エロゲ声優をやることになった女子高生が、恥じらいながら喘ぎ声を収録する漫画『こえでおしごと!!』第2巻の感想です。
……という書き出しだと、いかにも「ちょっとエロめの描写しか見どころがない作品」という印象を持たれそうですが、このシリーズは必ずしもそうではありません。
意外と(失礼)多角的な楽しみ方ができる作りになっているのが特徴となっています。
それは前シリーズである『こえでおしごと!』から変わっていません。
そして今回の第2巻は、結論から言うと、その多角的な面白味のうち、コメディの要素がとても優れた内容になっていると感じました。
この記事では、そこをメインに語っててみたいと思います。
新キャラ・拝戸くんの優れた効果
第2巻を読み進めていくと、最初に体験するのが新キャラ・拝戸明帝央(「はいど・めてお」と読む)くんの登場です。
引用元:紺野あずれ『こえでおしごと!!』第2巻
第1巻を楽しく読んでいた人の中には、ここで次のように思った人もいるかもしれません。
「何だよ、今シリーズは主人公と生徒会長の女子同士の関係をたっぷり楽しめると思ってたのに、結局男キャラが出てきちゃうのかよ」
正直、私も少し心配するところはありました。
ぶっちゃけ私もかなりの百合好きなので、二人の関係に変に割って入るような役割のキャラならちょっと困るな、みたいなことを感じていたのです。
しかし、これはまったくの杞憂でした。
なぜなら、拝戸くんの役割は主に以下の2つだったからです。
- 本人のギャップを使った面白さで物語を盛り上げる
- 生徒会長の新鮮な面を引き出す
順番に見てきましょう。
本人のギャップを使った面白さ
拝戸くんは、対外的には「完璧なイケメン」です。
容姿端麗・成績優秀・性格良好で、女子からの人気も超高く、当然のように生徒会副会長の座に収まっている。
これらの要素がそのまま普通に物語の表で踊り続けるのであれば、あまり面白いことにならないのは誰しも想像がつくところでしょう。
しかしこの拝戸くんには、生徒会長がそうだったように、裏の顔があります。
基本的にエロゲー好きであり、そしてそれをこじらせた結果「エロゲーの巨根が嫌いで、自分のモノのサイズにコンプレックスがある」状態に陥っているキャラだったのです。
引用元:紺野あずれ『こえでおしごと!!』第2巻
想像以上に強烈なギャップで、正直かなり笑えました。拝戸くん本人は100%真面目に悩んでいるので、余計に面白いんですよね。
生徒会長の新鮮な面を引き出す
そしてそういったこと(エロゲーのデカチンや寝取られの是非)について、普段は理知的な生徒会長とものすごく幼稚な言い争いをするのが、これまた面白い。
そう、拝戸くん自身が面白いだけではなく、生徒会長の新しい一面、それも間違いなく拝戸くんにしか引き出すことのできない一面、を見事に引き出しているところにも、彼の存在意義が見て取れるのです。
引用元:紺野あずれ『こえでおしごと!!』第2巻
主人公・常磐木夏恋、生徒会長・名小路結愛、そして生徒会副会長・拝戸明帝央。
この3人の関係はおおむね、「エロゲーのあるべき姿について何かと幼稚な言い争いを繰り広げる美男美女と、それを仲裁する一般人」という風になっています。
これがとても心地よく、かつ「夏恋と生徒会長の関係性を一切怖さない男子キャラのあり方」として優秀なんですよね。
拝戸くんの投入は大当たりだったと思います。
コメディのレベルが上がっている
拝戸くんの登場のせいで感じられることなのかもしれませんが、本作は前シリーズと比べて、コメディのレベルがかなり上がっている気がします。
別に前シリーズがエロ以外見るべきところがなかったというわけではないのですが、キャラの掛け合いや言葉選びだけで十分な笑いに持っていけている率が、相当に増しているように感じられるのです。
引用元:紺野あずれ『こえでおしごと!!』第2巻
エロありきの作品にこういう表現をするのは、必ずしも褒め言葉ではないかもしれませんが――「エロに頼らなくても面白い」作品として、すごく成長しているのではないかなと。
これは純粋に、前シリーズから今シリーズまでのあいだに、作者である紺野あずれさんの技量が上がったということなのでしょうか?
それとも、拝戸くんのキャラ造形が奇跡的なレベルで作品を盛り上げるものになった、ということに過ぎないのでしょうか?
