天国的底辺

二次元、創作、裸足、その他諸々についての思索で構成されたブログ

音声入力メインの字書きが高級キーボード購入を断念した話

テクノロジーの進歩によって、物事のやり方は大きく変わっていきます。
これはほとんどすべての分野に当てはまることで、良くも悪くも我々は新しいものを取り込んで進んでいかなければいけません。

私は仕事としてWebライターをやっており、趣味ではこのブログを書いたり小説を書いたりしているという、いわゆる根っからの「字書き」です。
字書きの世界にも、テクノロジーは容赦なくずんずんと入り込んできています。

私個人の話で言うと、最も顕著に恩恵を受けているテクノロジーは、音声入力です。
文章を書くために音声入力を取り入れるようになってから、私の字書き人生は一変したと言っても過言ではありません。
とにかくスピーディー。とにかく楽。
しかもまだ発展途上で、これからどんどん良いものになっていくことが予想されるのですから、まさしく革命です。

しかしそんな私が、この度改めてキーボード入力に力を注ぎたいと思うようになりました。
その一環として、これまでに触ったこともないような高級キーボード・REALFORCEを買ってはどうかという提案を、自分自身に対していたしました。

買おうか買うまいか、たっぷり1ヶ月くらいは悩んだでしょうか。

考えに考えた末、結局今回は購入を見送ることに。
そして、その顛末というか気持ちの流れを書き残しておこうと、この記事を構成するに至った次第です。

というわけで、この記事では字書きである私が、どんな風にREALFORCEを欲し、どのようなメリット・デメリットの比較検討によって断念したのか、一連の流れを書いていきたいと思います。
誰かの役に立つかは甚だ疑問なのですが、お暇な方はお付き合いください。

キーボードの品質と値段はピンキリ

キーボードの世界は本当にピンキリです。
品質と価格の両方において、驚くほど多様な選択肢があるのがキーボードという入力デバイスです。

最も安価なキーボードは数百円から手に入れることが可能ですが、これらは基本的な機能しか持たず、耐久性や快適性に欠けることがほとんど。
一方、高級キーボードは4万円を超えるものも珍しくありません。
こういった高級キーボードは、耐久性・打鍵感・応答速度・デザインなどさまざまな面で優れており、プロのライターやゲーマーからも高く評価されています。

数百円のキーボードで特に不満がないという方も、少なくないことでしょう。
それは別に悪いことでも何でもなく、実際のところ数百円のキーボードでも、世の中のほとんどの仕事はきちんと成り立ちます。

しかしいくつかの仕事(あるいは趣味)においては、キーを打つという単純な行為に対する高いクオリティを求めることになります。
それに答えるのが、数々の高級キーボード。
その中でも代表的なのが、東プレという会社から出ている、REALFORCEというシリーズのキーボードなのです。

最高峰キーボード:REALFORCEとは?

REALFORCEは、高級キーボード市場における最高クラスのブランドの一つとして知られています。

REALFORCEは、独自の「静電容量無接点方式」を採用しており、それが独特の非常に滑らかな打鍵感を実現しています。
また、キーごとに反応する深さ(アクチュエーション・ポイント)を調整する機能を持つなど、長時間のタイピングでも疲れにくい工夫が施されています。

デザイン面では、シンプルかつ洗練された外観が多くのユーザーから指示を受けており、オフィス環境はもちろん、個人の作業環境にも溶け込むものです。

高価格帯に属するREALFORCEですが、その品質は価格に見合うものと評価されており、タイピングの精度と快適性を追求するプロフェッショナルたちから絶大な支持を得ています。

今回私が心の底から欲しいと思い、そして断念したキーボードが、このREALFORCEシリーズです。

高級キーボードが欲しかった理由

これまで私が使っていたキーボードは、約5,000円で購入したメカニカルキーボードでした。
数百円のキーボードに比べれば、このキーボードも安物というわけではありません。
世間的にはそれなりのクオリティだとみなされるものではないかと思います。

また、特に壊れてもいないので、このタイミングで買い換えなければならない理由もありませんでした。

そのような状況において、なぜ私がREALFORCEを欲したのか。
ここではその理由を3つに絞って、語っていきたいと思います。

打ち心地を試してみたかった

一つ目の理由は、REALFORCE特有の(すなわち静電容量無接点方式の)打ち心地を堪能してみたかったことです。

音声入力をメインとして使う前は、私も長時間キーボードを使用して文章を書いていました。
そのため、キーボードの打鍵感は日々の作業において非常に重要な要素でした。
文字通りの安物キーボードから、現在使っているメカニカルキーボードに変えたときの感動を、今でもよく覚えています。

