漫画の積ん読をちまちま崩していく企画の、第13弾です。
……気の利いたリード文を何かしらひねり出そうと思ったのですが、ここの記述に興味を持つ人なんて、ぶっちゃけほとんどいませんよね。
というわけで、早速作品を紹介していきたいと思います。
村山慶『荒野の花嫁』1巻
オススメ度:★★★★★★★☆☆☆
石器時代――のようでだいぶ違う、そして実は少しファンタジーな世界。滅びかかった一族の元に、海の向こうから異なる部族の娘が漂着するところから始まる物語。
本作のいちばんの特徴は、いろいろ現実と異なる設定を抱えながら、それを具体的には語らないまま淡々と物語を進ませるところです。
そのため、物事の一つ一つが一種の謎として機能し、高揚感に繋がっていく仕組み。
このやり方は、紙一重だと思うんですよね。
ちょっと匙加減を間違えれば、謎が多いイコール「よくわからない話」という判断になってしまい、作品世界への興味は一気になくなってしまう。
その点、本作は独特の間と空気感が興味を持続させ、謎めいた部分について「早くべつの角度から何か語られないかな」と素朴に思わせることに成功しています。
ババ様が見た目若いのに、実は信じられないくらい長生きしていたり、その辺りの情報がときどきポロッと出てくるのが、とても良いタイミングなのです。
作風と絵柄のため、女性キャラ達が割ときわどい恰好をしていても、そこにえっちさを感じることがあまりありません。
普段の私だと、そういう淡白さを見せられると「もっと艶めかしさが欲しいかな」みたいなことを思うのですが、本作の場合は、これでいいという感想です。
とにかくこの空気感が生命線であり、ゆえに現状の表現の在り方についてはほぼ全面的に支持するというのが、その意味するところです。
奈良一平『29歳独身中堅冒険者の日常』1巻
オススメ度:★★★★★★★☆☆☆
白銀等級の冒険者、シノノメ・ハジメが、ある日ダンジョンの中で出会った(拾った)孤児のリルイと一緒に生活するようになるが――というファンタジー。
リルイは女の子なのですが、まだまだ全然幼く、ハジメとは親子のように接し、そこにロマンス的なものが発生する感じはまったくありません。
しかしながら、彼女は実は古代種で、しかもその種族がサキュバスであることが明らかになります。そして夜が来るたびに、大人の女性の姿になる。
それでハジメの反応が変わるわけではないのですが、読者からしてみると、大人リルイの隠しようのない色気に、勝手に予感をいろいろ抱いてしまうんですよね。
そのヤキモキが、良い塩梅だなという感想を持ちました。
ハジメの人となりにも好感が持てます。
貧民街の出身で、冒険者の厳しい現実もよく知っている。甘いところのある者から先に脱落していくこともわかっている。
でもリルイを切ることができず、仲間として扱い続けるハジメのまっすぐで温かい人間性は、どういう風に培われたものなんだろうなあ、みたいなことを考えさせられます。
世界の厳しい面を語りつつも、主役とヒロインの振る舞いは明るく前向き。良い意味でさくっと楽しめる作品ですね。
BOKU『放課後の拷問少女』1巻
オススメ度:★★★★★★☆☆☆☆
今まで好きになった相手が変わった人ばかりだった石丸大人は、高校入学に際し、今度こそ「普通で可愛い彼女」を作るのだと誓っていた。
そんなある日、ふとしたきっかけで二人の美少女に出会う。彼女らは人文研究会に所属していると言っていたのだが、ついていってみると、その部室は古今東西の拷問道具で埋め尽くされていて――というコメディ。
物語の導入は風変わりでインパクトがあったのですが、いざ展開してみると、割と普通に「可愛い女の子とのちょっとえっちなイベントの数々」で成り立っており、拷問を主題に置いた効果があまり出ていないように感じました。
毎回拷問に関する深い知識を学べるような、マニアックなラブコメなのかなと予想していたのですが、全然そうではなく、やや拍子抜け。
まあ、そうなっていたらもっと面白かったという確証はないのですが、結果として凄く平凡なラブコメになっているので、これなら変化球で攻めてくれたほうが、ワンチャンあったのではないかな、みたいなことを思った次第。
えっちいシーンのお色気度が中途半端なのも、その辺りの不満を増幅させる要因である気がします。
やるならもっと派手にやって欲しかったですね。もちろん、掲載している雑誌的に、このあたりが限界だったという可能性が高いのですが、現状だとすべてがぬるいので。
ただ個人的には、第1巻最後の話で新登場した幼馴染が制服素足履きだったので、この子の今後のために続刊をチェックしたいなと思ったところはあります。
三月『わたしの友達が世界一かわいい』1巻
オススメ度:★★★★★☆☆☆☆☆
友達のいない俺っ娘の生徒会長・西園寺小春と、彼女にまとわりつく天然少女・鈴木まりあを軸とした、ほのぼの学園4コマ。
一言でいうなら、いろいろな要素が中途半端であるように感じました。
百合漫画を指向しているような空気をまといながら、そうはなりきれていない。
小春には中二病っぽいところがあるのだけれども、それが活きるシーンはまったくない。
副会長の2人の、喧嘩しつつも仲の良いところが、唯一「まあまあやりきっていた」と評価できるものであったように思います。
この種の作品において「可愛い」ことは最も大切なことではあるのですが、同系統の作品が溢れている昨今、可愛いだけではなかなか厳しいものがあります。
何か他に、作品を特徴づける強い個性がないと。
その意味で本作は、その個性を獲得し損なったというか、小さくまとまってしまっていたというか……いずれにせよ、刺さるところが無かったんですよね。
種は蒔いていたのに、その種にきちんと水をやらなかった、みたいな。
ちなみに、第1巻と銘打たれておりますが、2016年に刊行されたっきり、第2巻は出ていないようなので、これ1冊で終了、ということみたいです。
きつい言い方ですが、それも仕方なかったかな、というのが率直な感想です。
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