天国的底辺

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ATOKのプレミアムプランに課金してみた

私は長いことGoogle日本語入力を使っていたのですが、この度ATOKのプレミアムプランに乗り換えることにしました。
キーボード入力についてあれこれ調べている際に、最近のATOKのさまざまな機能が充実しているという話が目に入ったからです。

しかしGoogle日本語入力と比べて、ATOKは有料。
それもサブスク制を採用しており、長年使い続けるとそれなりの出費になってしまいます。
したがって当然ながら、「本当にATOKは優秀な日本語入力機能なのか?」ということについては、入念に判断していかなければいけません。

本記事では、ATOKのプレミアムプランに課金し始めたばかりの私のファーストインプレッションを紹介するとともに、日本語入力機能界隈のここまでの流れをざっくりと書いてみたいと思います。

ATOK(2023年)のファーストインプレッション

実のところ、ATOKを使い始めてから本記事を執筆するまで、まだ数日間しか経っていません。
さすがにこの短い期間では、ATOKの持つ機能のすべてを公正な目で判断することは不可能です。

というわけで、今現在書き残すことのできるものとして、とりあえずのファーストインプレッションをざっくり書いていきたいと思っています。

予測変換(推測変換)が充実している

新しいATOKを使い始めた際、まず目を引いたのは予測変換の進化です。

予測変換(または推測変換)とは、使用者の入力パターンを学習し、次に入力する文字を予測して提案してくれる機能のことです。
たとえば「おめ」とだけ入力すれば、「おめでとう」が候補として出てくるという仕組みですね。

この機能のおかげで、ある一定の文章を書くにあたって、本来叩かなければならないキーの数より、だいぶ少ない数で目的の文章を執筆することができます。

ATOKは、この機能が非常に優れています。
Google日本語入力にも予測変換機能はついていましたが、かゆいところに手が届く感じで言えば、ATOKの方がより充実したものになっているというのが、最初に触った際に直感したことです。

通常の変換機能を使用するためにはスペースキー、予測変換機能を使うときにはタブキーを叩くわけですが、予測変換機能をマスターすれば、スペースキーよりもタブキーの方をより多く叩く使い方になるのではないでしょうか。

ただし、ATOKの方がすべてにおいて優れているというわけではありません。
たとえばエンターテイメントの分野で、Google日本語入力の方が優れている部分をいくつか見つけました。
たとえば、有名な漫画である『北斗の拳』を例にとりますと、主人公が使う「北斗神拳」はきちんと変換されるものの、ライバルキャラが使う「北斗琉拳」は変換できませんでした。
Google日本語入力では、どちらもきちんと変換してくれます。

しかしこの辺りは、クラウドベースで成長していくものであるため、今後のさらなる充実が期待できるという意味では、それほど大きな欠点ではないと言えそうです。

文脈を読んで、正しい同音異義語を第一候補に挙げてくれる

ATOKがセールスポイントにしている要素の一つとして、文脈を読み取り、正しい同音異義語を第一候補として挙げてくれる能力の高さがあります。
文章を作成する際、同じ発音でも異なる意味を持つ単語がありますよね。これが同音異義語です。
ATOKはその場その場における正しい同音異義語の選択に強く、正しい候補を出してくれる確率がGoogle日本語入力と比べてかなり高いと実感しました。

たとえば、「貴社の記者が汽車で帰社した」といった文章も、ATOKであれば一発で変換されます。
Google日本語入力では「貴社の記者が記者で記者した」となってしまいます。
その賢さの違いは圧倒的であると言わざるを得ません。

しかし、この高度な同音異義語の選択機能は、予測変換機能と同時に味わうことができないという意味で、ちょっと課題が残ります。
予測変換機能の方は、どちらかといえば単語レベルで使うものですよね。
それに対して同音異義語の正しい選択は、長い文章を一気に打って一気に変換するときに真価を発揮するものです。

したがって、その場その場の状況によって、単語ごとに変換する形で予測変換機能に頼るか、文章を丸ごと変換する形で同音異義語の選択機能に頼るか、どちらがより便利であるかを見極める能力を身につける必要があるでしょう。

オンライン校正ツールもついてくる

ATOKのプレミアムプランには、日本語入力機能そのもの以外にもたくさんのツールが付属しています。
その中の一つに、クラウド校正ツールがあります。
これは、単にスペルチェックを行うだけでなく、文章の文法的な正しさや一貫性、論理的な流れに至るまで分析を行ってくれるものです。