しかしREALFORCEの打鍵感はさらに上を行くものと評価されており、打ち心地の良さ、指の疲れの軽減、タイピングの正確性の向上など、多くのメリットがあると聞いていました。
これらの特性が、自分の字書きとしての作業にどのような影響を与えるのか?
それをものすごく試してみたい、体験してみたいと思うようになったのです。

特に、長時間の執筆作業での快適性や効率性の向上は、私にとって魅力的なポイントでした。

音声入力派としてキーボード入力に再び希望を見出したかった

私はここ数年、音声入力を多用して文章を書くことを主な作業スタイルとしています。
音声入力のスピード感は圧倒的で、キーボードを使って文章を書く機会は大幅に減少していました。

しかし、最近ちょっとした気まぐれでATOKに課金し、その変換性能の高さに感動しました。
ATOKの精度の高い変換と予測機能は、タイピング時のストレスを軽減し、より流暢な文章作成を可能にするものだったのです。

このようなツールをフル活用することで、キーボード入力に対する愛着を再び持てるようになるのではないかと、そのような予感を抱くに至りました。
そしてそれを十全に味わうためには、キーボード自体もより高級なものに変える必要があるのではないかと考えたわけです。

小説を書くのはやはりキーボードが良いかもと思った

冒頭で触れた通り、私は職業として文章を書くだけでなく、趣味でブログや小説も書いています。
実はこれら一連の文章の中で、小説だけはちょっと別個に扱わなければならない理由があります。
小説の文章は、音声入力とあまり相性が良くないのです。

小説にはキャラクター名や専門用語など、一般的な音声入力では変換されにくい独自の言葉が頻繁に登場します。
音声入力ではこれらの単語をスムーズに入力することが難しく、編集・推敲作業が増加するため、音声入力に求める本来の快適性を堪能することができません。

したがって、小説を書く際にはキーボードの方が合理的ではないかという発想は昔から持っており、そのためにキーボードから充実させることには意味があるのではないかと常々思っていました。
それがこの度、ある一定のラインを超えて爆発し、「REALFORCEを思いっきり叩きまくって小説を執筆しまくりたい!」と具体的に願うようになったのです。

高級キーボードを結局断念した理由

しかし結果として私は今回、高級キーボードの代名詞であるREALFORCEの購入を断念しました。
理由としては、主に以下の3つがあります。
いずれについても「まあそうだろうな」という感想を持たれて終わりかもしれませんが、とにかく正直に書いてみるので、何か参考になればなという感じですね。

値段が高い

最も大きな理由は、REALFORCEの値段が非常に高いということです。

REALFORCEにはいくつかのタイプがあります。
有線か無線か。テンキー付きかテンキーレスか。キー荷重は45gか30gか。JIS配列か英字配列か。といった違いです。
私が今回欲しいと思っていたのは、キー荷重45gで有線のテンキーレス。
これは20,900円です。

今回Amazonと楽天でブラックフライデーセールが開催され、その対象にREALFORCEも含まれていました。
なので、上記の価格よりもさらに安く手に入るチャンスではありました。

しかし――それでもやはり高い!
この金額は大きな投資であり、その価値を今の私が十分に見出せることを、どうしても信じきることができなかったのです。

もし私がキーボード入力だけで文章を書く人間であれば、おそらくとっくの昔に購入していたことでしょう。
仕事上、最も基本的な投資の一つであると考えられるからです。

しかし現実には私のメインの執筆方法は音声入力なので、そのように思い切ることはできませんでした。

自分にフィットする保証がない

二つ目の重要な理由として、高価なキーボードだからと言って、本当に自分に合うかどうかはわからないという不確実性が挙げられます。

キーボードの選択は非常に個人的なものであり、高価格であるからと言って、必ずしも自分のニーズに合致するとは限りません。
キーボード入力は繊細な操作を要し、個々の好みや手のサイズ、タイピングスタイルによって何が最適かが異なります。
このため、高額な投資をしても、それが自分のタイピング体験や作業効率を向上させるかどうかは、実際に使ってみないとわからないのです。

つまり、どうしても「賭け」になってしまう。
今の私は、そのような賭けに2万円を投じることができる状態ではなかった、というわけです。

ちなみにREALFORCEは、とあるサイトでレンタルできるようになっています。
じゃあそれを使ってレンタルして試してみればいいじゃないか、と言われそうですが、このレンタル代金がまた高い。
月額3,500円で最低3ヶ月借りるか、5,000円ほど払って半月借りるか、どちらかの選択肢しかないんですよね。

