中国輸入ビジネスの大失敗談、第6回です。
続き物となっておりますので、第1回目の記事から順にお読みいただければと思います。
決めなければならない諸々
腹をくくって、第二の商品に邁進することに決めた私ですが、それゆえに、進めるのはとても難しい作業でした。
様々な要素をじっくり調べて、できるだけ万全に近い状態のものを販売するべし。しかし時間をかけすぎると固定費でどんどん資金が減っていき、身動きが取れなくなるので、急がなくてはならない。
慎重さと迅速さの両立が、第一の商品のとき以上に必要だったのです。
いや、第一の商品だって、そのときなりにきちんとリサーチを積み重ねはしました。
しかし商品の性質上、考えなければいけないことの数はそれほど多くなく、ゆえに比較的あっさりと「パッケージのみオリジナルにする」という決定ができたのです。
それに対して、第二の商品は、もう少し複雑なものでした。
具体的に言うと、まずカラーバリエーションを一色で行くか複数色にするかという問題がありました。
第一の商品は3色展開以外あり得ない市場だったのですが、こちらはトップの商品も含めて一色のみのものが多い市場で、色を揃えることにあまりニーズがないようにも感じられたのです。
そこをどうするのか、決断しなくてはいけませんでした。
また、トップの商品のレビューを読んでみると、「サイズが大きすぎる」という不満を述べているお客様が結構いることがうかがえました。
ここを考慮するなら、市場で出回っているものよりも一回り小さいものを取り扱うことが、大きな武器となるかもしれません。
また、付属しているベルトが短すぎる、という不満も少しあり、ここについては、中国側の工場に話を持ちかけて改良を施す余地がありました。
それから、商品を入れる袋をどうするか。単純な透明袋でいいのか、何かオリジナル要素を加えるのか。
そしてオリジナルのタグも商品に付ける必要がありそうなので、そのデザインをどうするか。
これらのことをすべて考えた上で、原価コストと相談しながら、見事に「正解」を当てなければいけなかったわけです。
サンプルを待ちながら
当時のSさんとのChatWork上のやり取りは、この記事を書いている現在(もうとっくにコンサルティングは終了しています)でも、読み返すことができます。
これを参考資料とし、記憶を補強または補正しながら、この連載記事を書いています。
このログによれば、第二の商品のサンプルを発注し、それが届くまでに割と時間がかかっており、そのあいだに先述のリサーチの他に、第三の商品の候補も探していたりと、多岐にわたる行動をとっていたようです。
中国輸入ビジネスは、何か中国側にして欲しいことができたとき、それを代行業者に伝えるだけで済んでしまうという点で、楽ではあるのですが、どうしても時間がかかってしまいます。
その意味で、とても「待ち」の時間の多いビジネスであり、それが時として大きな焦りを生むこともあります。
このときの私は、ささやかな資金が固定費によってどんどん削られていくことを、まるで命が削られているように感じていたものですから、サンプルごとき(と言いたい気分でした)で待ち時間ができてしまうのが、どうにもつらかったですね。
他の商品のリサーチも、ほとんどそのつらさを紛らわすためにやっていたようなところがあったように記憶しています。
慎重な仕様決定
そうこうしているうちにサンプルが届きました。
届いたサンプルは、形状的にもサイズ的にも、その市場でトップの商品とほぼ同じもので、これをベースにどう独自色を出していくかを、正式に決める段階に入りました。
まず、届いたサンプルには中国側ブランドのタグが付いていましたので、これは取り除いてもらって(というか生産時に付けないようにしてもらって)、代わりにオリジナルのタグを作ることを決めました。
これは単純に、ブランド名を大きなフォントで描いた画像データで間に合わせられます。
次にサイズですが、トップの商品も、それ以外の商品も、みんなサンプルと同じ大きさで、ここに不満を持つお客様が複数いるというのを鑑み、もう一段階小さいサイズを取り扱うことに決めました。
ここにも細かな紆余曲折があります。
最初にアリババで見つけた商品カタログには、サイズが一種類しかなく、私はてっきり、この工場にもっと小さいものを作ってもらうには、いわゆる「特注」の必要があると思っていました。
そのことと、先述のベルトの長さのことを、工場に問い合わせて欲しいと代行業者にお願いしたのですが、返答は「工場からの返信がない」というもの。
えー、と思ってアリババ内をさらに調べたところ、同じ工場が作っているべつの商品カタログがあり、そちらでは大小様々なサイズがラインナップされていることを確認。
そちらに連絡したら反応があった、という……。
じゃあ最初のカタログはいったい何だったの? という疑問は、今も晴れていません。
そんなわけで、一段階小さいサイズについては、既存のものを仕入れればそれで済むことが判明。
あとはベルトの改良に、どれくらい追加コストがかかるか、というのが問題でした。
少しして、その件についての工場からの返答を代行業者が伝えてきました。
