天国的底辺

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いち原作信者のアニメ版YU-NO感想(12話終了時点)

 TVアニメ『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』を12話まで視聴しました。

 12話で物語は新たなルートに入り、それによって見えてきたものもあります。

 というわけで、このタイミングで現時点での感想を記事にしてみたいと思います。

(以下、本記事で使用している画像の著作権はすべて、アニメの権利者様に帰属します。ご了承ください)

 

 前回は7話終了時点での感想を記事にしました。

 それを踏まえての書き方になるので、前回の記事を未読の方はまず下記のリンクからお読みいただければと思います。

 

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澪ルートで評価が下がった

 結論から言いますと、7話~11話のいわゆる「澪ルート」で、私の中での本作の評価は思いの外、下がってしまいました。

 前回の記事では、これからもっと面白くなっていくのではないか、という予想をしていたのですが、個人的には裏切られたかたちです。

 

 その原因を一言でいうと、(終盤を除いて)物語の見せ方が平坦だったことにあります。

 澪ルートは文字通り澪がメインヒロインとなっていて、彼女のたくやへの恋心と、三角山へのこだわりを主軸に展開していくものなのですが……どうにもこう、「段取りを順番に置いていっただけ」な感じが拭えなかったんですよね。

 静と動、緊張と弛緩、そういったメリハリがあまりなく、淡々と流れるように状況変化が説明されていく――そんな感じでした。

 

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 もともと澪ルートにはそういう危険性はありました。

 というのも、澪のたくやへの気持ちというのは、成人指定要素をとっぱらって一般向けにすると、文字通り「淡いものが淡いまま終わる」ものでしかなく、何話も通して描くことに耐えうる代物ではないからです。

 TVアニメにするにあたって、その辺りの心理描写を丁寧にしようとすると、必然的に退屈になってしまう。

 そういうことも平坦さを手伝っていたと思います。

 

 無責任な提言ですが、この「澪の淡い恋心」という要素にこそ、アニオリによる大きめの改変が必要だったのではないでしょうか。

 

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 それでいて、終盤には唐突に三角山の内部が描かれ、落雷の原因である古代の装置が登場し、急にスリリングになります。

「これこそ静と動、メリハリじゃないのか?」と送り手は主張したいのかもしれませんが、これは溜めすぎであり解き放ちすぎです。

 いわゆる超展開というやつであり、惹きつけられる以上に気持ちが離れる視聴者のほうが多かったのではないでしょうか。

 少なくとも私は、観ていて「あ~……」となってしまいました。

 

 この澪ルート、原作はどうなっていたかというと、そもそもの話として「進め方」がまったく違っていたんですよね。

 

もっとも根本的な原作改変

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 YU-NOという作品は並列世界をテーマにしているわけですが、原作においてそれがどのようなかたちでもっとも強く表現されていたかというと、「ルート間を行き来し、アイテムをあっちで取ってきてこっちで使う」という行動によってでした。

 宝玉セーブして、べつの宝玉セーブしたところに飛び、必要なものを取得して前者の宝玉セーブ地点に戻ってくる。

 そういうゲーム的行動で、いかにも分岐に分岐を重ねた並列世界の中を旅しているという実感を出していたのです。

 特に澪ルートと、後述の祟りルートは、そういう意味で近い間柄にあり、普通の物語ではなかなか見られない「ルート間協力体制」を深く体験することができました。

 

 ところがTVアニメ版においては、その「ルート間を飛び交う」概念が取り除かれています。

 宝玉セーブはシンプルに「間違った選択をしたら前の時間に戻れる機能」になり、作中でもリフレクターデバイスによる行動に関して「戻す」「やり直す」という表現しか登場しません。

 当然ながら、原作において澪ルートを楽しいものにしていた「ルート間の旅」は観ること叶わず、物語はとても直線的になってしまいました。

 

 このような作りだと、「並列世界」という言葉が浮いているように感じてしまいます。

 YU-NOという作品において並列世界の実感を作っていたのは、宝玉セーブをあちこちに散りばめ、それによって「ある状況」から「べつの状況」へ飛んだり、また不要になった宝玉を回収して回ったりといった行動だったわけです。

 一個単位で使われる宝玉セーブでは、それを再現することは決してできません。

 

 TVアニメ版は、確かにシナリオ面ではできるだけ原作に忠実にあろうと頑張ってはいます。

 改変しているところも、原作通りにしていたらいくら尺があっても足りないものを手短に説明するための手段であったり、演出を現代的にリファインした結果であったりと、前向きな必然性があります。