私はどちらもちょっと無理だったので、フィットする保証がないという事実が重くのしかかってしまった感じです。

すべてが上手く行っても音声入力の方が(多分)速い

最後の理由として、REALFORCEを購入し、それが自分に完璧にフィットしたとしても、多分音声入力の速さを超えることはないだろうという見込みが挙げられます。

音声入力のスピードと効率性は非常に高く、キーボード入力がこれを上回ると考えるのは現実的ではありません。
最高峰キーボードであるREALFORCEは素晴らしい体験を提供してくれるかもしれませんが、それが実際の作業の速度や生産性を音声入力以上に向上させるとは考えにくいのです。

唯一その例外となるかもしれないのが小説の執筆なわけですが、私は小説で食べているわけではないので、現実的なお金の話になると、どうしてもその要素は一歩後ろに引いてしまいます。

この辺りを総合的に考えると、高級キーボードは私にとって「おもちゃ」の域を出ないアイテムということになってしまうわけです。
きっと楽しいおもちゃだろうと想像はできるけれども、今はおもちゃに2万円を支払える状況ではないような、ということですね。

音声入力とキーボード入力の狭間で揺れる字書き

現在の私は、仕事の文章とブログの文章の執筆を、ほぼすべて音声入力によって行なっています。
音声入力の利便性は計り知れず、その速度と効率は文字入力の常識を覆すものがあります。
テクノロジー恐るべし、です。

しかし、先ほどから述べているように、小説執筆という一点においては、音声入力だけでは満足できない局面が多々あります。
専門用語や固有名詞が多く含まれるため、音声入力では正確に入力できず、作業効率が落ちてしまう場面が少なくないのです。

もちろん、単語登録機能を備えた音声入力システムも存在します。
たとえばUDトークというアプリは、AmiVoiceという音声入力エンジンを搭載しており、これには(国産だけあって)単語登録機能がきちんとついています。
それを用いれば、自分で作ったどのようなややこしい単語であっても、きちんと喋ればきちんと変換されるのは確かです。

しかし、残念ながらAmiVoiceは、普段私がメインで使っているGoogle音声入力と比較すると認識精度で劣るところがあり、使い勝手がいまいちなんですよね。
そのため、キーボード入力に再び目を向けるようになり、高級キーボードであるREALFORCEが欲しくなったわけです。

しかしここまでの流れでおわかりのように、さまざまな検討を経た結果として、REALFORCEの購入は見送るという結論に至りました。

ちなみに私はGoogle音声入力を直接使うのではなく、Chrome拡張機能であるVoiceInというものを通して使っています。
このVoiceInには、単語登録機能にやや近いボイスコマンドという機能が搭載されており、いったんGoogle音声入力が変換した言葉を、自分の設定で好きな言葉で変換できるようになっています。
これを上手に使うことで、「単語登録機能みたいなこと」を実現させることが可能です。

このボイスコマンドに関して、近いうちに新機能が追加される予定があります。
この新機能は、私がVoiceInのフォーラムに投稿したリクエストに応えてくれる形で、来月12月に実装を試みると開発者様がおっしゃっていました。
小説においても音声入力の利用がかなりしやすくなることが予想されます。

これも、今回最後の最後でREALFORCEの購入計画がポシャってしまった理由の一つになっています。

しばらくの間は、現在のキーボードを使い続けることに決めました。
REALFORCEのことはいったん頭の脇にしまっておいて、現在の入力手段を最大限に活用していく方針でいきます。

もちろん、テクノロジーの世界は何があるかわかりませんし、人間の気持ちも移ろいやすいものですから、たとえば半年後に自分がどのように考えているかはわかりません。
でもとにかく今は、現状維持でやっていこうと決めた次第です。

まとめ

REALFORCEの購入を計画し、それを断念した流れについて説明しました。
誰の役に立つかまったく不明な内容ですが、思ったより長くなってしまいました。
3,000文字くらいに収めるはずだったのですが、気がつけば6,000文字ほどになろうとしています。

誰が読むんですかね……というこの文章をここまで読んでくださったあなたには、頭が上がりません。
本当にありがとうございます。

まあそのようなわけで、REALFORCEを叩きまくる生活は、いったん棚上げ。
音声入力とメカニカルキーボードのコンビで、今後もさまざまな文章を生産していきます。

あなたはキーボードに対して何か思い入れがありますか?
思い切って高級キーボードを買って、素晴らしい体験をしたとか、逆に思いっきり後悔をしたとか、そのようなエピソードがありましたら、ぜひコメントで教えていただけますと幸いです。