上限額という設定もあります。

 その上限額を超過すると、その日はもう広告が表示されなくなるのです。

 例えば、上限額を3,000円に設定していた場合、300円で手に入れた広告枠が10回クリックされると、翌日になるまで広告が出なくなるわけです。

 

 私は入札額には妥協しなかったのですが、上限額についてはそういうわけにもいかなかったので、資金と相談しながら抑え気味にしていました。

 なので、一日の途中で広告費を使い切ってしまい、夜は広告が表示されない、という日が結構ありました。

 言うまでもなく、これは商機を逃している以外の何物でもないのですが、資金の底が見えている以上、仕方のないことだったのです。

 

崩せない牙城

 早々に市場の第二位になることができたわけですが、そこからが大変でした。

 1日10個に到達して以降、販売個数がなかなか伸びず(横ばいというわけでもなく、4個だったり6個だったりしました)、トップの商品の牙城を崩せずにいたのです。

 

 正直なところ、商品カタログの質では勝っている自信がありました。

 トップの商品は明らかに中国人セラーが売っているもので、画像もお粗末なら日本語もお粗末というカタログです。

 日本のAmazonで勝負している以上、私の作ったカタログのほうが、ひと目見た瞬間に良質に映るのは、客観的に考えても間違いのないところでした。

 その上で、トップの商品の不満点としてしばしば挙げられていた、サイズの問題も解消しているのです。

 この市場の商品をお求めのお客様に、カタログを見てさえいただければ、私の商品を選んでもらえる自信はありました。

 

 しかし、それでもなかなか勝てないのが難しいところです。

 なぜ勝てないかといえば、これは単純な話で、検索結果一覧に出てくる私の商品をクリックしてくれる方が、まだまだトップの商品と比べて少なかったからです。

 Amazonに出品している人間は、セラーセントラルというページの「ビジネスレポート」で、お客様の動向を細かくチェックすることができます。

 それによれば、商品カタログを見てくださった方の購入率はまあまあで、問題はカタログを見てもらった回数が少ないことであるのは一目瞭然でした。

 

「まずはクリックしてもらい、商品カタログを見てもらう」

 そのために、できる限りのことをする必要がありました。

 

 まず、メイン画像の見直し。

 私は特徴づけようと思って、商品を写す角度を他とはちょっと違うものにしてもらっていたのですが、Sさんの分析では、これだと商品の表示面積が小さくなってしまい、逆に求心力に欠けているのではないかということでした。

 幸い、もろもろの事情でまだ撮影業者の手元に商品がある状態だったので、ここは再撮影を依頼(一回のみ、無料で再撮影が可能という契約だったので助かりました)。

 

 それから価格。

 トップの商品は1,900円ほどで売られているのに対し、私の商品は1,480円だったのですが、これでもまだインパクトが足りないのではないかという判断のもと、実験的に1,000円まで値下げをしてみることにしました。

 言うまでもなく利益率はかなり低くなるわけですが、そこは辛抱するしかないところです。

 

 そして、スポンサープロダクトのキーワード設定の細かな調整。

 スポンサープロダクトには「マニュアル」と「オート」があり、オートのほうは、Amazonのアルゴリズムが自動的に、適切と思われるキーワードの検索結果に商品を表示してくれます。

 それらのログをチェックし、表示回数が多いものをマニュアルに設定し、入札額を高めにすることで、より商品露出を増やすことが可能になります。

 

 勝負はこれからだ――そう思っていた矢先。

 その致命的な出来事は起こりました。(つづく)

 

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