これによりATOKプレミアムプランは、単純なタイピングのためのツールという枠を超え、文章のクオリティを総合的に向上させる編集者のような役割を果たしてくれます。

特に仕事で文章を書いている人間にとっては、誤字脱字や言葉遣いの間違いは致命的なもの。
それを月額660円で、他の機能のついでにチェックできるとなれば、これはお得であると言わざるを得ないでしょう。

もちろんプロとして活動している方だけでなく、趣味で何かを書いている方にとっても、魅力的で理解しやすいコンテンツを提供するために有益なツールです。

ATOKの歴史

ATOKの歴史は、日本のコンピューター文化と密接に結びついています。
詳しいことはWikipediaに譲るとして、ここでは私の個人的な経験と観察に基づいた、ATOKの歴史についてざっくりと書いていきます。

栄光と転落

ATOKが日本の文字入力システムとして書くことの地位を築いたのは、その高品質な変換エンジンと、ワープロソフト「一太郎」との組み合わせによるところが大きいと言えるでしょう。
日本で開発されたこともあり、日本語への深い理解に基づいたクオリティの高さは、ユーザーから高い評価を得ていました。

しかし、品質の高さだけでは勝てないのがソフトウェア業界の厳しさ。
一太郎はだんだんとMicrosoftのWordに市場シェアを奪われていき、それに伴ってATOKの影響力も衰えていきました。
ATOKは一太郎とセットで使われることが多いものであるため、一太郎の衰退とどうしてもセットになってしまう結果となったのです。

加えて、ATOKの位置づけに影響を与えたのは、Google日本語入力の台頭です。
無料でありながら高機能を提供するGoogle日本語入力は、多くのユーザーに迅速に採用され、ATOKからさらに市場を奪う形となりました。

これによりATOKは、専門性を求めるユーザーからは必要とされていたものの、一般ユーザーからは見放された存在となってしまったわけです。

現在のATOKは復権しているのか?

ATOKの現在の立場は、かつての栄光に比べると確かに微妙なものです。
パートナーである一太郎の市場シェアは依然として低迷しており、ATOK自体も、特定のニーズを持つユーザーに特化したマニアックなツールとみなされがちです。

さらに、現在のATOKはサブスクリプションモデルのみ提供されており、この販売方法が普及を妨げている一因であるとも感じられます。
サブスク制度は現代において一般化しましたが、実のところ日本人の多くは「日本語入力機能にまでサブスクでお金を払いたくないよ」と考えるのではないでしょうか。

しかしその一方で、機能面ではATOKは大きく進化しています。
従来のバージョンと比較しても、変換制度の向上やカスタマイズ性の拡大、新機能の追加など、現代の日本語入力ニーズに答えるための改良が加えられています。

このような進化は、特に執筆する文章量が多いライターや、専門的な文章を扱うユーザーにとって評価できるポイントです。

たくさんの文章を執筆しなければならない方、あるいは文章に強いこだわりを持っている方にとっては、ATOKは一度は試してみる価値のあるツールであると言えるでしょう。
サブスク制度であるため、長期間使い続けるとかなりの出費になってしまいますが、それでもなお利用する価値があると感じる可能性は十分にあります。

Google日本語入力の隆盛と停滞

Google日本語入力についても、少しだけ触れておきましょう。

Google日本語入力が市場に登場した当初、その革新性には多くのユーザーが驚かされました。
特に予測変換機能は、入力効率を大幅に改善し、またアニメキャラクターの名前などポップカルチャーに関する用語も容易に変換できるという点で、おおいに評価されました。

しかし、その後のバージョンアップでは、これといった目新しい機能追加や大幅な改善が見られなくなりました。
誤解を恐れずに言えば、成長が止まってしまったのです。

Google日本語入力は、Googleの有名な「20%ルール」、すなわち従業員が業務時間の20%を自分の興味のあるプロジェクトに割り当てて良いという文化の産物です。
この文化のおかげでGoogle日本語入力が生まれたわけで、その点はポジティブに判断するべきでしょう。

しかし同時に、20%ルールで生まれたものは、Googleにとってはそれほど真剣に取り組むべきものではないのだろうという解釈も可能です。
Google日本語入力はまさにその典型的な例として、現在のGoogleにおいてはさほどの重要性がなく、半ば放置されているのではないでしょうか。

