私は今まで、何ヶ所かのライトノベル新人賞に、合計9本の長編小説を応募してきました。
残念ながら受賞したことはないのですが、一次選考を通過したことは何度かあり、評価シート、いわゆる選評というものを幾つかもらったことがあります。
その内容を見てわかったことの一つに、世間で言われる「カテエラ」というものが、果たして本当にあるのかどうか、というのがあります。
この記事では、私なりに把握しているカテエラの実態について、ざっくりとですが、書いていきたいと思います。
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結論:カテエラは賞よっては存在する
まず結論から言ってしまうと、次のような結論が(少なくとも私の経験からは)導き出されます。
「最大手のライトノベル新人賞においては、カテエラのようなものはほぼ存在しないと思われる。しかしそれ以外の賞には、どうやらそういうものが立ちはだかっているらしい」
具体的には、電撃小説大賞と、小学館ライトノベル新人賞には、カテエラらしきものは確認できたことがありません。
しかし、MF文庫Jライトノベル新人賞には、その評価の内容の中に、明らかにカテエラを示唆しているものがありました。
それ以外の新人賞については把握していないのですが、おそらく中堅どころかそれ以下の賞については、それぞれなりの「求める作品の方向性」があり、そこから外れたものは、作品の質によらず弾いているのではないかと想像できます。
以下では、私がもらった評価が、概ねどのような作品評のあり方をしていたのかについて、紹介していきたいと思います。
これまでに応募したラノベ新人賞
その前に前提知識として、これまでに私が応募してきたライトノベル新人賞を説明しておきます。
まず、私は書いた小説をすべて、ページ数制限に抵触しない限りは、電撃小説大賞に応募してきました。
そして、落選が確認された後に、他の新人賞に使い回すというかたちをとってきました。
ここで言う「他の新人賞」とは、小学館ライトノベル新人賞、MF文庫Jライトノベル新人賞、集英社ライトノベル新人賞です。
このうち、集英社ライトノベル新人賞に応募したもの(1本)は、一次選考で落ちてしまったので、選評をもらったことはありません。
しかしそれ以外については、複数回にわたって一次選考を通過したことがあり、そのときに選評を受け取ることができました。
正確に言えば、MF文庫Jライトノベル新人賞に限っては、一次選考に落ちても選評を受け取ることができるので、応募したすべての作品について評価を確認することができました。
そのうちの一つ、『神聖灰色帝国主催聖暦一〇〇〇年記念誇大式典』については、過去にその選評の全容を公開したことがあるので、下記のリンクから確認してみてください。
それぞれの賞の難易度については、この記事のテーマではないので言及しませんが、まあどの賞も、基本的に受賞するのは難しいことです。
その辺りについては、べつの機会があったら語ることとします。
ここでは、それぞれの選評がどのようなモノの言い方をしていたかについて、紹介していきたいと思います。
それぞれの選評の特徴
先述したように、私は基本的にまず電撃小説大賞に作品を応募し、そこで落選したものを他の賞に使い回す、ということをしてきました。
その結果として、一つの作品について複数の選評もらった経験が割とあったりします。
なので、それぞれの賞の選評を、同じ作品で比べることが可能になっているわけです。
以下では、その辺りをうまく活用して、各賞の評価の特徴を述べていきます。
電撃小説大賞
電撃大賞の評価の仕方は、一言でいえば「王道的」です。
少なくとも私が受け取ってきたものの中では、電撃小説大賞の評価がいちばん偏りがなく、どんな方向性の作品であっても一度はすべてフラットに受け止めて評価しようという姿勢が感じられました。
自分で言うのもアレですが、私の書く小説は、基本的にあまりライトノベルの王道を行くものではありません。
その意味では、カテエラで除外されることも覚悟の上でいつも応募しているわけなのですが、電撃小説大賞について言えば、常に割と純粋に実力を評価してもらえている、という実感があります。
まあ、下読みさんに対する根本的な不信感まで完璧に無視できるというわけではなく、多かれ少なかれ「巡り合わせ」の存在を認めないわけにはいかないのですが……。
この辺りについては、過去に記事を書いたことがあるので、以下のリンクから参照してみてください。
小学館ライトノベル新人賞
小学館ライトノベル新人賞(通称ガガガ)は、ちょっとその評価の方向性を説明するのが難しいです。
私は作品を応募するとき、もちろんすべての作品について、少なくとも自分的には面白いと思って応募しているわけなのですが、それにしてもちょっとこの賞の評価については、不思議に思うところがあります。
おかしな言い方になりますが、「え、この作品があの作品よりも高く評価されたの?」と思うことが何度かありました。
