天国的底辺

二次元、創作、裸足、その他諸々についての思索で構成されたブログ

本屋のない町にタピオカ専門店ができた

タピオカ

 

 ちょっと前のことになるのですが、私の住んでいる町にタピオカ専門店が新しくできました。

 駅前という、この町の中ではまあまあの立地。そこそこ良い時給でバイトを募集している情報をキャッチして、ようやく存在を知った次第。

 

 でもそのときの私の正直な気持ちは、とうとうこの町にもタピオカの波が――とかではなく、もうちょっと辛気臭い、次のようなものでした。

「文化がほとんど壊滅状態のこの町に、新しくできるのがタピオカ屋か……」

 今日はそんな、おらが町のプチ紹介です。

 

 

本屋が消滅して数年

 私が子供の頃は、この町にも一応、本屋と呼ばれるものはありました。

 近所の大きめなスーパーマーケットの中に一店。そして駅前に古くからある本屋が一店。

 私はべつに、物凄い本好きというわけでもないので、足繁く通っていたかというとそうではないのですが、漫画にせよそれ以外にせよ、それなりに利用していたのは確かです。

 

 しかし、まず10年以上前に、スーパーマーケットがべつの系列のそれに変わった際に、中にあった本屋が消滅。

 そしてさらに数年して、駅前の老舗も店を畳んでしまい、この町は「本屋のない町」になってしまったのです。

 

 一応、ここは横浜市です。

 全国的には、横浜といえば、まあそれなりに大きな都市のうちに入りますよね。

 でもそれと同時に、横浜というところは(どこも多かれ少なかれそうかもしれませんが)、ちょっと中心を離れると、急に田舎っぽくなっていくことでも知られています。

 私の住んでいる町は、まあ「緑の豊かな」と皮肉るほどではないにせよ、お世辞にも発展しているとは言えないところで、エネルギーというものが感じられないんですよね。

 そんな町から、宿命のように本屋が消滅してしまったのが、数年前のことです。

 

レンタルビデオ屋すらも消滅

 さらにそれに追い打ちをかけるように、唯一あったレンタルビデオ屋も消滅してしまいました。

 代わりに同じ場所にできたのは総合中古ショップ。

 私はお金のない人間ですが、そういうお店には興味がまったく湧かず、今日までまったく無縁のまま過ごしています。

 

 まあ、レンタルビデオ屋というもの自体、ネット配信全盛の時代には無用の長物なところもあるわけで、この町がどうのという以前に、なくなるのも無理ないことだったのかもしれません。

 しかしそれにしても、本屋に続いてレンタルビデオ屋もなくなってしまったというのは、私にとってはとても象徴的なことに思えたんですよね。

「とうとう、この町から『物語を摂取するための店』がなくなってしまったのだ」

 そんな風に感じられたのです。

 

 ついでに言えば、そのレンタルビデオ屋はTVゲームを売っている唯一の店でもあったので、こちらの意味でも同じことが言えました。

 

くたびれた町に現れたタピオカ専門店

 基本的に、この町は「年老いている」んですよね。

 それは町の雰囲気的にそうであるという意味もありますし、実際に住人の平均年齢が格段に上がっているように感じられる、という意味もあります。

 かつては(もう何十年も前)若い夫婦が新たに居を構えるのに適した町、という感じだったようなのですが、今はまるで、その夫婦がそのまま年をとった、みたいな感じになっています。

 そしてその夫婦は、どうやら文化的なことにあまり興味を示さないらしい。

 

 そんな町に今回、あのタピオカが(やや今さら感がありますが)やって来たわけです。

 それに対する感想は冒頭に書いた通り。

 他にもっとやるべき店があるだろう、という気持ちがあり、ついでに余計なお世話ながら、この町でタピオカ屋なんてやって商売が成り立つのだろうか、という心配もしてしまいます。

 

 この町はくたびれている。

 エネルギーを必要とするもの、文化的なもの……その手のものはすべて両隣の町に吸い取られてしまい、ここに残っているのは日常的な「食べる」と「寝る」だけ。

 今回できたタピオカ専門店は、この町のそんな性質を、あまりよく理解していない人が計画して始めたものなのではないかと、私などは邪推してしまうのです。

 

ただ生き続けるには住みやすい町だが……

 まあ、この町にも良いところがまったくないわけではありません。

 面白いものは何もないのですが、横浜の中心までのアクセスは近く、それは必然的に、東京までもそこそこ簡単に行けるということを意味します。

 その割には地価もこなれているし、スーパーやコンビニの他にも食事処には事欠かないので、先述したように「食べる」と「寝る」に専念するなら、住みやすい。

 ついでに言うと、台風による水害の心配もなく、また地盤が固いのか、地震が起きたときも市内の他のところよりは揺れが小さかったりします。

 

 ただ、とにかく文化的ではないのです。つまらないのです。

 まあ私は今やすっかりネット人間なので、ネットの中が充実していればリアル町内には特にこだわらない、と言えばそうなのですが、それでも時々思ってしまうんですよね。

 もうちょっと活気があっても、バチは当たらないんじゃないかなあ、と。

 そして、タピオカ専門店ができたところで、少なくとも私の言う意味における活気には、何の寄与もしてくれそうにないのです。

 

おわりに

 まあ、そんな町に長年暮らしている次第です。

「不満なら引っ越せばいいんじゃないの?」

 という声もありましょうが、もろもろの事情から動きがとれず、また「単に生活する上ではむしろ快適」な面もあることから、その選択肢はないんですよね。

 もうしばらくのあいだは、この町で生きていくことになりそうです。

 

 ……何だか、よくわからない記事になってしまいましたが、この辺にしておきますね。

 以上、横浜の片田舎からお送りしました。