改めて言うまでもないことですが、スマホは我々の生活にすっかり浸透し、今さらそれなしでは生活できないところまで進んでしまいました。
仕事でもプライベートでも、スマホは大活躍。iPhoneが登場する以前に私達がどうやって生きていたのか、もはやうまく思い出すことができないくらいです。
こうなってくると、スマホだけですべての物事を完結させたい、という風に考える人がそれなりに現れていることでしょう。
かくいう私もその一人なので、気持ちはよくわかります。
今日はその辺の願望について、夢と現実を比較するかたちで少し書いてみたいと思います。
スマホで仕事を完結させている有名人
スマホで仕事を完結できるということは、いつでもどこでも好きなところで仕事ができるということです。
それは、様々な縛りの中で毎日あくせくと働いている人にとっては憧れの環境で、できることならそんな風に働いてみたいなと、そう夢見るのは無理もないことでしょう。
実際、スマホだけで仕事を完結させている人は、ゼロではありません。
いちばん有名なのは、ホリエモンこと堀江貴文さんではないかと思います。
堀江さんは、実業家としてあちこちを飛び回っている人ですが、様々な人と連絡を取ったり、書き物をするにあたって、PCを使う事はないといいます。
スマホ1台あればすべての仕事をこなすことができる、PCなんか要らない、と堀江さんは常々主張しています。
恐らく日本有数のスマホのヘビーユーザーの一人に該当するでしょう。
他に思いつくところでは、メンタリストDaiGoさんが挙げられますね。
DaiGoさんの現在の主な収入源はニコ生だと思いますが、彼はその配信のすべてを、iPhone1台でこなしているといいます。
話によると、動画の編集作業もしていないようで、文字通りiPhoneで撮影したものをそのまま配信し、それでビジネスを成り立たせているらしいのです。
また、本を執筆するのもスマホであるという話を、どこかで聞いたことがあります。
お二人とも、その収入には目を見張るものがあるわけですが、そのすべてが1台のスマホから生み出されているのだと考えると、夢が膨らみますよね。
誰もができることではない
でも、夢だけで語って良いのはここまでです。
多くの物事と同じように、スマホですべてを完結するという話にも、あまり景気の良くない現実が立ち塞がります。
堀江さんは、スマホ1台あればすべての仕事をこなすことができると豪語していますが、すべての人間がそれを真似できるわけではありません。
堀江さん自身が、そういう仕事のやり方をしているというのは、嘘ではないでしょう。実際に彼は、スマホだけを携えて世界各地を飛び回り、文字通りすべての作業を見事に成立させているのだと思います。
ただ、ここで大事なのは、それは堀江さんがそういう仕事をしているだけだ、ということです。
つまり、「スマホ1台あればすべての仕事をこなすことができる」ではなく、「世の中にはスマホ1台ですべてこなすことのできる仕事がある」という言い方が正解なのです。
端的に言って、堀江さんは自分自身の仕事のスタイルを大きく語りすぎているところがあります。
例えば彼は、とある動画の中でこんなことを言っています。
「今の世の中、動画編集の仕事1本で簡単に数万円稼ぐことができる。昔は動画編集をするには高いPCとソフトを買わなければならなかったが、今ではスマホでできる」
彼のこの言い方には、ちょっとしたトリックがあります。
動画編集の仕事1本で数万円稼ぐことができるのは事実です(あくまでも「できる」ですが)。また、今は動画編集をスマホですることができるのも事実です。
しかし、数万円稼ぐことができるレベルの動画編集の仕事をスマホでできるかというと、これは話が異なってくるのです。
スマホでできる動画編集は、あくまでも簡易的なレベルであるか、あるいは操作に難のあるものであり、「ちゃんとした」仕事をしようと思うならば、やはり動画編集にはPCが欠かせません。
それを堀江さんは、あたかもスマホ1台で数万円の動画編集の仕事を請け負うことができるかのように言っている。
これはちょっと、誠実では無いモノの言い方ですよね。
この動画編集の話は、とてもわかりやすい例ですが、世の中の仕事の多くは、大体これと似た性質を持っています。
その分野なりの事情が色々とあって、そう簡単にすべてをスマホに移しきることはできないのです。
意地の悪い言い方をするなら、要するに堀江さんは、PCが必要な領域を他人に投げて生活しているだけなんですよね。
「スマホでは無理」と「スマホでは非効率」
先ほどから「スマホで完結させる」という言い方をしてきましたが、これができないということが具体的にどういうことなのかについては、2つのパターンがあります。
1つは、文字通り「スマホでやるのは無理である」というもの。もう1つは「スマホでもやることができるが、とても非効率になる」というものです。
この2つのうち、前者はあまりありません。スマホでは絶対にできない、という作業は、それなりにアプリが揃っている今となっては、そんなには見当たらないのです。
従って、スマホでできないというとき、それは具体的には、スマホでやるのは非効率であり、ゆえにその手段を選ぶべきではない、という意味になります。