その結果、ベルトを改良しようとすると原価が想像以上に跳ね上がってしまい、利益率にかなりの影響があることがわかりました。
ここで考えたのは、レビューに書かれていた不満の数です。
サイズが大きすぎるという不満は、結構多くの人が書いていたことでしたが、ベルトが短すぎるという不満は、100以上のレビューの中で一人二人が書いているだけでした。
つまり、サイズに比べれば圧倒的に少数意見だったのです。
コストをかけて改良し、この小さな不満をなくしていくのか。それとも「おおむね受け入れてもらえる」ことを見越して、改良なしで行くのか。
私のとった道は、「ベルトについては改良しない」というものでした。
商品を入れる袋については、何も工夫をしないのであれば代行業者側がきちんと用意してくれることがわかったので、それで行くことに。
オリジナルブランドであることは、オリジナルタグによってのみアピールするという方針が固まったわけです。
旧正月と発注個数
そして最後に決めなければならないのは、発注個数でした。
中国輸入ビジネスにおいて、中国側の動きを「待つ」時間が長いことはすでに説明しましたが、その待ち時間の中には、中国の長期休暇があります。
台風の話をしたときに、国慶節という休暇に言及しましたよね。あんな感じで、中国には連休がちょくちょくあり、工場も代行業者も、そのときはしっかり休むのです。
それはもう確固たる文化なので、受け入れて動かなくてはいけません。
そんな連休の中でも最も大きなものが、いわゆる旧正月です。
この時期に入ったら、中国の流通には半月以上何も期待することができなくなるため、仕入れの数も、それを見越したものにしなければいけなかったりします。
具体的な日程は毎年発表されるのですが、基本的に1月の後半から2月の上旬までは、中国側とコンタクトすら取れなくなることを考慮する必要があります。
私が第二の商品の初回発注に関して最終決定を迫られていたのは、12月上旬のことでした。
ここで計算しなければならないのは、2回目の仕入れについてでした。
最初に仕入れたものをFBAに直送してもらうのはまあ大丈夫として、それから間もなく旧正月の連休に入るので、次に代行業者とコンタクトが取れるのは2月の中旬くらいになります。
それから2回目の発注をすると、それがFBAに届くのは恐らく3月以降になってしまいますよね。
それまでのあいだ在庫切れを起こさないだけの量を、たっぷり確保しておかなければならなかったわけです。
私はその量を、1,200個と見積もりました。
Amazonのアルゴリズムが変更したので、以前のような破格の安売り攻勢を仕掛けることはありません。
それはつまり、第一の商品ほどは在庫が減っていかないということを意味します。
そういったことと、資金との兼ね合いをいろいろ考えた末に出てきたのが、この数字でした。
本発注するときに緊張したかは、正直覚えていません。
それなりに覚悟が必要だったような気もしますし、コンサルタントさんとのメール以降、もうそういうのは改めてする必要がなかったような気もします。
商品画像を期限内に用意せよ
その後、商品の生産スケジュールについて、代行業者さんにおおまかな日数をうかがったところ、次のような返答がありました。
- オリジナルタグ作成の納期が5~7日
- それを工場に送るのに3~4日
- 工場の生産納期は10~15日前後
つまり、最速で年末、遅くて翌年1月上旬には、代行会社さんの元に商品が揃うということです。
正直、これは結構ギリギリのところでした。
というのも、商品写真の撮影のことも考えなければいけなかったからです。
代行業者からFBAに商品を直送しようとする前に、Amazonに商品カタログを作っておかなければいけません。
そこには商品画像が必要で、それを用意するためには、商品を数個送ってもらい、業者に発送して撮影してもらい――という段取りが必要になるのは、以前書いた通りです。
それを全部待っていたら、旧正月に入ってしまう可能性が高かったのです。
そこで私が採った方法は、1,200個生産してもらうにあたり、まずは最初に作った2個を、工場から代行業者、そして私の自宅へと送ってもらう、というものでした。
こうすれば、1,200個できあがるのを待っているあいだに、国内での撮影作業を進めることができるわけです。
さて、その商品画像ですが、前回お願いしたところに頼むかどうかで、悩みが発生しました。
前回の仕事内容に不満があったわけではありません。
ただ、諸々の画像を用意するのにかかる総額が6万円ほどで、これをもっと安くできるなら、それに越したことはなかったのです。
また、今回の商品は屋外で撮影した写真も用意したほうがよい性質のものだったのですが、前回利用した業者は屋外撮影を請け負っておらず、その点でも問題がありました。
その辺りをSさんに相談したところ、クラウドワークスで撮影と画像加工を依頼するのがよいのではないか、というアドバイスをいただきました。
そこで、今回はその方法で、安価にカタログを作ることに決定。
しかしこれがまた、無駄な回り道へと繋がっていくのでした……。(つづく)
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