昨日12/20、ようやく電撃小説大賞の選評が送られてきました。
私の場合はweb応募ですから、PDF形式でダウンロードできるようになった、というのが正確な言い方になります。
今日はこの選評の内容について書いていきたいと思います。
思い切って全文を晒してしまうので、小説新人賞の選評というのがどんな感じなのか、に興味のある方は、そこだけでもチェックしていっていただけると嬉しいです。
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なぜ遅れたのか?
さて、内容について語る前に、まずはこの話題から。
本来であれば10月中には送られるはずの選評が、どうして今年に限って、こんなに遅れてしまったのでしょうか?
これは明らかに奇妙な事態なのですが、公式には何のアナウンスもされていません。
実損害こそ出ていないものの、何か一言詫びがあってもいいんじゃないだろうか、と感じるのですが……。
この辺り、出版業界のルーズなところがモロに出ているというところでしょうか。
アナウンスが皆無であり、リークのたぐいも一切ない以上、何を言っても妄想の域を出ないのですが、それでもいろいろ考えてしまいます。
私の頭に思い浮かんだ中で、最も突拍子もない説は、「用意していた選評のデータが途中で消失してしまい、すべての一次選考突破以上の作品を改めて読み返し、選評を作り直したのではないか」というものです。
さすがにそこまでは、と自分でも思うのですが、可能性はゼロではありませんよね。
実際のところ、受賞作品の選出はもう済んでいるのですから、すべての作品が一度は然るべきかたちで審査されたはずなのです。
なのに選評だけが遅れる理由と言ったら、選評をどういうわけか書けなかったか、書いたものが失われてしまったかの、どちらかくらいしか考えられません。
よもや、すべてきっちり用意したのに、送るタイミングだけが遅れた、などということはないでしょうから。
そんなわけで、先述の「データ消失説」のようなことを思い浮かべてしまう次第です。
ちなみに、見たところ電撃大賞のTwitterアカウントもここのところ止まっていて、何だか不穏な空気を漂わせていました。
選評に関する質問リプライを、このアカウントに送った人もいるようなのですが、無反応だったみたいですね。
「まあ、出版業界ってそういうところみたいだしね」
という世間の空気を後ろ盾に、こういうのを適当に流せると思っているのであれば、それはちょっといただけないなあ、と考える次第。
素直な気持ちとして、何かしらの一言二言が欲しいところです。
選評の内容
と問題提起をしたところで、本題に入りましょう。
選評なのですが、少し迷った末、この記事ではもらったものをそのまま、画像のかたちでまるっきり公開することにしました。
賞によっては、選評の内容を公にしてはいけない、というところもあるみたいなのですが、電撃大賞のサイトをざっと見渡してみても、そういう規定は見当たりません。
となると、後はこちらのプライバシー、気持ちの問題だけということになります。
で、まあ、二次落ちでギリギリ選評をもらえただけの作品について晒していくのは、ちょっと「見せたがり」すぎるかなとか、いろいろ考えたのですが、結論として、誰かの役に立つかもしれないならガンガン見せていこう、ということになりました。
遠からず今回の応募作もカクヨムに投稿していく予定なので、そちらをお読みいただいた方が「なるほど、この作品がプロの編集者にはああ見えるのか」と読み比べられるようにしておくのも、有益なんじゃないのかなと。
そんな風に考えた次第です。
というわけで、以下が今回いただいた選評になります。
作品タイトルは『神聖灰色帝国主催聖暦一〇〇〇年記念誇大式典』。
作品内容は省略させていただきますが、コメントを読めば何となく方向性は掴めるのではないかと思います。
評価その1:コメント
異世界ファンタジーを群像劇として描いたコンセプトには目新しさを感じた。しかしその屋台骨となる千年に一度の式典という舞台装置を生かし切れていないため、主題が掴みきれずに物語の入り口で足踏みしているような感覚を持ってしまった。今のネット小説寄りの作風にするには盛り上がりが足りず、中高生に向けたエンタメとするにはキャラクターが薄いと思う。想定読者をもう少し具体的にイメージできると、より突き抜けた作品に仕上がりさらに上を目指せるのではないだろうか。
評価その2:コメント
群像劇タイプの異世界ファンタジー。全体的によく練られていて、世界も人物も上手く描かれていた。こういうタイプの小説は書き慣れているようで、設定が絶妙で、しっかりとしたオリジナリティが感じられた。一応、主人公はいるが、主人公以外にもスポットが当たる人物がいて、それぞれの関わりの中で物語がタペストリーのように綴られていく。そういう意味で、これはキャラクター小説ではないので、特定の主人公の活躍が読みたい読者には口に合わないものかもしれない。だが小説修行中の書き手にとっては、どんな小説を目指しているにせよ、この小説はよいテキストになると感じた。