先程の動画編集の話は、この両者のハイブリッドでしょうか。スマホアプリではできないディテールがあり、そしてまた非効率でもある。
言うまでもなく、世の中の誰かが、動画編集の仕事を請け負わなくてはなくてはなりません。
その人達にとっては、スマホだけで仕事を完結させるというのは、まったくの夢物語……というか、ほとんど世迷い言なわけです。少なくとも現代においては。
話はそれてしまいますが、こういうところで堀江さんは無用な反感を買っているのではないかと思いますね。
彼は非常に賢い人物だと思うのですが、常に細かな部分でハッタリをかましている。
彼の言い分からこぼれ落ちた現実を生きている人にとっては、さぞ面白くないことだろうというのは、想像に難くありません。
タブレット万能化の動き
スマホが非効率なのは、何と言っても作業画面の小ささにあるでしょう。
もちろん、そのコンパクトさが使い勝手に繋がっている場面は無数にあるわけですが、込み入ったアウトプットをしなければならない状況になると、デメリットの側面が表に出てくることになります。
それを補うような意味で、現在ではタブレットが、スマホに託された理想の肩代わりをしようとしているように観察されます。
近年では、iPadの勢いが目覚ましいですね。Apple Pencilの登場によって、アナログの長所も取り込み、万能のガジェットとしての進化を順調に進めています。
タブレットであれば、実際にかなりのことをその中で済ませてしまえます。iPadだけ持って仕事してます、という人なら、そこそこ出てきたように感じられます。
とはいえ、タブレットにももちろん限界があります。
コンピュータとして最高のスペックを持っているわけではないので、処理能力を必要とする作業については、やはりPCに譲るところがあります。
また、複数のモニタを使った方が効率が良いような作業についても、やはりタブレットの出番ではありません。
結局どうしても、マシンパワーが必要な重い作業、一覧性の求められるデータを扱う作業、操作のややこしい作業、といった辺りについては、今のところPCが圧倒的に便利な道具である、という結論になってしまうのです。
理想的な使い分けに必要なもの
こういったことを考えると、少なくとも2019年現在においては、特定のコンピュータですべてのことを完結させる、という夢は、あまり深追いしないほうが良い、という結論になるでしょう。
これ1つあれば全てが完結できる、という状態はとても気持ちの良いもので、最終的にはそうなることを目指すべきだとは思うのですが、現在はまだテクノロジーがその次元に達していません。
なので、現状大切なのは、コンピュータをどう使い分けるかをきちんと考えること、になるでしょう。
現時点で、それを考えるときに重要なのが、クラウドを意識することだと思います。
クラウドの存在によって、コンピュータは純粋な意味で「端末」の役割に収まることになります。
端末はあくまでも、本質にアプローチするための複数の道具の一つに過ぎません。ある環境においてはある道具を使い、べつの環境においては別の道具を使う。けれども扱っているデータは同一のもの。
こういう状態をいかに構築するかが、現在実現しうる「効率の良い作業」の肝となるのではないかと思います。
遠い将来には、とんでもない性能を持ったコンピュータが脳と直接リンクするようになり、誰もがそれを使えるようになるはずです。
そのときには、端末の使い分けなどはまったく必要なくなるのでしょうが、そうなるまでにはまだしばらく時間がかかるものと思われます。
今は過渡期であり、我慢の時期ですね。夢は夢として大切に持っておきながら、とりあえず目の前の現実に対処するために、複数のコンピュータを効率よく使っていくことが、私達に必要な工夫なのではないでしょうか。
おわりに
先述したように、私にも、スマホであらゆることを全部済ませてしまいたいという願望があります。
――というより、そういう願望は人一倍強いと思います。いつもスマホを眺めながら、これだけで全部のことができたらどれだけクールな人生になるだろうか、と考えていますから。
でもそれは現実的ではない(そういうポジションには就けない)ので、あくまでも実際に可能な範囲内で、コンピュータの美しい使い分けを模索しているところです。
今は、スマホとPCの両方を使うことで、いかに素早く文章書くか、というノウハウを構築することにハマっているところです。
これから新しく小説を書こうと思っているところなので、その執筆速度を稼ぎ出すために、できるだけ多くの工夫をしておきたいと頑張っているところなんですよね。
具体的には、これまでの私の小説の執筆速度は時速1,200文字というところでしたが、これを音声入力やその他の工夫によって、時速4,000文字までスピードアップさせたいと思っているのです。
こういう「作業のカスタマイズ」は楽しいですね。
作業そのものは、結構苦痛だったりするのですが、効率のことを考えているときは、それを忘れて没頭してしまいます。
いつの日か、インターフェースというものが究極の地点に到達するときのことを思いながら、とりあえず今は、泥臭い効率化を図っていきたいと思います。