地道に積ん読の山を小さくしていく企画の、第8弾です。
最近このシリーズの更新ペースが速くなっていますね。これは単純に、作品を消化するペースを「原則、1日1冊」という風に定着させたからです。
今回は3冊紹介させていただくのですが、この場合、単純に前回から3日でこの記事が出来上がったということになるわけです。
まあ、なかなか速いと言えるでしょう。
でも、ペースにこだわりを持つことはしないと決めているので、いずれ気が向けば、今度は凄くゆっくりになるかもしれません。
その辺りは、深く考えずにお付き合いいただけると嬉しいです。
あぬ『なんで生きてるかわからない人 和泉澄 25歳』1巻
オススメ度:★★★★★★★☆☆☆
薄暗い不安の中を生きるフリーター・和泉澄の日常を描く作品。
ここでテーマになっているのは、経済的な不安ではなく、精神的な不安です。
確かにフリーターという経済的に心細い立場にある澄ですが、そのことで生活が困窮しているかというと、そういうわけではない。
そして、将来の収入が心配だとか、そういう話でもない。
もっと漠然としたもの、「輝きを失った今と、それが再び輝く未来がまるで見出せないこと」に押し潰されそうな毎日が、ここでは描かれています。
不安は自信の喪失へと繋がり、自信の喪失は周囲との協調性を奪っていく。
いわゆる悪循環というやつがリアルに描写されており、私のような人間にはなかなか身につまされるものがありました。
一連の澄の心理を理解できないか、あるいは「甘え」のような言葉で簡単に処理してしまえる人は、まず第一に己の「幸運」に感謝すべきでしょう。
ここで描かれている苦悩は、自力のみで回避できるものではないからです。
しかし一方で、読んでいて次のように強く思いもしました。
「それでも、毎日何か積み重ねる以外に、脱出する方法はないよな……本格的に病んでしまう前に」
澄がまずやるべきなのは、ちょっとしたことを毎日継続することでしょうね。
本当につまらない、くだらないもので構わないけれども、確実に階段を上がっている感覚を持つことのできる何か。
それで多少なり「上昇グセ」をつけて、ノッてきたところで本格的に将来の自分を支えてくれるものの獲得に動く。
そうあるべきだと、読んでいて切に思いました。
思いましたが……雰囲気的に、次巻以降も生活はたぶん好転しそうになく。
鬱々とした、生きたまま死んでいるような日々が、淡々と描かれていくのでしょう。
そういうところに魅力を感じ取れるなら、本作はとても興味深く読むことができると思います。
アサダニッキ『星上くんはどうかしている』1巻
オススメ度:★★★★★★★☆☆☆
周囲の空気を読みながら無難な学校生活を送っていた少女・三毛野いさりが、まったく性格の違う双子の兄弟・星上望と求に関わったことから、様々な波乱に巻き込まれていくお話。
表紙の絵柄とタイトルから、単純にラブコメをイメージしていたのですが、いざ読んでみたら、ラブ要素はほとんど無し、コメ要素もそんなには無し。
真面目ながらも真面目すぎない、人間関係の物語でした。
いさりと星上兄弟が中心ではあるのですが、巻き起こる「問題」の中核を担っているのは、クラスの女子カースト上位にいる吾妻というキャラクターです。
第1巻ではまだその内面は詳しく描かれてはおらず、典型的な「嫌な女」としての役割を果たしているのみですが、彼女の存在感は大きい。
フィクションではよく見かける、女子コミュニティの在りようなのですが、こういうのってどこまでリアルなんでしょうね?
私の目には、実にくだらないことにエネルギーを使っている○○○○の群れにしか見えないのですが、これがもし普通のことなら、世の中がジメジメしている理由もよくわかるというか何というか……です。
消化しやすい内容で、するするっと最後まで読めました。
私が好んで近づくタイプの作品ではないのですが、それでもあまり抵抗なく読めてしまったことからして、よく出来ているのだと思います。
海月れおな『ポンコツンデレな幼馴染』1巻
オススメ度:★★★★★★☆☆☆☆
高校入学を期に、幼少期を過ごした家で独り暮らしをすることになった少年・神田翔太が、久々に再会した隣家の幼馴染・近藤早菜恵のポンコツぶりに翻弄される、というコメディ。
ここで言う「ポンコツ」は誇張表現抜きの本物のポンコツで、例えば早菜恵が初登場するシーンでは、おねしょで濡らした布団が彼女の隣に干してあったりします。
中身は子供の頃から変わっていない、という設定で、これは可愛らしさを出す手段というよりは、本格的にズレを使って笑わせに来ているのでしょう。
それをあまりやり過ぎると、ただ迷惑で鬱陶しいヒロインになってしまうところですが、本作ではその匙加減はきちんと調整されているように感じました。
多少「お年頃らしさ」も描いているのですが、基本的には、早菜恵に付き合わなければならない翔太の奮闘で攻めており、ラブコメかというと、そうではなかったように思います。
しかし第1巻ラストでは早菜恵が翔太への好意をストレートに肯定しており、次巻以降にはそういう要素も混じってくるのかもしれません。
そのときにポンコツぶりとの両立がどうなるのか、というのは、気になるところではありました。
ただ、コメディ自体にもっとパンチ力が欲しかったな、という物足りなさもあり、結果としてこのような★の数になった次第です。
印象に残ったのは、4話の早菜恵が窓越しに翔太の部屋に侵入し、玄関から帰っていくシーン。
靴下も履いていない裸足のまま玄関に降りて帰ろうとする早菜恵と、それに突っ込む翔太のやり取りが、裸足フェチ的にはちょっぴり美味しかったです。
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