選評を読んでの感想
評価その1がイマイチという評価で、評価2では結構褒められていますね。
もし前者の方の感性が後者の方に近ければ、恐らく二次選考は通過できていたのではないかと思いますが、そういうことを言っても仕方ないのが賞レースというもの。
結果は甘んじて受け止めるしかありません。
評価その1で受けた指摘についてなのですが、式典については一応、私なりの言い分があります。
私としては、「式典が実際に始まる前の人々の慌ただしい動き」を主題にしたつもりであり、式典自体が割とあっさり描かれるのは、意図的にやったことだったのです。
でもこの評者さんにはそれが届かなかったようで、うーむ、というところですね。
また、「千年に一度の式典」ではなく「定期的にやっている式典が、今回は数字的にめちゃくちゃキリが良い」という話なので、ここは誤読されているかなと。
キャラクターが薄いというのは、言われれば納得するしかありません。
少なくともラノベ的に考えたとき、既存の記号を上手く織り込めていないのは、自分でも感じており、ズバリ指摘されてしまったな、という感じです。
キャラクターの弱さについては、以前に応募したべつの作品の選評の中でも指摘されたことがあり、恐らく私のいちばんの弱点なのではないかと思われます。
この辺り、もっともっと意識的に尖らせる必要がありそうですね。
評価その2は、内容から何かを学ぶというよりは、読んでモチベーションを高めるためのコメントという感じです。
ああ、書いてよかったな、と素直に思えました。
ただ、「こういうタイプの小説は書き慣れているようで」というのは過大評価です。私は群像劇というものを、この作品で初めて書いたからです。
まあでも、そう思っていただけるということは、悪いことではないですよね。ここは喜んでおくべきところでしょう。
両方のコメントに共通することとして、群像劇を選んだことはプラスに捉えていただけたようだ、というのが挙げられます。
これは私の狙ったことがドンピシャにハマったということで、素直に嬉しいですね。
この作品は「祝祭空間を構成するいろいろな人達」というところからスタートしており、いかにそのざわめきのようなものを描き出すかを目指して肉付けしていったものなので、全体としては間違ってはいなかったんだな、と。
次に書くものにどう繋げるか?
この選評を踏まえて、次の作品をどう書くかですが……。
正直、これが難しいのです。
いちばん最初に選評をもらったときから今日に至るまでずっと、私はその内容を、上手く次に活かすということができていないんですよね。
あくまで自分の感覚なのですが、毎回違うことを指向しているつもりなので、前にもらったアドバイスの活かしどころなんか無いよ、という感じで……。
唯一、具体的にわかることと言えば、先述の「キャラクターの薄さ」に関する指摘です。
ここはしっかりと胸に刻み、次回作では一度読んだら忘れられないような強烈な個性を持った奴らを作るべきなのでしょう。
でもそれ以外については、うーん、相変わらず血肉にする方法がよくわからない、というのが正直なところです。
世の中には、人からもらったアドバイスを物凄く上手に咀嚼し、取り込んで、次回からは別人のようなパフォーマンスを見せることができる人がいますが、ああいうのはつくづく才能だなと思います。
私は――あるいは考え抜く時間が足りていないのかもしれませんが、そういうのが本当に苦手なんですよね。
悪い意味で、自分というものが固まってしまっているというか。
いつかそこを崩すことができたらな、と思っているのですが、持って生まれたものなのか、なかなか難しいです。
あとはぶっちゃけ、ラノベをほとんど読まない生活にも問題があるのかもしれません。
おわりに
以上、選評をようやくもらうことができた勢いで、ざっと書いてみました。
ここまで書いて急に心配になってきたのですが、選評の内容を公開するのって、大丈夫ですよね? 規約違反とかではありませんよね?
もしそうだったら、この記事の根幹をなす部分をリライトでぼかさなければいけなくなるので、セーフであることを祈るばかりです。
先述したように、今回の作品は、そう遠くないうちにカクヨムで全文を公開するつもりでいます。
その際にはぜひお読みいただき、あなたの感想と、本記事で公開したコメントの内容を読み比べる等の楽しみ方をしていただければと思います。
そしてできれば、カクヨム側でも、当ブログ宛でもよいので、あなたの感想もお聞かせいただけると嬉しいですね。
よろしくお願いいたします。
というわけで、二次選考落選作の晒し記事でした。
【追記】
現在、カクヨムにて作品全文を公開中です。
興味をお持ちになっていただいた方は、ぜひお読みの上、感想などいただけると嬉しいです!
全ての文字書き必見。推敲も校閲も面倒見てくれます。
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