天国的底辺

二次元、創作、裸足、その他諸々についての思索で構成されたブログ

漫画の積ん読を崩して感想を書いてみた:その3

 数百冊の積ん読を少しずつ崩していく企画の第3弾です。

 これを始めたおかげで、増大していくばかりの積ん読マウンテンに、ほんの僅かですが手を入れることができました。

 アウトプットを重視すると、そのために必要なものを自然と求めるようになり、インプットも充実してくる――という一例でしょうか。大袈裟かな。

 

 まあ、前回の記事からこの記事までのあいだに、また何冊も無料セールのKindle漫画を買ってしまったので、未読の総数は増えてしまっているのですが……。

 

 

 

春原ロビンソン&小菊路よう『佐伯さんは眠ってる』1巻

オススメ度:★★★★★★★★☆☆

 

 午後の授業でこっそり惰眠をむさぼるのが大好きなクラス委員長・佐伯さんと、隣の席で唯一その秘密を知っている少年・時宮くんの、ほんわかした日常コメディ。

 佐伯さんの表現がとても可憐で、最初はお嬢様系女子高生という受け取り方で読んでいたのですが、後々判明したところによれば中学生とのこと。

 その認識し直して読んでみると、佐伯さんと時宮くんのやり取りが俄然甘酸っぱさを増し、何とも言えない気持ちになりました。

 この二人、可愛い!

 

 お話の多くは、「佐伯さんが今回この状況で果たしてどう眠ってみせるのか」というのを、ちょっとした謎掛けとして提示し、その答を時宮くんが驚き役も兼ねて解説していく、という段取りになっています。

 そのアイディアの数々が面白く、それだけの工夫を凝らしてまで眠ろうとする佐伯さんの執念と合わせて、良いコメディになっている。

 その一方で、時宮くんの中に段々と佐伯さんへの特別な想いが育っていくラブコメの側面もあり、その想いがいよいよ顕在化したところで次巻に続く――という、何とも引きの強い締め方を披露してくれました。

 

 本作は漫画家である春原ロビンソンさんが原作に回っているのですが、読んでいるとそのことにとても納得がいきます。

 このお話のアイディアは、この色気のある絵柄で描かれるからこそ、化学反応的に活きてくる。それが凄く伝わってくるんですよね。

 眠っている佐伯さん、恥ずかしがる佐伯さんがいちいち健康的に色っぽいことで、時宮くんから見た佐伯さんの愛おしさが強調される。

 それが恐らく、次巻以降の展開においていっそう効果的に仕事をするのでしょう。

 

 第1巻は無料セールだったので買ってみたのですが、これは当たり。

 次巻以降も気になるところで、近いうちに買ってしまうかもしれません。

 

こげどんぼ*『ヨメさんは萌え漫画家』1巻

オススメ度:★★★★★★★☆☆☆

 

 デ・ジ・キャラットのキャラクターデザイン等で有名な漫画家・イラストレーター、こげどんぼ*さんが、現役自衛官と結婚されたときのエピソードを語りおろしたエッセイ漫画。

 この第1巻では、結婚式が主な話題。その準備段階のあれやこれやから、当日の段取りまでが、勢いよく描かれておりました。

 これから「新婚さん」になるという時期から想像しがちな、熱の入った関係性に分け入るような描写はあまりなく、すでにそこそこ連れ添った夫婦のような空気感。

 それがお二人の性格によるものなのか、そこら辺を描くことを計算でオミットしたのかは定かではありませんが、結果として、少なくとも漫画の上にはがっしりした安定感みたいなものが出ていたように思います。

 

 結婚式以外のエピソードとしては、「自分が漫画家であることをいつ相手に明かすか」というのが一つの難題として描かれていたのが印象的でした。

 もちろんご自身のお仕事には誇りをもって取り組んでおられるのでしょうが、それはそれとして物理的・経済的に「偏った」職業であり、結婚するとなると相手にそれを飲み込んでもらわなくてはならない。

 なるほどなあというところでした。そしてお相手の方が「不安になるほどあっさり」それを受け入れるのが面白かったです。

 

