天国的底辺

二次元、創作、裸足、その他諸々についての思索で構成されたブログ

マインドマップを小説の設定作りに取り入れてみた

 皆さんは、マインドマップというものをご存知でしょうか?

 ……いや、これは愚問かもしれませんね。この記事をご覧になっている方のほとんどは「マインドマップ 小説」等で検索してやって来られた方でしょうから、少なくとも言葉は知っているのでしょう。

 ただ同時に、検索をするくらいですから、すでにマインドマップをバリバリに使いこなしていて、今さら知りたいことなど何もない、という状態でもないのではないかと推察いたします。

 

 というわけで、当記事では、私がマインドマップを取り入れてみて感じたこと、具体的にどのような点が良くて、どのような点がそれほどでもなかったのかについて、皆さんの参考に少しでもなるよう、書いていきたいと思います。

 

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マインドマップとは

 形式上、まずは一通りの説明をしておきましょう。

 マインドマップとは、イギリスの著述家トニー・ブザンさんが開発した、情報や思考を整理するためのテクニックです。

 頭の中にあるものを視覚化する画期的な方法として広まっていき、今では芸術からビジネスまで、幅広く利用されています。

 元々はノート術だったわけですが、現在ではコンピュータ・ソフトウェアによるマップ作成も浸透しており、活用方法は人によって様々です。

 いちばん新しいところでは、iPadにApple Pencilでマインドマップを作成するという、デジタルと手書きの融合パターンが挙げられるでしょうか。

 

 そのメリットは何と言っても、頭の中の状態を目の前に視覚情報として浮かび上がらせることで、自分の脳内の様子が「わかってくる」ところにあります。

 それまで、自分の頭の中にあるにはあるが、全体の中でどのように機能し得るのかわからなかったことでも、マインドマップに落とし込むことによって、それが他の情報とどう関連しているのかが、一目瞭然にわかるわけです。

 

 また、マインドマップは、デザイン的に脳内の情報のつながり方と似ており、それによって生まれるとっつきやすさがある、とも言われています。

 それを重視するため、マインドマップの定義の中には「単語と単語を繋ぐ線は曲線にするべし」などという項目まで存在します。

 これは開発者であるブザンさんが主張するマインドマップの定義の一つで、一見すると細かすぎる要求であるように思うのですが、マインドマップを推奨する立場からすると、とても重要なことらしいですね。

 

 他にもマインドマップの定義はいくつかあり、ブザンさんは、それらをすべて満たさなければマインドマップではないと主張しているようです。

 しかし決して堅苦しいものではなく、いったんそれらを把握できれば、自分の思考を楽しく展開させることのできるツールなのだというのもまた、大切なポイントとして語られていることです。

 

今回の使い方

 今回、私が使用したのは、SimpleMind+というiOS用のアプリです。

 A4サイズのコピー用紙に手書きしていくことも考えたのですが、アプリだからこそできる「並び替え」に大きな価値があるのではないかと判断し、それらの中から選ぶことにしました。

 

 アプリといってもたくさんの種類が存在し、どれを選ぶかで多少迷ったのですが、最終的には上記の通り。

 身も蓋もない話になりますが、最終的な決め手となったのは、無料でどこまでの機能を使うことができるかということです。

 その点、SimpleMind+は、マインドマップとしての機能のほぼすべてを無料版の時点で備えており、こちらの要求をほぼ満たしてくれそうだったのです。

 作ったマップをテキストファイルなどの形式で書き出す方法がないのが難点ですが、アプリ内の使い勝手は十分すぎるほどと言えました。

 

 今回私がマインドマップを使い始めたのは、新しい小説を書くためです。

 具体的には、いちばん最初に舞台設定、キャラクターの最低限の属性、文体の設定、大仕掛けのアイディアを考える上で、マインドマップを有効活用することができるのではないかと思ったのです。

 従って、それ以外の作業については、最初からマインドマップで進める範疇には含めませんでした。

 例えば、本格的にキャラクターを作っていく段階は、別途履歴書を作って、そこに書き込むことで進めていくことになります。

 もちろんプロット等もその後でべつの方法により作っていくことになります。

 

 今回はとにかく、全行程のうち基本中の基本の部分について、着想を少しずつ、文字通り枝を伸ばすように拡げていくことに専念することにしました。

 

効果はまずまず

 マインドマップによる制作作業をしてみた感想を一言でいうと、まずまず効果はあるかな、というところです。

 思いつきと連想を記録する手段としては、確かに直感的ではありました。

 特にそれを感じたのは、ある枝から別の枝にアイディアを伸ばしていく際、同時に思いついたもう一つのことを、さらにべつの枝にすぐ書いていくときでした。

 何か思いつく瞬間を逃さずに捕らえることと、それを後から有機的なまとまりとして眺めることができるということの両立という意味で、他のやり方よりも一歩先を行くものなのではないかと感じたのは確かです。

 

 コツは、最初から綺麗なマップを作ろうとしないことです。

 マインドマップ以外にも通じる話かもしれませんが、0から1を生み出す段階で、あまり「見た目の美しさ」のようなものを求めてしまうと、瞬間的な直感、脳の瞬発力のようなものを遮ってしまい、出るはずだったものも出なくなってしまうと思うのです。

