天国的底辺

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いち原作信者のアニメ版YU-NO感想:13話で抱いた危機感

 前回、12話を視聴したところで、それまでの感想を記事にしました。

 

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 で、当初の予定では、あと何話か進んでから次の記事を書くつもりでいたのですが、昨日観た13話が個人的にかなり「不安な」もので……。

 この不安を黙って抱えたまま、何話か後になってまとめて記事にするのは、構成上ちょっと変になりそうだなと思ったので、急遽この記事を書いてしまうことに決めました。

 原作のネタバレは伏せているので、アニメで初めてYU-NOに触れているという方でも読めるようになっておりますが、同時に、私と似たような不安を抱いた原作ファンの方にも向けたものになっております。

 しばしお付き合いください。

(この記事で使用している画像の著作権はすべて、然るべき権利者に帰属します)

 

 

初めての大幅改変

 何と言っても13話で目立ったのは、アニメオリジナルのシーンです。

 絵里子先生とアーベルのやり取り、これは丸ごと全部、原作には一切存在しないものでした。

 

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 このTVアニメ版YU-NO、1~12話でもすでにいろいろと原作から改変してはいたのですが、それらはすべて、膨大な原作を2クールに収めるための対策、圧縮の手段であったというのが私の認識です。

 だから、ちょこちょこと細かいレベルで「原作にない」シーンはあれど、まったく新しいものが差し込まれている、ということはこれまでありませんでした。

 それが13話で初めて、崩れたのです。

 

 なぜここで、このようなオリジナルが差し込まれたのか?

 もちろんこれは推測でしかないのですが、恐らく情報を意図的に分散させたかったのでしょう。

 

リスクを取ってバランスを取る

 13話で明らかにされた事実――龍蔵寺の中に入っているのが実体を持たない次元犯罪者であることと、絵里子先生がそれを追う捜査官であるという事実は、原作においては終盤も終盤、ほとんどクライマックス近くになって初めて明かされることです。

 TVアニメでは、それを大幅に前倒ししたことになる。

 

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 今回のカオスの矯正が起きた際、絵里子先生はたくやの中から、今回明らかになった彼女と龍蔵寺に関する記憶を消しました。

 これはつまり、もともとは終盤で知ることだから、まだそこに至っていない段階で彼に抱えさせたままにすると物語が破綻してしまう、だから消そう、という作劇上の処置に他なりません。

 ここまでのたくやを「記憶の蓄積によって真実に近づいていく」存在に改変して描いていた本アニメが、ここで苦肉の策として記憶を部分的に失わせることを選んだことに、私は正直、ちぐはぐさを感じてしまいました。

 

 また、深く考えずとも、本来終盤で明らかになるはずだったものを途中に持ってくれば、謎解きのカタルシスが弱まることも、流れが超展開化することも明白です。

 さらに言えば、「絵里子先生のいた世界」が描かれたことで「こことはまったくべつの世界を観ること」が視聴者にとって経験済みの行為になってしまい、後半の諸々がファーストインパクトではなくなってしまいました。

 そうまでして、ここに情報を移してきた理由は何なのか?

 

 一つ思い出したのは、原作のYU-NOが発売して間もない頃に、企画・脚本・ゲームデザイン担当の菅野ひろゆきさんがインタビューで語っていたことです。

 ネタバレを伏せて説明しますが、菅野さんは終盤に、絵里子先生による長い設定説明があった後、すぐに今度は○○による似たような長い説明シーンになることに、自分で突っ込みを入れておられました。

 この辺りは確かに冗長になっているところであり、今にしてみれば、いびつな構成であったように思います。

 以前の記事でも書きましたが、YU-NOは伝説的な作品ではあるものの、予定通りに開発できなかった事情もあり、いろいろな意味で不格好になっているのです。

 

 恐らくTVアニメ版は、そこを解消したかったのではないでしょうか。

 情報のバランス調整を行い、説明過多だった終盤のリズムを軽快なものにする――その辺りを、上に挙げたようなこととトレードオフするかたちで目指したのではないかと、私は感じました。

 

描写が安直すぎはしなかったか

 それはそれで、一つの選択なのかなとは思います。

 私は原作信者ですが、「どこも変えないことが理想的」であるとは考えていないので、そういうことに挑もうとする姿勢そのものは否定するものではありません。

 

