漫画の積ん読をゆっくり崩しては感想を書いていく企画の、第14弾です。
このところ時間がとれなくて、以前ほどのペースで読めていなかったのですが、ようやく規定字数ぶんの感想がたまったので、吐き出させていただきます。
こうして消化しているあいだにも、無料の第1巻を不定期で購入し続けているので、未読の総量が減っていく様子はありません。
この感じで行けば、この企画も当たり前のように「その100」くらいまでは続けられるものと思われます。
ブログのネタに事欠かないという意味では嬉しいですが、積ん読の無限地獄という意味では、ちょっと恐ろしいですね。
電子書籍なので、スペース要らずではありますが……。
山下文吾『群れなせ!シートン学園』1巻
オススメ度:★★★★★★★★☆☆
様々な動物が生活している全寮制の学校、私立シートン学園。
そこに通う数少ない人間の一人である、動物嫌いの間様人は、ある日、一人ぼっちで食事をしている狼少女・大狼ランカと出会う。
そのランカから「私の群れに入れてやる」と言われた間様は、もちろん拒否するが――?
という感じのコメディ。
たぶん、この説明では世界観がよくわからないのではないかと思います。
まあ一言でいうと、いろんな動物達が擬人化して学園生活を送っている世界のお話なわけですが、その成り立ちみたいなものは一切語られないので、「こういうもの」と受け入れるしかありません。
ついでに言うと、オスは動物の姿のまま学生服を着ていて、メスだけが人間の顔になっているという、あざといと言えばあざとい偏りもあります。
この辺は、人によっては関門かもしれません。
でもそれを受け入れた後は、とても面白いコメディが待っているんですよ。
普通にキャラクター同士の交流が楽しいのもさることながら、動物の習性をきちんと取り入れた言動やエピソード構成になっていて、無茶な世界観がしっかり生きたものになっているのです。
人間だけの学園モノでは絶対に成立しない内容は、かなりの独自性を帯びており、一見の価値はあると言うことができるでしょう。
どのキャラクターにも個性があって良いのですが、個人的にはナマケモノのミユビが初登場時に制服素足上履き姿なのが印象に残りましたね。
次の話では身だしなみが整っていて、靴下も履いてしまっており、束の間のときめきでしたが……。
岬下部せすな『サクラコ博士のメモリアツリー』1巻
オススメ度:★★★★★★★☆☆☆
田舎の大学に通っている貧乏学生・大葉子チガヤが、高額バイト先として見つけた植物研究所で所長を務める天才少女・彩咲サクラコと出会い、様々な案件に関わっていく話。
本作を読み始める前は、草花を軸にしたハートフルストーリーみたいなものを想像していたのですが、蓋を開けてみたらちょっとしたミステリー物でした。
出会い頭に、サクラコがチガヤの姿を見て、彼の境遇や動機をピタリと合ってしまうくだりなどは、シャーロック・ホームズあたりに代表される、お約束のやつですよね。
第1話のそこを読んだ時点で、ああミステリー路線なのね、と悟った次第。
お話の筋としては、まずチガヤにもサクラコにも過去に関する謎が提示されており、しかしそれは隠されています。
それを少しずつチラ見せしながら、来訪者達の依頼を受け、それを果たす過程でその都度の謎を解いていく、というスタイルですね。
一つの依頼につき、だいたい2話を使うペースなので、依頼ごとの謎はさほど大掛かりなものではないのですが、植物の知識をメインとしたディテールには割と力が入っており、入り込んでいくには十分なものになっているのではないかと、素直に思えました。
ミステリーのたぐいに明るくないので、評価が甘めかもしれませんけどね。
キャラクター的には、サクラコの造形が魅力的です。
紛れもない天才少女なのですが、やたら小柄で私生活がだらしないところがあり、博士口調が見た目とのギャップになっていて可愛らしく機能している。
まあ、ややテンプレ的と言えなくもないですが、クールさとキュートさの両立が上手くできているので、成功でしょう。
本棚の上のほうにある本を取ろうとしてぴょんぴょん飛ぶネタがお気に入りです。
サクラコの過去の一部が明かされたところで第1巻が終わるので、引きもなかなか。
いずれ続きを手に取ることもあるかもしれません。
つっつ『おむじょ!』1巻
オススメ度:★★★★★★☆☆☆☆
高校生活に退屈を感じていた大根将太は、ある日、クラスメートの音姫いちごがおむつを穿いていることを知ってしまう。
彼女は男子と話して緊張すると、尿意を抑えられなくなる体質で――。
というラブコメ。
この紹介だけでもわかるように、本作はかなり特殊な嗜好に依った内容になっています。
心理描写的には至って普通のラブコメであり、手堅いと言えば手堅く、平凡と言えば平凡なのですが、おむつ要素一つで、目立ったものになっている感じですね。
そのような路線にしたことで獲得できたファンと、引いていった読者、どちらが多いのかは定かではありませんが、攻めていくのは良いことだと思います。
ただ、残念ながら私個人は、その攻め方とは相性が良くありませんでした。
おむつ属性、というかおもらし属性は元々なかったし、本作の描写によって目覚める感覚もなく、「まあ、好きな人は好きなんだろうな」というところ。
そこに冷めた目を持ってしまうと、あと残っているのは先述したような「普通の」ラブコメ要素だけなので、結果として上記のような★の数となりました。
いちごのキャラクター造形がいまいち単調なのが、特に気になった点でしょうか。彼女に見どころがもっとあれば、やり取りも面白くなっていたと思うのですが……。
あ、でも表紙のイラストは良かったです。
こだくさん『きょうの思春期』1巻
オススメ度:★★★★★☆☆☆☆☆
とある女子中学校の生徒達をオムニバス的に描いていく、1Pギャグ漫画。
笑いをとる手段としては、ナンセンス、下ネタ、言葉遊びの3種類が主なのですが、正直な感想としては、いずれも滑り気味なのではないか、という感じでしたね。
ナンセンスには特有の才能が必要だと思うのですが、それを見出すことはできず。
下ネタはキャラクターの可愛らしさと結びついていないと、この場合は効いてこないと思うのですが、そこまで可愛らしいわけでもなく。
言葉遊びに関しては、何と言いますか、説明的すぎるところがあって、「なるほど、一所懸命考えたのですね」という風にしか思うことができませんでした。
……と書くと、何だかボロクソになってしまいますが、もちろん全ページにわたってひとかけらの面白味もなかった、とまでは言いません。
「お、このネタはちょっと上手いかも」と感じるページもありました。
でも、基本的にはやっぱり滑っていたと思うのです。
良い面を挙げるとしたら、目指しているのであろうテイストに、一定の独創性がある、というところでしょうか。
狙った笑いが高い確率で決まっていれば、その独創性が大きな武器として輝いていたのだろうな、とは思いますね。
結果としては、少々残念なことになっており、ポテンシャルのままで終わってしまっているという感じですが……。
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