天国的底辺

二次元、創作、裸足、その他諸々についての思索で構成されたブログ

ビバJCヌードモデル:漫画『そわそわDrawing』全4巻感想

 今日は、火曜さんの4コマ漫画『そわそわDrawing』の感想を書いてみようと思います。

 ふとしたきっかけで知った作品で、前々から興味を持っていたのですが(理由は後述)、このたびKindleで半額セールをやっているのを見つけ、勢いで全巻買ってしまった次第。

 果たして良い買い物だったのか否か?

 しばしお付き合いいただければと思います。

 

 

 

あらすじ

 絵の世界に関わることを夢見る中学二年生・千暁萌葱は、美大の教授である叔父のすすめで、授業のヌードモデルの仕事を引き受ける。

 学生は女子ばかりと聞いていたが、やはり初めて人前で裸になる仕事をするのは緊張すること。しかし恥ずかしくても頑張らなきゃ、と自分に言い聞かせ、萌葱は意気揚々と大学へ向かう。

 

 しかしそのその美大――白陽美術大学には、ごくわずかに男子学生もおり、その中の一人に、画家を夢見て補欠入学した高陸洋一がいた。

 まだまだ絵は未熟で、しかも女性に対して免疫のない洋一は、デッサンの授業で萌葱とお約束とも言える出会いを果たす。

 さて、新人中学生ヌードモデルと、女性の裸を直視できない落ちこぼれ美大生の行く末やいかに――?

 

女体の美学

 あらすじからおわかりの通り、本作のメインテーマは「ヌードを描くこと」です。

 絵を描くこと全般をテーマにしているように感じるのですが、よくよくストーリーを追ってみると、徹底して(ほぼ90%は)ヌードに限定した展開になっているのです。

 

 この場合、大切なのは、そのヌードというものを、どれだけ魅力的に描けているかです。

 4コマ漫画作品というと、可愛らしいデフォルメの為されたキャラクターが動き回るというイメージがあるのですが、それだけではヌードというテーマをしっかりと立ち上がらせることはできません。

 それなりの肉感といいますか、いわば「女体の美学」みたいなものが伝わってくる絵でなければ、作品のテーマがきっちりと輝かないのです。

 

 その点、本作は合格点であると言えます。

 ヒロインである萌葱は、ほぼ毎回と言っていいほど裸になるのですが(とはいえ胸の先っぽが描かれることはありません)、その体のラインが、ほのぼの4コマ漫画という体裁からは考えられないくらい、色気に満ちているのです。

 単にいやらしいという意味ではなく、美しいんですよね。確かにこの子の体なら絵にしてみたくなる気持ちもわかるな、と思いながら読み進めることができるのです。

 

 そのヒロインが、まだ中学生であるというところに、本作の計算を感じます。

 まず第一に、その年齢を考えたときの独特の興奮ですね。まだ中学生なのに、こんな扇情的な体をしていて、このような仕事をしてしまうんだ――という背徳的な部分が生み出す、純粋な萌え。

 第二に、中学生という年齢だからこそ、主人公との色恋沙汰には発展せず、絵を愛する者同士の温かい交流に専念することができるという、健全さ。

 この2つがうまいこと交わって、作品の魅力を支えているわけです。

 

 実を言うと、私が本作を購入ターゲットに含める理由となったのは、Amazonの商品カタログにあるサンプルページを読んだことでした。

 そのサンプルページの内容は1巻冒頭のフルカラー部分だったのですが、その中で描かれている萌葱の裸体が、変な意味ではなく、本当に魅力的だったんですよね。

 それで、べつにそんなにえっちな内容ではないと思うけれども、このような体を見せてくれるヌードがテーマの物語だったら、追いかける価値があるのではないか――と、ずっと思っていたわけです。

 そこに先述した半額セールがやってきたため、勢いで買ってしまった次第です。

 

 本作において、裸を見せるキャラクターは、萌葱一人だけです。

 その意味では、いわゆるハーレム要素はなく、非常に純粋な主人公とヒロインの物語であると言えます。そのキーとして萌葱の裸がある、という感じでしょうか。

 そのような重要な役割を担っている裸体ですが、見事にお務めを果たしていたと言えるでしょう。

 

 恐らくですが、作者の火曜さんも、自分の描く女体にはそれなりの自信があったのではないでしょうか。

 そうでなければ、このような作品を成立させることができませんから、そこに勝算を見出して連載したということは、つまりそういうことなのではないかと思います。

 そして、それは正解だった。

 ご自身の技量を生かした、素晴らしいテーマ選びだったと思います。

 

葛藤と成長のある主人公

 私の偏見かもしれないのですが、この手の4コマ漫画というのは、ストーリーの大筋についてはそんなにこだわるものではありません。

 大事なのはその場その場のキャラクター同士のやり取りであり、それが可愛らしかったり、面白いヒネリを見せたりしてくれること。

 それさえ達成できているならば、大筋がどのようなものであっても、あるいは大筋と呼べるものがなかったとしても、そんなことはべつに構わない、という風潮があるように思うのです。

 