 他にも、作者さんのミリオタとしての魂の叫びが、お相手の礼服などに炸裂する箇所が幾つもあったりしますが、結婚するカップルの「甘ったるい感じ」はとにかくない。

 そういうテイストを多少なり期待する方にとってみれば、期待外れになると思いますし、人によっては「人生の大事な場面までをもオタク的にしか消費できない者の姿」を快く思わないかもしれません。

 そういう意味で、賛否は分かれるのかもしれないですね。

 私は「オタ要素と慌ただしさ以外にも何か欲しかったかな……」という印象が漠然とある以外は、楽しく読むことができました。

 

十凪高志『妖怪ごはん ~神饌の料理人~』1巻

オススメ度:★★★★★★☆☆☆☆

 

 記憶喪失で絶命しかかっていた自分を救った神・大口真神に包丁人として仕える主人公・狼谷猟平が、架空の生き物で料理を作ることを中心に、いろいろ活躍する作品。

 河童や朱雀といった存在を調理していく過程の描写が細かく、少なくとも素人が受け取る感覚としては、実在の料理レシピ本とリアリティがあまり変わらないのが楽しいです。

 最初のうち、「人間の身でこういう存在を狩って料理するのって、神の指示とはいえ罰が当たらないのだろうか」的な感覚で読んでいましたが、すぐ慣れました。

 

 物語を大きく動かしうる存在として、一応「月読」というキャラクターがちょいちょい描かれるのですが、第1巻の時点では「主人公達のことを察知し監視している」レベルで、本筋にはほとんど関与なし。

 恐らく次巻では、そっちの方向にもそれなりにお話が動くのだと想像されます。

 そうなったときに、「架空生物の料理漫画」としての面白さが薄れてしまうのではないか、という心配も無きにしもあらずですが、現時点で第4巻まで刊行されていることから考えて、きちんと支持を集めるだけのものにはなっているのでしょうね。

 

 個人的には、大口真神が基本的に「食っちゃ寝」な神様で、せっかく美少女の姿なのにあまり出番が多くないところに、多少の物足りなさを感じたかもしれません。

 それも含めて、本作は女の子キャラがいても萌えに類する要素で客寄せしないスタイルで描かれており、そこをどう評価するかは人によるかと思います。

 私は……もうちょっと、そういうのも欲しかったかなあ。

 

瀬田ヒナコ『ままごと少女と人造人間』1巻

オススメ度:★★★★★★☆☆☆☆

 

 人見知りの女子高生・花見しずく(136cm)と、見た目はゴツいけれども中身は「犬並」に幼く純粋な人造人間・黒の13号(200cm)の同居生活を描く、ほのぼの4コマ漫画。

 両者の関係が見た目とまったく逆であることが、本作の肝となっています。

 小柄だし、できないことだらけのしずくが、巨漢の13号に対しては「保護者」として振る舞わなければならず、いろいろなドタバタを経験していく――それらが極めて可愛らしく描かれていきます。

 

 基本のテイストは「変わらぬ日常」物ですが、ほんのり成長物語にもなっているのがポイント。

 13号は、ほとんど何もわからない状態から、ひらがなを覚えたり、生活の様々な決まりごとを理解していったりしますし、しずくのほうも、彼の面倒を見ることで僅かずつですが前に進んでいく。

 二人とも未熟者であるのが、大きな特徴かなと思います。大抵はどちらかが「まっとうなレベル」にあるものですが、本作では両者とも足りないものだらけですので。

 

 ドタバタが多いものの、それらも含めたすべての描写が徹底して可愛らしさ重視。

 そのふわふわ感から満足を得られるかどうかが、本作を楽しめるか、あるいは退屈だと思うかの分かれ目でしょう。

 私としては……やや物足りなかったというところでしょうか。

 まったくノレないわけではなかったのですが、読んでいて「もうちょっと刺激的でもいいのになあ」と思ってしまったので、相性ぴったりとはいかなかった感じです。

 

 また、しずくのリアクションに単調なところがあり、第1巻にして「またこれか」みたいな感想がそこかしこで出てきてしまったのも、マイナスポイントだったように思います。

 

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