どちらの要素もある気がする、というのが素直な感想ですが、いずれにせよ読んでいて本当に楽しい仕上がりになっているのは確かです。
エッチを主軸にしているにもかかわらず、万人にオススメしたくなってくる作り……これはなかなか頼もしいですね。
サポート役に徹していた藁園文花さん
私が『こえでおしごと』シリーズで一番好きなキャラは、藁園文花です。
前シリーズでは、エロゲ声優をやっていくうえでの主人公の先輩として、作品の前面に比較的出ずっぱりでした。
その過程で、喘ぎ仕事のシーンもたくさん出てきて、そっちの意味でもおおいに楽しませてもらいました。
より大きく、より後方に
今回も文花さんは「エロゲ声優の先輩」という言い方をするなら同じポジションなのですが、ちょっとニュアンスが異なっています。
より主人公たちと距離のある「大きな存在」になっており、一緒に頑張る的なテイストのあった前シリーズに比べると、サポート役に徹しているところがあるんですよね。
その表れの一つと言うべきなのでしょうか、今回の第2巻には、文花さんの喘ぎのシーンはありませんでした。
彼女が喘いでいる姿が大好きな私としては、本シリーズの醍醐味の一つが今回は不発だったということで、ちょっぴり残念に思うところはあります。
正直、前シリーズも今シリーズも、主人公が喘ぐ姿の何倍も、文花さんのそれのほうが魅力的に感じるので……。
表で大活躍しているエロゲ声優
でもそれと引き換えに今回とても印象的だったのは、拝戸くんと文花さんがゲーム会社で初対面したシーンです。
拝戸くんは「エロゲ声優の花園ほのか」に会いに来たつもりなのですが、初めて本人を見て「藁園文花に似てる気が……」と一言。
そこで文花さんが、花園ほのかは藁園文花の裏名義であることを明かすのです。
引用元:紺野あずれ『こえでおしごと!!』第2巻
拝戸くんはびっくりすると同時に、それがどれだけ凄いことなのかを夏恋に説明します。
今の文化さんは、アニメの主役を何本もやっている超有名声優なのだそう。
なかなか表仕事の役を貰えなかった前シリーズから躍進し、現在は大活躍していることが判明しました。
まず、文花さんが大出世しているという事実そのものが、普通に嬉しかったです。
そして、これはとても個人的な性癖なのですが、私は「表で有名なのに裏名義でエロ仕事をしている声優さん」がめちゃくちゃ好きなんですよね。
そのポジションに文花さんが収まっていることに、ある種の感動のようなものを覚えたりもしました。
引用元:紺野あずれ『こえでおしごと!!』第2巻
文花さんの成長物語はある意味でもう終わっているので、前シリーズのように頻繁には喘いでくれないのかもしれませんが、色々な活躍に期待したいところです。
酒波さんと技術論
今シリーズは、前シリーズに登場したキャラクターが「その後の姿」で登場するのも醍醐味の一つなわけですが、第2巻では文花さんの先輩声優・酒波重一が登場しました。
男性ですが、嫌味のまったくないところと、声優としての実力は凄いという単純な事実に好感の持てるキャラです。
引用元:紺野あずれ『こえでおしごと!!』第2巻
酒波さんの良いところは、登場するだけで文花さんにツッコミ役としての出番が増えるところです。
普段の文花さんはおっとりしているキャラなわけですが、酒波さんが暴走を始めると、それに対して絶え間なく突っ込む役割を作品から与えられるんですよね。
そういうときの文化さんは(ある意味で)実に活き活きしており、見ていてとても楽しい気持ちになれるので大好きだったりします。
引用元:紺野あずれ『こえでおしごと!!』第2巻
そして酒波さんにはもう一つ、声優としての技術論に話を持っていくための要員、という役割もあります。
今回はそれが「フェラシーンにおいて大切なのはチ○コの大きさをイメージすること」という、凄まじくシモな方向に出ていて、これまた面白かったですね。
ネタで終わる話ではなく、結構本気で大事なのがじわじわくるポイントです。
引用元:紺野あずれ『こえでおしごと!!』第2巻
本シリーズは声優をテーマにしていますが、メインのテイストがテイストだけに、主人公周りだけでは「声優という職業」を掘り下げるのが難しいんですよね。
そこに酒波さんを絡ませることによって、いわゆる技術論的なものを展開することができるようになり、物語が良い感じに膨らんでいくというわけです。
彼には前シリーズと変わらぬ仕事を期待したいところですね。
おわりに
以上、『こえでおしごと!!』第2巻の感想を、ざっくり書いてみました。
本作の最大の売りはあくまでも「可愛い女子高生が恥じらいながら喘ぐ姿をたくさん見られる」ことにあるのですが、それだけでは終わっていません。
良質なコメディとして成立しており、キャラ同士の掛け合いなどもしっかり楽しむことができる内容になっています。
画力も前シリーズより向上しており、読みやすく綺麗な一挙手一投足を堪能できるのも良いところ。
エッチなものが好きな人、声優ネタが好きな人、面白いコメディが好きな人、いずれにもオススメしたいです。
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