今日は資格試験とAIの関係についての最近のニュースに触れてみたいと思います。
資格の予備校
資格試験の予備校は、世の中にたくさんあります。
私は法律系中心に認識しているので、大手として挙げるならLEC、早稲田セミナー、伊藤塾、辰已法律研究所あたりがまあいわば四天王で、他の様々なところがそれに続くという感じになるでしょうか。
大手――昔ながらのスタイル
大手の予備校は、基本的に古風です。
教室を構えて受講生を募り、そこで講義をする。講義のスタイルは、昔ながらの紙のテキストと講師の喋り。
他に用意されている教材は、過去問集(分野別、年度別などの種類がある)、直前期のためのチェック集くらいでしょうか。
ITと呼ばれるものが使われているとしたら、せいぜい講義を配信することで通信生を募っていることくらい。
少なくとも私が司法書士試験に挑戦するようになって以降、このあたりの体制に進化は見られません。
新興企業――最新技術で小さく攻める
それに対して、新興の資格予備校が幾つか、じわじわと勢力を伸ばしています。
代表的なところを挙げますと、資格スクエア、アガルート、スタディング等。
これらに共通する特徴としては、通信制度に特化しており、教室を持たないため、土地代や人件費について大幅なコストダウンを図っていることがまず挙げられます。
司法書士試験講座でいえば、大手なら40万円くらいはするところ、これら新興の予備校は10万円台と、圧倒的に安い。
それから、ITを大手予備校より力を入れて導入していることも、特徴として挙げることができるでしょう。
講義をPCでもスマホでも見られる、などというのは基本中の基本。テキストもすべて画面上に表示できるようにして(紙の本は別料金で買えるようになっている)、自分で編集することができ、アカウント一つで知識を整理できるようになっている。
どの業界もそうなのでしょうが、変化の遅い大手に対して、規模は小さいが最新技術で食らいついていくベンチャー、という構図が、ここでも綺麗に見て取れるわけですね。
資格スクエアの挑戦
そんな新興の予備校の中でも、試みの目新しさで興味を引くのが、資格スクエアです。
たとえば少し前から、過去問集に脳科学の要素を組み込み、受講生の記憶の定着度に従って問題を表示する順番を変えていく、ということもやっています。
ウェブサイトを見ても、そのあたりのことが大々的にセールスポイントとしてアピールされており、今後もその方向性を大きな武器にしていこうという強い意志が感じられます。
そんな資格スクエアが、先日次のようなニュースで話題になりました。
簡単に言うと、AIによる司法予備試験の出題予想の精度が、合格点を取れるラインにまで高まったというニュースです。
実は資格スクエアは前年度に宅建士試験でもカテゴリー的中率78%を記録しており、今回はそれを予備試験に適用してみて、ある程度うまくいったという話ですね。
(注:ここで言う「的中」とは論点ないし分野の的中であり、そのものズバリ問題の内容を事前に作り出せたということではありません。インチキではと思う方もおられるかもしれませんが、出題予想の世界ではごく当たり前の言葉の使い方です)
今後は他の試験にもどんどん拡大していくそうで、そう遠くないうちには私の領域である司法書士試験にも進出するのでしょう。
AIが華麗にぶち壊す
このニュースを見て、私は単純に面白いなと思いました。
まあ、この種の出題予想が、即こちらのメリットになるかどうかはわかりません。
皆がこれを活用すれば、相対評価の試験では結局全体がレベルアップするだけで受かりにくさに変化はありませんし、試験委員側に変な刺激を与えて、今後の試験問題が奇をてらった対策しにくいものになってしまう可能性だってあるわけです。
でも、わくわくするじゃないですか。
これまでAIのニュースというと、ある枠組みの中での進歩であることがほとんどでした。ソフトウェアの新機能みたいな、既存の何かを強化しました的な話題です。
それらに触れるたびに、そろそろ何か「その対象たる存在の意義を問うような破壊的イノベーションを起こしてみました」という話が欲しいなと思っていたのです。
それが私の関係する、資格試験の分野でやって来た。
人間はダメでした
実は数年前、司法書士試験の直前期に、資格スクエアの出題予想講座を受講したことがあります。
値段は確か、6,000円くらいだったでしょうか。
しかし結果としては、まったくと言っていいほど的中しませんでした。
そのときは、プロの講師と言えども、未来の本試験のことはさすがにどうにもならないものなんだなあと、素直に諦観を抱いたものですが……。
これからはAIがそれを務めるらしい。それも確かな的中率を売りにして。
先ほども述べましたが、この資格スクエア製の未来問、やがては司法書士試験にもやって来るものと思われます。
私はもちろん今年受かってしまうつもりで勉強しているわけですから、それを受講する機会はない、という前提で動いてはいます。
でももし、この試験との付き合いがさらに長引くことになったなら――そのときは是非とも、この未来問を徹底的にやり込んでいきたいものですね。
やれば受かりやすくなるというより、やらないと受からない時代に入るかもしれないわけですから。
暗記に意味はあるのでしょうか
……しかしあれですね、この話題、試験勉強というものに対する根本的な疑問を嫌が応にも抱かせるものですよね。
「そもそも、人間の頭にひたすら知識を詰め込む競争に、現代的な価値はあるのか?」
なかなか受からない人間の負け惜しみも多少込められておりますが、脳みそはもっと有益なことに使うべきなんじゃないか、みたいなことは、考えざるを得ないところです。
すぐそんなことを考えてしまう性格をしているから、軸がブレて、合格から遠ざかってしまうのかもしれませんが……。
