天国的底辺

二次元、創作、裸足、その他諸々についての思索で構成されたブログ

漫画の積ん読を崩して感想を書いてみた:その5

 溜めに溜めてしまった積ん読を、ブログ記事を書く名目で崩していく試みの、第5弾です。

 今回はこれまでより紹介している作品の数が少なく、3作となっております。

 もう1作くらい加えておこうかとも思ったのですが、最初に決めた「2,000文字ぶん溜まったら記事にする」を重視するかたちで、この数字になりました。

 要するに、1作あたりの感想が長めになったということですね。

 

「同じ情報量を、できるだけ短い文章で」が最近の目標なのですが、なかなか上手にできなくて悩んでおります。

 クドく感じたら申し訳ありません。精進いたします。

 

 

 

保谷伸『マヤさんの夜ふかし』1巻

オススメ度:★★★★★★★★☆☆

 

 バイトをしながら独り暮らしを続ける「魔女」マヤと、彼女が入院したときに病室が一緒だったことから友人になった豆山の、ぐだぐだっとした深夜のダベりを描く作品。

 本作の最大の特徴は、メインキャラであるマヤと豆山が、現在はそれぞれ東京と東北に住んでおり、会話はすべてネット通話(作中では「スカイペ」)だというところです。

 2人の姿は、まるで同じ空間にいるかのようなノリで連続的に描かれるので、例えばネットに疎い高齢者の方がサッと読んだだけでは、ルームシェアしている間柄だと誤読するかもしれません。

 遠く離れた2人をそのように描く、本作のコンセプトはとても面白いものに思えました。

 

 その効能としては、「延々と会話をしているにもかかわらず、同時に単独行為の在りようを描ける」ことが挙げられます。

 2人とも会話をしながら常に自分のことを何かやっており、それは自室での一人きりの作業。この「コミュニケーションと孤独の同時進行」は、一昔前なら描く手段を探すのが難しかったテイストですよね。

 そして、マヤは「魔女」であり、作中のところどころで小さな魔法を使ってみせるのですが、それを豆山が目撃することはなく、ゆえに彼女は未だに魔女云々をマヤの「脳内設定」だと思っています。

 この構図も、ネット通話をしている離れた2人、という設定ならではのものだと言えるでしょう。

 

 マヤも豆山も、「いわゆる可愛さ」がほとんど描かれないのですが、本作ではそれが正解だと思いました。

 豆山は実家暮らしですが、マヤは典型的な「だらけきった独り暮らし」を送っている最中。

 そのディテールがリアルである点に本作の面白味があるところ、キャラクターを可愛く描こうとすると、徹底が足りなくなってしまうんですよね。

 そこの意思決定を、私は支持したいです。

 

 現在第3巻まで刊行されているようですが、ネタは枯れていないでしょうか。

 そこさえ何とかなっているなら、いずれ15分アニメとかになっちゃいそうな雰囲気も感じます。楽しい作品です。

 世の中にはいろいろな漫画があるものだなあと感心しました。

 

檜山大輔『ピーター・グリルと賢者の時間』1巻

オススメ度:★★★★★★★★☆☆

 

 10年に一度開かれる「絢爛武闘祭」で優勝し、地上最強の座を得た戦士ピーター・グリルが、様々な種族にその子種を狙われるというお話。

 8割コメディで、2割シリアスという感じのテイストですね。

 

 物語の肝は、ピーター・グリルに交際相手がいて、本人は彼女に操を立てる気まんまんでいるにもかかわらず、あの手この手で他の女性に迫られまくるという構図です。

 なにぶん事が事なので、それが単純に苦難なのか、それとも何だかんだで美味しい思いをしていると捉えるべきなのか、一概には言えない。

 そのことが、独特の面白おかしさを生み出しています。

 

 同じギルドに所属しているオーガの姉妹に狙われ、寝てしまい、エルフの国からやって来た大使に狙われ、寝てしまい……。

 そのたびに、交際相手である先輩や、その父親(2人の結婚を認めていない)にバレそうになり、とっさの機転で切り抜けるピーターくん。そのヒリつく展開も魅力の一つ。

 第1巻のラストでは、無駄に話がこじれて国家間の揉め事に発展しそうな気配を漂わせており、物語がさらに膨らんでいくことへの期待を十分に抱かせてくれました。

 

 普通なら「最強である」ということは「敵対する何者をも退ける」物語に繋がっていくところですが、本作の場合は、最強になったゆえに訪れる「敵というわけではない相手」との、戦いならぬ戦いがメイン。

 そして、そこには諸々の事情から、勝ち目というものがない。

 ピーター・グリルの明日はどっちだ――というわけで、彼の若干羨ましくもある艱難辛苦の行く末が、おおいに気になるところです。

 

 余談ですが、本作はこのようなテーマの物語ではあるものの、えっちい描写は控え目になっております。

 行為そのものはもちろん、胸の先っぽも描かないスタイルです。

 なので、その辺りの過激さに期待して読もうとされる方は、注意が必要かと思います。

 

あづま笙子『吸血鬼にっき』1巻

オススメ度:★★★★★☆☆☆☆☆

 

 吸血鬼専門の輸入雑貨店「ジル」で働く人間の女性・桜井はなの、異種族に囲まれた日常を描く4コマ漫画。

 終始ほのぼのとしたノリで、血液ネタや長生きネタなどを展開する作風ですが……ちょっと退屈だったというのが正直な感想ですね。

 

 この種の作品には、過激さや意外性は特に必要ないとは思うのですが、代わりに何気ない会話を通して台詞の妙味や魅力的な空気感を楽しめないと、まったく印象に残らないものになってしまいます。

 その意味で本作は、残念ながらすべきことを上手くできていないように感じたんです。

 どのキャラクターにも嫌味がないですし、絵も普通に見やすい。なのでとっつき易くはあるのですが、それだけだったんですよね……。

 

 あと1人くらいメインキャラクターがいれば、また違っていたかもしれません。

 いや、第2巻で登場するのかもしれませんが、それでは遅いんです。第1巻のうちにそういうテコ入れが欲しかったです。

 

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