この印象は私だけではないようで、小学館ライトノベル新人賞については、世間的にも「ちょっと特殊な評価されていて不可解」という見方が、私の観測の範囲内では結構見られます。
その意味で言うと、この賞だけに応募する、というスタイルで執筆活動を続けるのは、単なる競争とは違う意味での難しさがあるかもしれません。
MF文庫Jライトノベル新人賞
MF文庫Jライトノベル新人賞は、すべての応募作品に対して選評を送ってくれることで知られています。
つまり、箸にも棒にもかからず一次選考で落ちてしまった作品についても、「プロの目にはどう映ったか」を教えてくれるサービスがついているというわけです。
ありがたい話ですが、同時に少し怖くもありますね。
そんな本賞ですが、上で挙げた電撃小説大賞と小学館ライトノベル新人賞とは、決定的に違うところがあります。
私が応募したほぼすべての作品に対して、次のような主旨の評価が為されていたのです。
「もう少し、10代の読者に向けた作風を意識してみてはどうでしょうか?」
先ほども述べたように、私の書く小説は王道的なライトノベルではありません。
それははっきりと自覚しておりまして、どこをどのように切り取ってみても、「いわゆるライトノベル」と表現することのできない内容なのは明らかです。
電撃小説大賞と小学館ライトノベル新人賞は、この点についてほとんど問題にしないという姿勢を見せていたのですが、MF文庫Jライトノベル新人賞に関しては、そうではなかったわけです。
はっきりと「あなたの作品は、我々の求めるものとは方向が違う」というメッセージを伝えてきたんですよね。
これがいわゆる、カテエラというやつなのではないでしょうか。
つまり私にとって、MF文庫Jライトノベル新人賞に応募したときのみ、カテエラの存在を感じることができたということになります。
オススメの応募の仕方
以上を踏まえて、私はラノベ新人賞を目指している人に向けて、次のようなことをオススメしたいと思います。
「自分の書く作品が、いわゆるライトノベルとしての体裁が取れているものであると考えている場合は、どの新人賞に応募しても構わない。
けれども、王道から外れているものであると思っている場合には、狭き門ではあるけれども、電撃小説大賞をまずは狙ってみるのが良いのではないか」
倍率はもちろん重要な要素ですし、電撃小説大賞の「受賞の確率」を調べてみると、その宝くじのような数字に思わずクラクラしてしまうのですが、それ以上にカテエラの壁は絶対的であるように思います。
自分の作品がどのような性質を持っているのかをよく考えたうえで、応募するべき新人賞を選ぶのが、賢い選択なのではないでしょうか。
いちおう宣伝
ここら辺で、僭越ながら、私がこれまでに応募してきた作品について宣伝したいと思います。
まず、かつて電撃小説大賞で二次選考通過し、三次選考で落ちた2本の作品を、現在カクヨムにて公開しております。
一つは『世界はいかにして回っているか』。
もう一つは、『大瞑堂のある街』です。
これらは無料で公開しておりますので、よろしければお読みいただき、感想などいただければ大変嬉しく思います。
その他にもう1本、集英社ライトノベル新人賞に応募した『踊る相互確証破壊』という小説を、現在BOOTHにて販売しております。
この作品は、私の性癖である裸足フェチをこれでもかというほど詰め込んだ内容になっており、その変態性ゆえか一次選考で落ちてしまったものです。
極めてニッチな作品で、刺さる人には刺さるはず、という自信はありますので、同じ趣味のある方は、ぜひチェックしていただければと思います。
詳細は下記の記事をお読みください。
おわりに
以上、私の考える「ラノベ新人賞とカテエラ」について、ざっくりとですが文章にしてみました。
カテエラを語るというのは、なかなか難しいことではあります。
自分の作品が品質の悪さによって落ちたのか、カテエラによって落ちたのかは、多くの場合、はっきりと確認することができないものだからです。
また、あまりうるさくカテエラカテエラと騒いでいると、「こいつ、自分の実力のなさをカテエラのせいにしているな」などと思われてしまう危険性もあるでしょう。
しかしこの記事で紹介したように、あなたの作品は我々の読者に向いていない、という意味の評価をモロに突きつけられる場合も存在します。
その場合は、明らかにカテエラであり、その新人賞を目指しているのであれば、己の作風の方向転換について真剣に考える必要があるでしょう。
……まあでも、あまり考えすぎるのも良くないかもしれないんですけどね。
目指すべきはあくまでも「少しでも良い作品を書く」ことなわけですので。
これを読んでいるあなたが、私と同じく、小説を書いて新人賞に応募している人なのであれば、これからもお互い頑張っていきましょう。
諦めなければ夢は叶う、などということを真顔で主張できるタイプではないので、それは言いませんが、書くことを続けていれば、たとえ小説家になる夢は叶わなくとも、何か得られるものもあるだろう、とは思うのです。
とりあえず私はそういう感覚のもと、のんびりとワナビを続けている次第です。
全ての文字書き必見。推敲も校閲も面倒見てくれます。