そびえ立つ積ん読を少しずつ崩して感想を書いていく企画、第6弾です。
これを始めてから、今までほとんど手を付けることのできなかった作品群に対し、かなりのペースで向き合うことができているのですが、まだまだ先は長いです。
……というか、この企画をやりながらも無料セールのKindle漫画をもりもり買っているので、未読の数は減っていないか、あるいは逆に増えたかもしれないという状況。
まあ、ネタが尽きないという意味では結構なことなのですが、実体のないデジタルデータの凄味が表れていますね。
紙の本だったら、たとえ無料でも絶対こんな真似する気になれませんでした。
性格的に、一度手に入れた本はそう簡単には捨てられないので……。
葉乃はるか『シスコン兄とブラコン妹が正直になったら』1巻
オススメ度:★★★★★★★☆☆☆
仲の良い兄妹が、ひょんなことから家の外では彼氏彼女のフリをすることになったが、お互いに(特に妹に)相手を異性として想う気持ちが膨らんでいき……というお話。
あとがきで作者さんも触れているのですが、二次元だと兄と妹の禁断の恋、みたいなのはべつだん珍しくもないコンテンツではあります。
それを、そこそこ一般的な読者層にも刺さるよう、さじ加減を意識しながら描いているのが本作らしいです。
とはいえ、突っ切っているところは結構突っ切っています。
まず、二人のあいだには「兄妹なのにこんなことを」みたいな葛藤があまり見られない。
割とすんなり、「これはあくまでフリなんだから」ということでカップル的振る舞いを押し進めていき、それにつれて今までになかった感情も高まってくる。
そして、あっさりとキスに至ってしまうんですよね。
このスムーズな流れ、私は読んでシンプルにほっこりしたのですが、「一般的」な読者層の目にはどのように映ったのでしょうか。
気になるところではあります。
絵柄はスッキリとしていて可愛らしい。しかしそれなりに頭身があるので、イチャイチャしているシーンはなかなか実体感があります。
このまま次巻以降で肉体関係に及ぶようなことがあったら、かなり熱い描写になるのではないかと思うのですが……果たしてそういう展開になるのか否か。
多少のドロドロはあってもおかしくないムードなので、可能性の広さに対するドキドキ感はありますね。
オザキミカ『キミと話がしたいのだ。』1巻
オススメ度:★★★★★★☆☆☆☆
独り暮らしの会社員「しんのすけ」と、彼の飼い猫である「くま」を中心とした、ほのぼの日常漫画。
本作のいちばんの特徴は、しんのすけが猫と会話をすることができることと、その扱い方です。
くまの友人猫である「さんま」に言わせれば「たまにそういう人間がいる」そうで、本作ではしんのすけと猫の会話が、極めて自然に、当たり前のことのように描かれています。
でも、それをことさら特殊能力として強調するわけではないんですよね。
シンプルに、ただの現実の描写として、しんのすけは猫と話し、他の人間はそれをしない。その描き方がとても私好みでした。
ほのぼのとした空気感は癒やしを運んでくれるのですが、同時にどこか物悲しいニュアンスが漂っているのも、印象深いところです。
そのため、「次の瞬間に悲劇的なことが起きてもおかしくないぞ」という、ある種の緊張感を、心のどこかに持ちながら癒やしを楽しむことになる。
これが良いことなのかどうかは、意見の分かれるところかもしれません。
私は肯定的に捉えましたが、「安心して読めない」と感じる人もいる気がしました。
……ここまで褒めておいて★6つ止まりなのはなぜかと言うと、あまりにサクサク読めてしまうせいで、ボリューム感に欠けたからです。
「あれ、たったこれだけ?」みたいな。ページ数はちゃんとあるのですが。
これを「欠点」をみなすかは微妙なところなのですが、やはりお腹いっぱいになれるかどうかも大事だろうということで、評価のうちに入れさせていただきました。
福満しげゆき『妻に恋する66の方法』1巻
オススメ度:★★★★★★☆☆☆☆
作者の奥さんの日頃の生態を描く……ことをメインとし、そこに作者自身の生態も混じえてまとめられたエッセイ漫画。
新婚とかではなく、三十代後半に入った夫婦の生活なので、その内容は実にこなれており、良い意味でものすごく「確立された生活臭」が漂ってきます。
それでいながら、タイトルの通り「妻は良い女である」という思想で全体が統一されているので、何が描かれていても前提としての朗らかさを見失わずに読むことができました。
個人的に、読んでいていちばん印象に残ったのは、妻の描写よりも夫、つまり作者のネガティブ心理描写でしたね。
言葉を選ばずにいうなら、「ちょっとこの人、病んでいるのでは……」と思えるくだりが、ちょいちょいあったんですよ。
私はこの方の作品を読むのは初めてなので、それを「作風」と「本質」に上手く切り分けることができなくて、結構意識を取られた次第。
独特の語り口が魅力ですが、絵が少し見づらいかなと思いました。
さらに言うと、吹き出しの外の手書きの台詞(という表現でいいのでしょうか)がパッと視認できない。
読み飛ばしたい気持ちも出てきたのですが、書かれていることが割と作品のテイストを決める大事なものだったりするので、それもできず……。
少々手こずったので、その意味で★を1つ減らさせていただきました。
あと、これは本当に余談ですが――。
本作を読む限り、作者さんは主観的にいろいろしんどそうなのですが、非モテの極北から読ませていただいた身として、「でも好きな人に好かれて結婚までできたんでしょ?」で全否定したくなったのはここだけの話です。
フクシマハルカ『1年5組いきものがかり』1巻
オススメ度:★★★★★☆☆☆☆☆
何でも飼ってしまう生物部、通称「いきものがかり」に所属する女子高生・山田えるが、吸血鬼やらオオカミ男やら、様々な種族に気に入られ、体を狙われるラブコメ(たぶんラブコメ)。
本作に関しては、出来がどうこう以前の問題として、純粋に私のキャパの外の作品でした。
無料セールというだけで見境なく買いまくった私が悪いのですが、「なかよし」増刊に連載している作品となると、さすがに私に合うテイストではなく……。
というわけで、オススメ度は★5つとなっておりますが、これはそのほとんどが「どうしようもない不一致の問題」なのだと捉えていただければと思います。
一応、内容の感想も書いておきますと、テンプレート的なキャラクター造形は悪くなかったものの、えるをモノにしようと狙う異種族の男達のデザインが、ちょっと似すぎていて見分けがつきにくいように思いました。
また、これもテンプレートの範疇であって本作自体の難点ではないのでしょうが、吸血鬼の少年に対する、えるの心の揺れ具合が、どうしてそうなるのかよくわかりませんでしたね。
「お前が読むために描かれたものではないからだよ」と言われたら、それまでなのですが。
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