大量に溜めてしまった漫画の積ん読を、地道に崩していく企画の第9回目です。
相変わらず、読んでは増え、読んでは増えを繰り返しており、残りの冊数が減っていく様子は見られません。
まあ、永遠にこの企画をやっていられるという意味ではオイシイですし、特にデメリットがあるわけでもないのですが、整理整頓欲みたいなものが満たされそうにないのだけ、ちょっと落ち着かないかもですね。
今回は4冊、紹介させていただきます。
吉田丸悠『大上さん、だだ漏れです。』1巻
オススメ度:★★★★★★★★☆☆
性的なことに興味津々なぼっち女子高生・大上芽衣子が、触れた相手に本心を喋らせてしまう特異体質を持った男子・柳沼慎一郎と関わったことから始まるお話。
タイトルは大上さんの名前を冠しているのですが、本作は「柳沼くんとその周辺」について描いている風でもありますね。
柳沼くんの特異体質が、様々なキャラクターに強制的な急展開を呼び込んでいくので、エピソード単位では誰もが主役格になれるのです。
作中でも言われているように、みんな心の中で変なことを考えていて当たり前なわけですから。
大上さんの人物像が、個人的にお気に入りです。
良い意味でシンプルなんですよね。悩み方や気遣いの在りようが、わかりやすくて適度にまっすぐで、好感を持てる。
女子高生の生態として、それがどれくらいリアルなものなのかはわからないのですが、性的な好奇心と、時折長々と綴られていく妄想が、良い感じの肉付けになっています。
もちろん可愛らしく描かれてはいるのですが、かといって読みながら「可愛いなあ」とただ愛でる対象かというと、それだけではなく……。
なんか、他意なく普通に友達になりたいなと思わせるキャラクターでした。
ころころ変わる表情も魅力的です。
他のメインキャラクター達も感じの良い造形になっており、おかげでとても気持ちよく読めました。
まあここに色恋沙汰が入ってくると、多かれ少なかれ「こじれ」が描かれることになるのかもしれませんが……次巻以降、その辺どうなるんだろうなあ。
目黒三吉『どうなのっ河本さん!』1巻
オススメ度:★★★★★★☆☆☆☆
冴えない中華料理店を営む河本さん、従業員の田中くん、子供料理評論家の寧さんを中心として描かれる、割と何でもアリの料理コメディ。
河本さんを始め、空気も文脈も無視して暴走するキャラクターが何人かいて、それに対する周囲のリアクションと合わせて着実に笑いを取っていく構造です。
絵柄にも、その笑いのスタイルにも好感を持ったのですが、河本さんのクセの強さは賛否の分かれるところかもしれませんね。
私は第1巻だけでは判断しかねる、という感じでした。田中くんと幼馴染の遠藤さんが、河本さんを称して「ちょっと苦手」と言うシーンがあるのですが、割と同意できるところがあったり……。
キャラクター的には、有能常識人な寧さんがいちばん気に入りました。
途中までずっと女の子だと思っていたら、そうではなくてびっくり。第2話の銭湯回に出てこなかったのはそういうわけだったのか、と後になって察した次第。
★の数を6個にするか7個にするか迷ったのですが、キャラクター単体でちょっと苦手を感じた場面が複数あったので、それを考慮して6個とさせていただきました。
深見真&吉岡榊『マーメイド・ラヴァーズ』1巻
オススメ度:★★★★★★☆☆☆☆
世界有数の民間警備会社に所属する少女達は、特殊な力を持った人間。そんな彼女達に、ある任務が与えられて――みたいなお話。
読んでみて最初に受けた印象は、「女性キャラの線が艶めかしいなあ」というものでした。
ボリューム感あるべきところはたっぷりあり、色っぽいところは色っぽく、可愛らしいところは可愛らしい。
しかしストーリーはなかなかハードなアクションもので、お色気はあくまで副次的に存在しているという感じです。
そのストーリーが正直なところ私好みではなかったため、残念ながらあまりハマれませんでした。
ディテールもしっかりしているし、テンポも悪くないのですが、やろうとしていることが根本的に合わないため、うーん、となってしまう。
また、人によっては「アクションもお色気も中途半端で物足りない」という感想を持つかもしれません。
パッと見のイメージよりも、刺激の少ない作品づくりをしているんですよね。
もちろん、フィクションというのは過激なら過激なほど良いわけではないのですが、本作が採るべきだったのは、恐らくもうちょっと刺激にこだわる方向性だったのではないでしょうか。
どうもこう、ポテンシャルが埋もれてしまっているように感じられました。
高木秀栄『ねりこちゃん造形中!』1巻
オススメ度:★★★★★☆☆☆☆☆
内向的な少年・古都吹創介の唯一の「友達」である粘土細工の人形が、姉の魔術によって半人前の悪魔を宿してしまい――というお話。
最初はラブコメなのかなと想像していたのですが、そうではなくて、何らかの欠落を抱えた者達がどう成長していくのか、みたいな方向に進む内容でした。
ただ、個人的にはそれが肌に合わない感じでしたね。
キャラクター達を動かしている価値観に馴染めないところがあって、本来なら気持ちを乗せて読むべきと思われるところで、抵抗感を抱いたり、ピンと来なかったりすることが多かったのです。
クセの強いキャラクターを出して、魅せようと頑張っているのはわかるのですが、私にはどうしてもハマらなかった。
こればかりはどうしようもないところなのだろうなと思います。
この第1巻は2014年に刊行されたものみたいなのですが、Amazonで調べた限り、続きが見当たらないんですよね。
打ち切られたか何か、したのでしょうか?
「ここからどうなる?」的な終わり方をしているので、これっきりなのだとしたらちょっと、作品が可哀相ですね……。
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