それでも無料で使えるがゆえに、一定のシェアは確保しているわけですが、これ以上待っていても劇的な進化が見られるとは、個人的には思えません。
日本語を効率的に執筆したいと考えている方は、私と同じようにATOKを試してみるのも、良い選択肢なのではないかと思われます。

音声入力派としての葛藤

ここまでATOKの魅力について書いてきたわけですが、実は私には根本的なところで、ATOKを100%真正面から受け入れられない事情があります。
今の私は主に音声入力で文章を書いており、キーボード入力やフリック入力で文章を書くためにコストを支払うことに関して、どうしても抵抗が生まれてしまうのです。

ここではその辺りについても、少し書いてみることにします。

音声入力の方が遙かに速い

ここまで書いてきたように、ATOKには素晴らしい予測変換機能や、正しい同音異義語を提示してくれる機能などが備わっています。
これらはキーボード入力で文章を書くにあたり、非常に高い効果を発揮することでしょう。

しかしそのような機能の充実にもかかわらず、私の経験上、単純な執筆速度で言えば音声入力の方が圧倒的です。
日常的なメールのやり取りから、こういったブログ記事の作成まで、音声入力は指の動きを待つことがなく、思考をダイレクトに文字化することができます。

スピードが早いだけでなく、指が疲れないというのもメリットで、音声入力を使っていれば、字書きの職業病とも言える腱鞘炎にもまったくなりません。
スピーディーな上に体にも優しいという、ほとんど無敵の入力手段が音声入力なのです。

と、これだけ絶賛できるくらい音声入力に慣れ親しんでいる立場からすると、キーボード入力を充実させるためにお金を使うことには、どうしても抵抗が出てきてしまうわけです。
もちろん、次項で解説するようにキーボード入力も大切なのですが、大切なコストを分散させなければならないという意味で、色々と思うところは出てきてしまうんですよね。

あなたが音声入力を使わない方なのであれば、ここで書いたことは気にする必要はありません。
積極的にATOKを導入し、バシバシとキーボード入力を堪能していきましょう。
しかし音声入力ユーザーであれば、この葛藤をわかっていただけるのではないかと思う次第です。

あえてキーボード入力を充実させる意味とは?

音声入力が私のメインの入力手段ではありますが、もちろんキーボード入力を完全に排除しているわけではありません。
短いメモを取るとか、検索クエリを入力するとか、そういった小さな用途においては音声入力を使うよりキーボードを使った方が便利なことも多いのが実情だからです。

また、引きこもり体質なので個人的にはあまり関係ないのですが、公共の場でプライバシーを保ちつつ文章を書きたい場合には、音声入力は選択肢にはなりませんよね。
そのような状況においては、キーボード入力の環境が充実していることが大きな意味を持ちます。

さらに言えば、常に声が出せる状態にあるとも限りません。
たとえば新型コロナウイルスに感染した場合など、まともに声が出ない日が何日か続くことになるでしょう。
そのような場合には音声入力はできなくなるわけで、キーボード入力が充実していると、その間も気持ちよく文章を生産できるようになるわけです。

とまあこのような具合に、音声入力がメインだからと言って、キーボード入力をおろそかにしても全然OKという風にはなりません。
こちらはこちらで、しっかりと充実を図るべきだというのが理想の話ではあります。

ただまあ、コストが……。

まとめ

ATOKプレミアムプランのさまざまな側面を、ファーストインプレッションとして詳しく見てきました。

Google日本語入力からATOKに乗り換えてみた私ですが、ここ数日の感想としては、新しく飛び込んでみた価値はあるかなという感じです。
洗練された予測変換や文脈に応じた同音異義語の選択、オンライン構成ツールの利便性は、とりあえず月額660円にはしっかり見合うものになっているのではないでしょうか。

これからさらに使い込むことで、一連の感想がどのように変化するのかはわかりません。
ただ、期待できる要素としては、ATOKは使い込めば使い込むほど、内部的に自分好みのカスタマイズが行われるそうなので、そこは楽しみにしている次第です。

いずれまた何か報告したいことがあったときには、ブログ記事にしたいと思っています。
この記事が、ATOK導入について迷っている方の後押しをする効果を持っていれば幸いです。