今もじわじわ増え続けている漫画の積ん読を、少しずつ崩していく企画の第12弾です。
弾切れを起こすまでには少なくとも数年かかりそうなので、この企画についてはネタが枯渇する心配がなく、毎日更新を続ける当ブログとしては心強かったりします。
ただ、それと引き換えに……というわけでもないでしょうが、実のところアクセスはあまりありません。
やはりタイトルに作品名がないと、SEO的に弱い記事になってしまうのでしょうか。
1記事最低2,000文字以上、という当ブログの基準を撤廃するなら、この企画で紹介している作品をすべて単発の記事にして、作品名をタイトルにすることもできるのですが……。
ちょっとセコいですよね。
そういう運営の仕方はどうかと思うので、スタイルとしては現状のコレを維持していくつもりではいます。
しかしタイトルについてはちょっと考え直すかもしれません。やはり読んでいただかなくては意味がありませんので。
片岡とんち『魔王のママになるんだよ!』1巻
オススメ度:★★★★★★★☆☆☆
魔王を倒すはずだった勇者の少女ゼノ・ゼビアは、その魔王ギュル・ギュルルエルが赤ん坊だったことから、倒すことができず連れ帰ってしまう。
しかしその魔王は、1歳児ながら知能は高く、煩悩の塊のような奴だった。
王都での裁判の末、ゼノは魔王の保護者として、彼を正しく教育していくよう命じられる。
失敗したら処刑。さあどうする――というコメディ。
基本的に楽しく読めたのですが、一つ引っかかった点が。
ゼノがとてもまっすぐな少女で好感が持てるのですが、それゆえに、彼女に降りかかる艱難辛苦の数々が理不尽すぎて、笑って済ませられない部分を感じたんですよね。
序盤の裁判も一方的ですし、育ての祖母の振る舞いにも身勝手なところが凄くある。
作中でもゼノが神にそんな人生について問う場面があるので、これらはすべてコメディ要素として意図的に織り込まれたものなのですが、笑う以前に気の毒になってしまって……。
この辺りが気にならない人が読めば、評価はもっと高くなるものと思われます。
中二病の少女、魔王の侍女など、脇役も良い感じですし、絵も綺麗。
全体としてのレベルは高く、手に取ってみる価値はばっちりあります。
ただ、繰り返しになりますが、ゼノの人生がもうちょっと報われて欲しいなという気持ちでいっぱいになってしまいましてね……。
三ツ橋快人『RYOKO』1~2巻
オススメ度:★★★★★★★☆☆☆
食材が意思を持ち、人を襲うようになってしまった日本。滅びかけた国で、殿場料子は家族を守るために、刀を携えて食材達と戦い続ける――というアクション物。
この出だしの設定はすごく馬鹿馬鹿しく作ってあるのですが、そこから伸びている物語はかなりガッチリしたものになっており、アクションシーンの躍動感ともども、しっかり入り込むことができます。
「もう日本は終わりである」という絶望的な状況が上手く表現できており、哀しき最後の抵抗としての戦いが、ある種の美しさを放っている。
個人的に、主人公の料子が制服に素足下駄履きなのが気に入りました。
アクロバティックな戦いを展開するにあたって、下駄だと動きにくいのではないかという突っ込みはあるのですが、これがキャラデザとして凄くハマっているんですよね。
あえて具体的に意味を見出すなら、家庭の台所を切り盛りする女子の表現、といった感じでしょうか。
絵柄が結構ラフなので、裸足でもあまり艶かしくはなく、その意味ではフェチ心の疼きにくいものではあるのですが、料子の個性としてとても輝いています。
今回は1巻と2巻を読んだのですが、物語は長く続けることも、割とすぐ畳むこともできるという感じで、ここからどうなっていくのかは良い意味で読めませんでした。
アクション面では、白米という最強っぽい存在がすでに登場してしまっているので、これ以上のエスカレートはしないのかな……?
いや、これも方法がないわけではないので、不確定要素ですね。
哀しく爽快で、時に可愛い作品です。
あらた真琴『となりの席は外国人』1~2巻
オススメ度:★★★★★★☆☆☆☆
外国人の多い小学校で教師をしていたことのある作者が、その当時関わった彼らの奔放な振る舞いの数々を描く、思い出エッセイ漫画(という呼称があるかはともかく)。
登場する生徒・その親・外国人教師達は皆強烈な個性を放っており、どこまでが忠実な再現で、どこからが誇張なのか定かではないのですが、いちいち印象的です。
正直なところ、私にはこの混沌とした様子は、多様な文化圏の人間が一ヶ所に集まっているからというよりは、もっと単純に地域レベルとかの問題にも思えたのですが、実際その辺どうなのでしょう。
「ぶっ飛び方」に文化性が表れているのは確かなのですが、「ぶっ飛んでいること」そのものは、それ以前の話なのではないかと……。
いずれにせよ、求めるものが大きいと大変そうだなとは感じましたね。
こういう場所に勤務するには、良くも悪くも「なるようにならないのが当たり前」という精神が必要そうです。
しかし、漫画としてはそれらが楽しく読めるようになっており、我が事のように捉えない限りは愉快な日常を堪能できました。
こういう味つけができていることには、(当時の)作者さんのおおらかな眼差しが少なからず関与しているような気がします。
気の休まらない時間を過ごしながらも、愛着は確実にあったんだろうなあ、みたいな。
茶藤あんこ『この件、絶対秘密でお願いします!』1巻
オススメ度:★★★★★★☆☆☆☆
並外れた怪力を持っていることを隠して学校生活を送る柊さんと、彼女の秘密を唯一知っている吉野くんの立ち回りを描いた学園4コマ漫画。
吉野くんは怪力とか関係なく柊さんに好意を持っているのに対し、柊さんは彼を何とも思っていないばかりか、彼の気持ちに1ミリも気づいていないという、すれ違いの関係性が肝になっています。
この作品は、読者の性別で評価が分かれるところかもしれません。
もう少し正確に言うと、吉野くんの好意からの言動に、コメディ以上のものを感じられるかどうか。
私の場合は、それがイマイチ感じられなかったんですよね。
なので作品全体から、ラブコメ的な甘酸っぱさを受け取ることができなかったんですよ。
これが例えば、立場が逆――つまり柊さんが吉野くんに好意を持っている構図だったら、2人のすれ違いも甘々な何かとして消費することができたのですが。
結果的に、私の目にはやや淡白な作品に映ってしまいました。
ただ、「ラブコメにしきらない」ことも作者の狙いのうちなのかもしれません。
もしそうなのだとしたら、より根本的なところで私とは合わなかったことになりますね。
逆に言うなら、学校が舞台で男女ペアが主役格だけれども、色恋沙汰よりギャグを取るような作風が好きだ、という人は、本作と相性が良いのではないかと思います。
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