天国的底辺

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漫画の積ん読を崩して感想を書いてみた:その11

 粛々と漫画の積ん読を崩して感想を書いていく企画の、第11弾です。

 ぶっちゃけた話をすると、このシリーズ、そんなにPVを稼げるわけではなく、誰かのニーズに応えているというよりはむしろ、当ブログの毎日更新を継続するための穴埋めとして便利に使っている、というのが現状だったりします。

 もちろん、きちんと読んで、真面目に感想を書いてはいるんですけどね。

 

 そんな感じなので、これまで10回やってきて、紹介した漫画が売れたことも一度としてありません。

 高い評価をしたものは、1冊くらい売れてくれてもよさそうなのですが……。

 まあ、そんな甘いものではない、ということでしょうか。

 

 

 

久米田康治『かくしごと』1巻

オススメ度:★★★★★★★★★☆

 

 自分が漫画家であることを娘にひた隠しにし続ける男・後藤可久士が、作品作りに奮闘したり、娘に対する仕事の隠蔽に奮闘したり、その他いろいろと奮闘するお話。

 各話のあいだに挿入される作者のコメントからうかがえるように、本作は決して自伝的ではないものの、漫画家という職に対して作者自身が考えていることが、存分に埋め込まれたものとなっています。

 コメディ色が強いにも関わらず、そこはかとなく伝わってくる魂の叫びのようなものは、単にそう見せるテクニックに長けているというだけではないのでしょう。たぶん。

 

 一つ一つのネタが非常にパンチの効いたものになっているだけでなく、大筋には何かすごく胸を突くものが待っていそうな予感が漂っており、とても惹かれるものがありました。

 サッと作ってサッと出したような脇役キャラクター達までが、悔しいくらいきちんと機能していて、退屈なページがほとんどまったく生まれない。

 この辺り、漫画家としての純粋に高い技術を目の当たりにしたという感じです。

 

 作者の久米田さんは言うまでもなく有名な方ですが、私は『さよなら絶望先生』をアニメで観たことがある以外、氏の作品には触れたことがないんですよね。

 しかしこの第1巻を読んで、次巻以降が気になっただけでなく、他の作品にも一通り手を出してみるべきなのかな、みたいなことを思わされました。

 それくらい気に入りましたね。

 いやまあ、現実的には、本作の続刊を追いかけるくらいが精一杯でしょうが……。

 

サラマンダ『ゴブリンはもう十分に強い』1巻

オススメ度:★★★★★★★★☆☆

 

 偶然遭遇した瀕死の勇者達にトドメを刺し続けていたら、いつの間にかレベル99になってしまった最強のゴブリン、ホンワサビとその周辺を描くファンタジー。

 勇者パーティーは何度死んでも復活する等、RPG的世界観を積極的に取り入れた上で、そこに独自の味つけをしていくタイプの作品です。

 基本的にはコメディなのですが、時折ドキッとするようなシリアスな瞬間があるのが特徴でしょうか。

 コメディ部分が良質な土台を築いているためか、そういった演出が浮くことなくきちんと機能していて、「ずっと楽しい」作品になっています。

 

 ホンワサビ単体も魅力的なのですが、やはり他のキャラクターとの絡みこそが肝であると言えるでしょう。

 特に異世界から召喚された勇者であるアキとの関係は良いですね。

 敵対関係にありながらも、友人として接する時間をあえて設けて、魔王城に案内したりする。

 そのときに魔王城の全員が、魔王も含めてそれに付き合う展開がまた、良い意味でとぼけていて好きでした。

 

 他にも魔族のミミットに熱烈な百合アプローチを受けるくだり等、どのキャラクターの絡みも飽きさせません。

 ネタがいつまで続くかが不安要素ですが、とりあえず第1巻の時点では十分すぎるくらいに満遍なく堪能することができました。

 

寺井赤音『あまちんは自称♂』1巻

オススメ度:★★★★★★★☆☆☆

 

 見た目は可愛い女の子だけれども、男を自称している甘澤こころ(通称あまちん)と、その幼馴染である上下タツミを中心としたコメディ。

 最大のポイントは、こころが本当に男子なのか、それともそう自称しているだけで本当は見た目通りに女子なのか、あえてはっきりさせないまま物語が進むところです。

 そのため、シンプルに「男の娘」として読み取ればいいのか、あるいは後に一捻りさせるつもりなのか、疑心暗鬼のまま読者はとりあえず目の前のコメディ展開を楽しんでいくことになる。

 それが合わない人もいるかもしれないのですが、私はそういう肝心なところを曖昧にする作風って割と好きなので、作者が狙ったのであろう通りに堪能できました。

 

 実のところ、男子だろうが女子だろうが、こころは可愛いんですよ。

 一途な面と小悪魔的な面が共存しているのですが、嫌な感じがまったくしない。人として良い造形になっているんですよね。

 タツミが「一緒にい過ぎてこころの性別がわからなくなっている」という辺り、冷静に考えれば「そんな馬鹿な」なのですが、でも「男子とか女子とかどうでもいい魅力がこころにはある」という点は納得できるものがあって、それで押し切られてしまいます。

 

 絵柄もとても綺麗で、本作のコンセプトを十分に具現化しています。

 こころの可愛らしさだけではなく、周囲のキャラクターの面白味もしっかりかたちにすることができており、とても具合が良い。

 よくできた作品だと思いました。

 

小林俊彦『セーラー服、ときどきエプロン』1巻

セーラー服、ときどきエプロン(1) (講談社コミックス)

セーラー服、ときどきエプロン(1) (講談社コミックス)

 

 

オススメ度:★★★★★☆☆☆☆☆

 

 女子高生・青野ほのかが、祖父の建てたアパートの管理人となり、3人の女性住人に(いろんな意味で)可愛がられながら日々を過ごす、というお話。

 少なくとも第1巻の時点では、物語のほとんどは、住人達にからかわれるほのかのリアクションの可愛らしさを描くことに費やされていました。

 もちろんそのからかいは、住人達がほのかを気に入っているがゆえのものなのですが、あまりに連続するので、途中からちょっと鬱陶しく感じるところが無きにしもあらず。

 リアリティがある、とも言えるところですが……正直、あまり面白いものでもありませんでした。

 

 完全な女所帯ということで、何かとすぐ脱衣するシーンが出てくるのですが、あまり色気を感じないのは残念な点でした。

 明らかにサービスシーンとして存在しているものが、あまりサービスになっていないというのは、致命的ですよね。

 絵柄については、そう簡単に変えようもないところでしょうが、何らかの工夫を頑張って欲しかったというのが率直な感想です。

 

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