最初に告白しておきますと、私にもノウハウコレクターの気質があります。
これというものを決め、すべてを賭けて師事するというのはどちらかというと苦手で、あっちこっちのノウハウを調べ、並べて、考察したい欲のほうが強い。
なので今回の記事はかなり自戒の込められたものになっています。同じタイプの方にはぜひ読んでいただきたいですね。少しでもしくじりを減らすために。
混ぜるな危険
さて本題ですが、まんま記事タイトルの通りです。
いわゆるノウハウコレクターは、ノウハウを集めることにばかり執着して、一向に行動に移さないことが欠点としてよく指摘されるわけですが、実はそれよりもっと危険な罠が存在します。
結論を先に書いてしまいましょう。
それは、経験をほとんど積んでいないうちから、複数のノウハウを独自にいいとこ取りして掛け合わせ、「最高のノウハウ」を作ろうとしてしまうことです。
冒頭に書いたように私もノウハウコレクター属性を持っているので、気持ちはわかるのです。
いろいろなノウハウを並べて、自分なりに比較・検証しているうちに、段々そういうことをやってみたくなる。
そういうところで、己の「実力」をかたちにして満たされたくなる。ともすればそれを実戦投入してみたくなる。
でもそれは、まず間違いなく上手くいきません。
経験不足だから勝手がわかっていないというのもさることながら、そもそもノウハウを掛け合わせるという発想自体、ノウハウがどのように構築されているかわかっていない証であることがほとんどなのです。
「何をしないか」もノウハウのうち
ノウハウと聞いて、多くの人の頭に真っ先に思い浮かぶのは「何をするか」でしょう。
それはべつに間違っているわけではなく、すべきことを明確にするのがノウハウの中核を成す要素であることは確かです。
しかしそれと同じくらい、ノウハウは「何をしないか」の選択も重要なのです。
優れたノウハウほど、全体の構造が洗練されています。
隅々まで計算し尽くされていて、ある部分が他の部分を邪魔しないように設計されている。
そのようなノウハウにおいて、「やれと言われなかった」ことには往々にして重要な意味があります。
学ぶ前の人間には見えていないことが多いですが、それをやってしまうと、巡り巡って「やるべきこと」を妨害する結果を生み出してしまい得る。
だからこそ、そのノウハウの構築者は、それをやれと言わなかったわけです。
洗練されたノウハウほど、そのような計算が緻密であり、一ヶ所だけを適当に変えてしまうことはできません。
そのたった一ヶ所の改変ですべてが崩れ、一切の効果がなくなってしまうこともあります。
しかし、経験を積んでいない人間がやろうとする「いいとこ取り」は、まさにその一線を越えてしまう。
ノウハウAにおいて「やるべきではないことx」が、ノウハウBでは「やるべきこと」であったりするわけですが、そんなときにノウハウAにノウハウBを掛け合わせ、「ノウハウAをベースにxもやる」という独自ノウハウを作ってしまうのです。
それがまともな結果を生み出すはずがありません。
不完全を受け入れる
上で「洗練されたノウハウ」と書きましたが、世の中に「完全なるノウハウ」というものは存在しません。
どんなノウハウにも、それではカバーしきれない部分があり、ノウハウ同士を比較することで、それはいっそう問題あるもののように見えてきます。
だからそういう比較をしょっちゅうやっているノウハウコレクターが、いろいろ掛け合わせてみたくなる気持ちはよくわかります。
しかしそれは多くの場合、失敗への第一歩になるのです。
ここで必要なのは、「完全なるノウハウという幻想」を捨てることでしょう。
そして、ある意味で楽観的になることです。世の中は完全なる方法で攻めずとも、十分に成功できる余地があるところなのだと。
そういう気持ちを持った上で、一方では冷静に質の高いノウハウを探し、それを純粋に実践する。
こういうマインドセットがポイントになるのだと思います。
改良は経験を積んでから
もちろん、いつかは学んだノウハウを自分なりに改良する日が来ると思います。
武芸などの分野に「守破離」という概念があります。
「守」とは、まず最初の段階として、師の教えを忠実に守り、実践すること。
「破」とは、その次の段階として、教えられた内容にアレンジを加え、自分の個性と新たな環境に適応したかたちに磨き上げていくこと。
「離」とは、最終的にオリジナルの型を作り上げることです。
まずは「守」を大事に。これがここまで書いてきたことですね。
どんな領域で頑張るにせよ、ある程度軌道に乗ったと言えるところまでは、これを頑なに維持するべきでしょう。
そして「そろそろだ」と思ったなら、それまで積み重ねてきたものを活かして、そこでようやく改良に入る。
そのときには恐らく、経験が導いてくれるはずです。逆に言うと、その導きを感じられないようなら、まだそのタイミングではないということになる。
見極めが重要になってくるところですね。
おわりに
何だか、成功者が初心者にアドバイスするみたいな書き方になってしまった気もしますが、最初にお断りした通り、これは多分に自戒を込めた記事です。
私はお世辞にも何かで成功者と呼べる存在になったことはなく、いろいろクンフーが足りない人間であるというのが実際のところです。
でも、だからこそ思うところがあって、書いてみたかった。そんな事情を察していただければ幸いです。