 しかし、13話で表現されたもろもろは、あまりに安直だったのではないでしょうか。

 改変が上手にキマっているのであれば、何も言うことはないのですが、新しく作られた部分がちょっといただけなかったと言いますか……。

 一番気になったのは、事象を遡っていくアーベルと、そこで出会う次元犯罪者の映像表現でした。

 

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 宇宙空間みたいなところを上半身裸で飛ぶ男と、そこに現れる、あまりに「いかにも」過ぎるバケモノ。

 正直これはどうなのでしょう。

 言い方は悪いのですが、オリジナルを作ろうという意欲にセンスが追いついていないという、悲惨な状態がそのまま絵になってしまったように感じました。

 

 また、これは原作通りではあるのですが、龍蔵寺がたくやを拘束してリフレクターデバイスの在り処を喋らせようとするシーン。

 いくら何でも、拘束するときにたくやのポケットくらい調べるのが普通なのではないでしょうか。

 これだけの改変をした回で、こんな基本的なところが原作そのままになっている。

 少なからず呆れてしまったのは私だけではないと思います。

 

記憶を保持しつつ新たなルートに入ること

 そういった幾つもの不安を見せつけてくれた上で、物語は再びスタートからになりました。

 しかしここでも、たくやは原作と異なる行動を取ります。

 何しろ原作と違って、カオスの矯正後も(絵里子先生と龍蔵寺の正体を除いて)記憶を保持しているので、彼はもう並列世界と境町の秘密について、慣れきっている。

 だからいきなりストレートに、神奈に対して「次は君の話を聞かせてくれ」とアプローチを試みるのです。

 

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 わかっていたことではあるのですが、「カオスの矯正後も記憶を保持する」という改変は、カオスの矯正を繰り返せば繰り返すほど、たくやの状態を原作から乖離させていきます。

 ここまでたくやは3回それを経験し、超念石のことも、三角山の内部のことも、美月の運命のことも、龍蔵寺が怪しいことも、そして神奈が何かを知っていることも、すべてわかった状態にある。

 この、原作にはあり得なかった状態で神奈に近づくのですから、そりゃあ確かにこういう風になるのが自然でしょう。

 

 しかし……これではどう考えても、原作の内容をなぞることはできません。

 神奈ルートはこの調子でいくと、だいぶ縮むか、またしても本来終盤にわかることを引っ張ってくるか、あるいはまったく異なる展開を見せるか、そのいずれかになる可能性がとても高い。

 もしかしたら以前の監督インタビューはまったくのフェイクで、2クール目は大胆不敵に独自展開を見せていくつもりなのかもしれない、とすら感じさせる引きでした。

 

 しかし、それを上手くやってみせるには、相当なセンスが必要になります。

 今回、13話の内容から私が受け取ったものから判断する限り――とても失礼な物言いになってしまうのですが、独自路線を進んでそれがきちんと成立する、という未来はあまり期待できないのではないかと感じています。

 

 12話は面白いと思ったのですが……。

 たった1話で、私の中の本作への期待が、一気に不安へと変わり、危機感を抱くに至ってしまいました。

 うーん……。

 

おわりに

 もう一度念を押しますが、私は「改変すること」には否定的ではありません。

 むしろ、原作が好きならむしろそこを楽しみにすべき、とすら思っています。YU-NOという作品をアニメという媒体で表現するには、どうしたって改変が必要なのですから。

 

 しかしそれもこれも、面白くしてくれればこその話。

 前回言及した「リフレクターデバイスの機能の単純化」もそうなのですが、話数を重ねるごとに、本作の改変部分がどんどん安っぽいものになっていくのを感じるにつけ、最初の記事で書いたような期待は持ちづらくなっているのが正直なところなのです。

 

 あくまで個人的な提案なのですが、原作未プレイの方は、このあたりで先に原作をプレイしておくのがよいのではないかと思いますね。

 先々の展開がまだわかっていないうちに原作に触れて、その上でアニメを観たほうが、最終的な幸福度は高くなるのではないかと。

 

 もし余裕があるなら、その路線でYU-NOという作品を楽しんでみてください。

 いち原作信者からの、割と痛切なオススメです。

 

 うーん……。

 

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