 それを避けるために、マインドマップを作る際には、とにかくいかに思いついたことを瞬時にそのままかたちにするか、ということに専念すべきだと思いました。

 

 難点としては、後で枝を整形するのが結構面倒臭いということです。

 最初は何の気なしに、適当な場所に思いつきを書き込んでいくわけですが、大抵の場合、後になると「そこにそれがあること」が邪魔になってきます。

 なので、それを移動させなければならないわけですが、これがなかなか……。

 マップ全体のバランスを取る上で、必要不可欠なことなのですが、思いついたことをすぐ書き留めるときの最善と、それを後から眺める段階の最善を繋げるのに、ひと手間かかってしまうわけですね。

 

 なので後半は、自動整列モードを使って作業していました。

 このモードを使えば、枝が文字通り自動的に整列してくれるので、マップ全体をビジュアル的に整えることを考えなくてもよいのです。

 ただ、これをやっていて思ったのは、「このモードでマップを扱うのって、要するにアウトラインプロセッサを触っているのと同じなのでは?」ということでしたね。

 情報の並びにだけ着目して言うならば、要するにマインドマップは、アウトラインプロセッサを「脳みそに馴染むかたちに」配置したもの、なわけですから。

 

 その意味で、自動整列によってマインドマップの本質は少し失われてしまっていたのかもしれません。

 でも、自由に書いていると、先述したように、どうしても見栄えが悪くなり、面倒な並べ替えを余儀なくされるんですよね。

 ここら辺は、どうするのが理想的なのか、未だに自分の中で解決していないところです。

 

 あと、それに関連して言うと、「マインドマップのビジュアルが脳内の状態と似ているから馴染みやすい」云々は、正直ピンと来ませんでした。

 マインドマップの見た目そのものが、何か自分の発想力を刺激するというようなことは、少なくとも私にはまったく起きなかったのです。

 正直なところ、マインドマップ開発者達によるその辺の主張は、悪く言えばこじつけなのではないかと思いました。

 

 もしマインドマップのビジュアルが、本当に脳に対して良い影響与えるのだとしたら、それは多分、大きな白紙に手書きしていくときにこそ発揮されるものなのではないかと思います。

 スマホアプリを使い、小さな画面内でマップを扱っている限りは、その恩恵は受けられないのでのではないかと感じましたね。

 

マインドマップが担当しない領域

 一つの作業のすべての行程について、マインドマップが有効に機能するわけではありません。

 具体的には、詳細を詰めていく段階においては、普通にリストや文章で表現するほうが良いのではないかと思われます。

 マインドマップはあくまでもその前段階、アイディア出しとその整理に使うものです。

 

 小説でいうと、今回私がやったように、全体の基本中の基本の部分をアイディア出しするのに留めるのが良いやり方でしょう。

 先述したように、キャラクターの履歴書を作る段階ですとか、プロットを作る段階に関して言えば、マインドマップを持ち込むのは逆にちょっとやりにくい作業になってしまいそうです。

 従って、これらの段階を進めるときには、それまでに作ったマインドマップを参考資料として眺めながら、どこかべつのところで作業する、というやり方になるでしょう。

 

 その用途のためにも、今回作ったマインドマップをテキストのかたちで書き出したいわけなのですが、その機能がないのが、返す返すも残念なところであります。

 無料のアプリを使っておいて文句を言うな、と言われたら、何一つ反論することができないわけですが……。

 

おわりに

 何事も、0から1を生み出す段階が非常に難しく、ここに効果的な手法を持ち込むことができるかどうかは、物事を劇的に早く進めることができるかどうかの、重要な分岐点になります。

 マインドマップは――少なくとも今回の私の使い方では、そこまで劇的というわけではなかったのですが、しかし一定の魅力を感じたのは確かです。

 まだ私自身、マインドマップを使いこなしているとは言い難いので、今後様々な場面で使い倒していくうちに、経験値も溜まっていき、また少し違うことが言えるようになるのかもしれません。

 そのときにどのような生産性を得られるかは、今のところまだ想像ができないというのが正直なところですが。

 

 そんなわけで、現在の私としては「これは物凄くオススメ!」というところまではいかなかったのですが、しかしマインドマップを使うのには、準備や気構えというものはほとんど必要ないので、ちょっとでも気になったのであれば、すぐにでも導入することができます。

 もしあなたが興味をお持ちなのであれば、軽い気持ちで様々なことに活用してみるのが良いのではないでしょうか。

 その際には、アプリと手書きの両方を試してみて、どちらが自分に合うかをチェックしてみることをお勧めいたします。

 

 今回はマインドマップだけで1本の記事を書いたわけですが、いずれ「アイディア出しの方法」を幾つかまとめて紹介する記事を書きたいと思っています。

 以前べつの記事でチラッと触れた「セレンディピティFA法」など、私の知っている手法はそれなりにあるので、それらを全部まとめて、使い勝手や効能などを比較できると、なかなか有用な記事になりそうですよね。

 

 そういう情報を、これからもどんどん提供していきたいです。

 

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