 ですがこの「宝玉セーブの単純化」に限っては、結構ダメージの大きい改変になってしまったのではないか、というのが、私の意見ですね。

 

12話で得た予感

 そのようなことを11話(澪ルート最終話)を観て思い、複雑な心境で12話に入りました。

 ここからはいわゆる祟りルートです。

 

 先に12話単体の評価をすると、この回自体は面白かったです。

 先ほど「ルート間の旅の要素が消えた」話をしましたが、一応それを埋め合わせる為に、12話は開始時点から澪ルートの結末(美月が命を落とすこと)を引きずるものになっていましたし、たくやの行動も龍蔵寺へのある種の執念に基づいています。

 これを観たときに、アニメスタッフもべつに何も考えずに作っているわけではなくて、アニメでどう見せるかいろいろ考えた末に採った戦略なんだな、というのは伝わってきました。

 まだそのことに賛成する気にはなれずにいるのですが……。

 

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 また、絵里子先生のキャラが激しく立っていたのも好感を持てる点でしたね。

 元々このTVアニメ化において、ここまでで一番おいしい輝き方をしているのが絵里子先生だと思っていたので、ある程度期待はしていたのですが、その期待通りにいろいろと魅せてくれました。

 原作よりもお茶目なところが多くなっているのは歓迎できることで、その新しい絵里子先生像に小林ゆうさんがきっちり芝居を当てることで、良いキャラが出来上がっているというのが私の感想です。

 

 12話の展開からすると、祟りルートはこれまでよりも圧縮率が高そうに思えます。

 もしかしたら3話くらいで駆け抜ける作りになっているのかもしれません。

 仮にこの憶測が正しいとして、その結果が単に慌ただしい内容になるか、それとも(澪ルートとは違って)メリハリのある充実した内容になるかは、作り方次第。

 まあ、固唾をのんで見守るしかないところでしょう。

 

 物語を「直線化」してどこまで並列世界を描けるか。

 ここからの巻き返しに期待したいところです。

 

円盤の行く末

 本作に関する世間の評判は、未だにチェックしておりません。

 やっぱり何だか怖いんですよね。自分で部分部分をdisっておいて言うのもおかしな話だとは思うのですが、他人の口からつまらんという言葉を聞くのは、原作信者としてはなかなかつらいものがある。

 そんなわけで、この記事にも「世間の評判」は良くも悪くもまったく反映されておりません。

 どこまで皆さんと似たようなことを書いているのか、どこからが自分らしい意見なのか、何もわかっていないのが実際のところです。

 

 さて、このTVアニメ版、Blu-ray BOX第1巻の予約数に応じて特典を追加していくという「A.D.M.S.プロジェクト」なる企画が進行しています。

 

yuno-anime.com

 6/21現在、300枚と500枚は突破し、次は1,000枚突破を待っている状態。

 この1,000枚突破によって、オリジナルエピソードの新作アニメと、オリジナルシチュエーションドラマCDが作られることになっています。

 見たところ、この1,000枚の特典こそがこの企画の中核であり、ここを超えられるか否かが、まず最低限の成功(変な言い方ですかね)とみなされているように感じます。

 一応その先として、現時点では1,500枚の特典まで発表されています。

 

 今のところの数字は……どうなのでしょう。

 企画の締切が7/15であることを考えると、恐らく1,000枚は何とかなるかなという感じはしますが、1,500枚はきつそうだし、そこから先の特典は発表さえされないまま終わるかもしれない予感をはらんでいます。

 そもそもヒット作になりそうだったら今頃とっくに1,000枚など突破しているでしょうから、私がかねてから懸念している通り、そこそこ空気アニメ化しているのでしょうね。

 

 丁寧に作られているのはよくわかるんですけどね……厳しいところです。

 

おわりに

 とにかく原作信者としてはハラハラしながらの視聴を続けています。

 中にはもうとっくに見限ってしまった原作派もいらっしゃるのだと思いますが、私は最後までチェックしたい。

 このアニメが仮に相当ひどいことになったとしても、自分の知らないところでそれが展開するのはちょっと我慢できそうにないからです。

 

 また進展があったら記事にしたいと思います。

 

 

この世の果てで恋を唄う少女YU-NO Blu-ray BOX 第1巻(初回限定版)

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