 その辺りの実際のところはどうであれ、本作には明確な大筋というものがあります。

 ヌードモデル、というメインテーマにぴったり寄り添うように、画家を目指すという洋一の夢がどのようになっていくか、ということを、わりと丁寧に追いかけているのです。

 あらすじでも触れましたが、洋一は女性に対する免疫がまったくなく、萌葱の裸をまともに見ることができません。

 なので、このようなテーマの作品でありながら、本作ではずっと「まともにヌードを描けない」時間が過ぎていくことになります。

 それがどのように克服されるか、ということが、最大の壁、一種のリドルとして初めから提示されているわけですね。

 

 そして、練習を積んでいくことで、少しずつ洋一の技術は上がっていくのですが、終盤になると、ある試練が彼を襲います。

 それが何であるのかは、ネタバレになるのでここでは触れないでおこうと思いますが、とにかくその展開は、基本的にほのぼのとした4コマ漫画である本作においては、結構な重さを持ったものでありました。

 

 それを解決するために、萌葱はあることを提案するのですが――この辺りの流れが、言ってしまえば事前に予想できることではあったのですが、それでもこみ上げてくるものがありましたね。

 それまでの悶々とさせられたすべての要素は、この展開のためにあったのだ、という感じがして、非常に気持ちが良かったんですよ。

 そこでももちろん、萌葱の裸が登場したわけですが、その裸がひたすら神々しく見えることには、素直に感服しました。

 私はどちらかと言うと、裸などの要素に対して、文脈をまったく無視して萌えて楽しんでしまうタイプなのですが、本作のその辺りに関しては、深く感じ入ることに専念したいという気持ちが優先しましたね。

 非常に心が晴れる展開だったと思います。

 

 全4巻と、決して長くはない内容なのですが、その中でもしっかりと成長する主人公を見せてくれたことを、私は評価したいと思います。

 

各論1:キャラクター

 ここまで、主人公とヒロインについてのみをひたすら書いてきましたが、脇役のキャラクターに関しても、本作はとても魅力的です。

 全員を紹介することはしませんが、個人的に好きだったのが、学年的には同級生ながら、浪人しているため年齢的には先輩にあたる、宵という天才少女です。

 年上にもかかわらずロリ体型で、しかしどこか世の中を悟ったような態度をとる。

 まあ典型的なキャラクター造形かもしれませんが、本作においてはそのコテコテなところがとてもよく機能していました。

 

 それから、有栖川教授も良かったですね。

 萌葱の叔父にあたる人物で、彼がいたからこそ本作のストーリーが展開したわけなのですが、この教授というのが、見た目はまったくの女性なのです。

 要するに女装キャラなわけですが、その内面についてあまり深く掘り下げることはせず、「とにかくこの人はこういう人物なのだ」というところに良い意味で留まっていたので、存在がクドくなく、愛すべきキャラクターとして受け入れることができました。

 副産物的に、「美大にはいろいろ変わった人物がいる」というニュアンスを表す記号としても働いていたところがありますね。

 

各論2:絵

 萌葱の女体については、すでに語った通りです。本当に色っぽくて、しかも美しい。

 この作者さんが他にどのような方向性の作品を発表しているのかは存じ上げないのですが、この女体の描き方は、何を語るにしても大きな武器になるのではないかと思います。

 他の作品でもこの武器が遺憾なく発揮されていることを、願いたいところですね。

 

 それを除いて考えても、とても見やすい絵柄で、好感が持てました。

 男女ともに分け隔てなく力を入れて描いているという感じが伝わってきて、これも好感触。

 顔の描き方などは、悪く言えばあまり特徴がないのかもしれませんが、十分に可愛らしく、文句をつけるところではまったくないという印象でしたね。

 

各論3:ストーリー

 しっかりとした大筋が用意されている、という点については先述した通りです。

 それ以外の細かなエピソードについては、まあごく普通に、無難に、その都度その都度のエピソードをきっちり積み重ねているという感じでした。

 基本的にはコメディなわけですが、あまりドタバタしたところがなく、少ない数のキャラクターでおとなしく温かい笑いを取りに行く、というスタイル。

 今の私には、それがとても心地よく感じられました。

 

 ほぼ「ヌードを描く」ということだけがテーマであり、そのヌードを描けない、ということだけが壁として提示されている、シンプルな構造なのですが、それだけでもきちんと作品は成立するものなのですね。

 私も小説を書く人間なので、この辺りの膨らませ方は参考になるところがありました。

 

 私は実のところ、4コマ漫画作品というものをあまりたくさん読んでいないので、この界隈との精神的な付き合い方といいますか、基本的な受け入れ姿勢というものが、自分の中にしっかり確立されている自信がありません。

 その意味では、このような感想を書くことにも若干の引け目を感じているのですが、少なくとも本作は十分に楽しむことができたと思いますので、紹介する意味はあるのかな、というところです。

 

おわりに

 全体として、小さく可愛らしく、そして意外にもしっかりとストーリーラインを備えた作品だったと思います。

 すべての漫画ファンに対して同じように薦められるかどうかはわかりませんが、4コマ漫画が好きな人や、女子中学生のヌードというキーワードだけで美味しくいただけそうだという人は、本作を楽しめるのではないかと思います。

 描写は全体として「ちょっとえっち」程度ですので、そこは承知の上で手を出すべきでしょう。

 

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