私は2012年から司法書士試験の勉強を続けているベテラン受験生なのですが、このたび、2020年度の本試験を回避することを決心しました。
幾つかの要因が重なっての意思決定ですが、まあ敵前逃亡と言われてしまったら、返す言葉はありません。情けないオチであるのは確かです。
この記事では、一種の敗戦の弁のようなものを記しておきたいと思います。
それと同時に、今後どうするかについての自分の中の葛藤を、文章にしてみることで少し整理してみたいと思います。
ベテラン司法書士受験生の決断
冒頭にも書いた通り、私は司法書士試験の勉強をもう2012年からずっと続けています。
2013年度が初受験で、以来これまで計7回受験してきたのですが、お恥ずかしい話、一度として基準点に到達したことすらありません。
受験生のレベルとしては、最低ランクに位置している落ちこぼれでしょう。
そんな私なので、今回の受験回避を決めるずいぶん以前から、撤退の二文字は常に頭に入れて暮らしてはいました。
自分の頭がそこまで悪いとは思っていないのですが、少なくとも司法書士試験とはかなり相性が悪い――そんな風に考えざるを得ない結果を、これまで積み上げてきたわけですので、自然な発想かと思います。
例年通りのスタンスを続けるのであれば、今年2020年は8回目の受験となるはずだったのですが、諸々の事情により、回避することにした次第です。
理由としては、次の3つを挙げることができます。
- 単純に勉強していない
- 新型コロナの影響が不安
- 司法書士業界の将来が不安
以下で一つ一つ、自分の弱さと真正面から向き合いつつ、詳細に説明してみます。
理由1:単純に勉強していない
まず最初の理由として挙げられるのは、単純に最近まったく勉強していないということです。
経済的な事情から、Webライティングの仕事をスタートさせたのですが、目下のところそちらを充実させることで気持ちも時間もいっぱいで、司法書士試験の勉強にまったく手がつかない状態が、ここのところずっと続いていたのです。
どう考えても、今の状態で受験をしたところで、合格できるはずがありません。
司法書士に合格するためには、直近の1年間で最低でも2,000時間、余裕を持つためには3,000時間は勉強する必要があると言われています。
それに対して、私がこの1年間でやってきた勉強はと言えば、おそらく200時間もいかないでしょう。
これで合格できるのであれば、今頃とっくに合格していたはずです。世の中には奇跡という言葉がありますが、この勉強量の差は、奇跡の力をもってしても覆すことはできないでしょう。
情けない話ですが、自分から断言してしまいます。今年の私は、受験をしても100%合格することはできません。
なので、受験の申込書を提出することは控えた次第です。
理由2:新型コロナの影響が不安
上記の理由だけでもじゅうぶんなのですが、それに加えて今年は新型コロナウィルスが蔓延しており、受験会場で感染するかもしれないという不安も理由としてありました。
法務省からの通達によれば、試験会場ではそれなりに慎重に取り組む旨が受験要項に書かれてはいました。
受験生一人ひとりの検温をするとか、試験会場の窓は開け放っておくとか、試験委員はマスクやフェイスガードをするとか、そういったことです。
しかし、それらの記述を見て安心できたかというとむしろ逆で、「受験会場とはそれだけ危険を孕んだ環境なのだ」ということが、ありありと想像できてしまったのです。
例えば、受験生の席のあいだをじゅうぶんに空けることはするでしょうが、毎年恒例の休憩時間のトイレ行列は避けられないでしょう。
あれにソーシャルディスタンスを適用するのは不可能だと思います。
というか、どんなに距離を置いたとしても、どんなに試験中は無言だとしても、大勢の人間が一ヶ所に集まって長時間過ごすというヤバイ部分に変わりはありません。
試験そのものでは一切当たりを引いたことのない私ですが、だからこそそういうところでだけは「当たり」を引いてしまいそうな気がするのです。
その辺を考えて、2020年はやめておいたほうがよいだろうという発想に至りました。
理由3:司法書士業界の将来が不安
そして、ある意味いちばん身も蓋もない理由としては、司法書士業界の将来がますます不安になってきた、ということが挙げられます。
よく言われる「AIによって消滅する職業」の中でも、司法書士はかなり上位に属するのではないかとこれまでも思ってきましたが、その雰囲気はますます強くなっています。
もちろん、新たな業務形態を模索することにより、一部の勝ち組はこれからもしっかり稼いでいくことができるのでしょうが、それ以外の司法書士は遠からず食うにも困る生活になってしまうのではないかと、私は不安に思うのです。
皮膚感覚としても、登記などというものはもう個人が機械的なサービスを利用してやってしまうのが自然な姿でしょう。
そうなりますと、司法書士に残されているのは、債務処理ですとか、成年後見ですとか、そういったものになるわけですが、登記という基礎が食い扶持にならなくなったとき、果たしてそれらでどこまで収益を上げることができるのでしょうか。
私はべつに業界通でも何でもないわけですが、さまざまな物事の進歩を見ていれば、必然的に司法書士という職業について、不安が出てくるというものです。
このような理由からも、司法書士試験に対してかなり消極的になっている自分がいるわけです。
このことも、今年の司法書士試験を回避する大きな理由の一つとなっています。
「それっていわゆる『すっぱい葡萄』じゃないの?」
と言われると、まあそれもあるかもしれないと応えるしかないのですが……。
続行か撤退か?
以上のような理由で、2020年度の司法書士試験を回避することにしたわけですが、話はそれだけでは終わりませんよね。
あくまで2020年度の試験を回避するだけなのか? それとも、これをもって完全に司法書士試験から撤退するのか? そこが重要です。
この点について、まだ完全に決めたわけではないのですが、今の自分の気持ちの在りようを客観視する限り、恐らく9割ぐらいの確率で、このまま試験から撤退することになるのではないかと思っています。
正直に言って、司法書士試験に対するモチベーションはほとんど消滅と言っていい状態になってしまっています。
ここから気を取り直して、再び猛勉強を重ね、これまでまったくかすったこともない基準点に達し、さらにそのまま合格点までもぎ取る――それは現実的に考えて、不可能とは言わないまでも、至難の業だと思うのです。
しかも、かなりの時間的リスクを伴ってもいます。他のことに3,000時間を費やしたら、一体どれだけのものを積み上げることができるでしょう?
恐らく私は、司法書士ではなくべつの道を模索して、そちらでがんばって稼いでいくべきなのではないかと、今は思っているのです。
そのような選択をしたとしても、司法書士試験のために勉強を重ねてきたことがすべて無駄になるわけではありません。
身につけたある程度の法律知識も、試験勉強に関するノウハウも、今後仕事に活かしていくことはきっとできるでしょう。
そんな風にこれまでの勉強時間を「換金」していくのが、私のこれからの人生であるべきなのではないでしょうか?
もちろん、これらすべてが負け犬の遠吠えと解釈されることも、きちんと受け止めなければいけませんが……。
まとめ
以上、2020年度の司法書士試験を回避するという、誰が待っていたわけでもないアナウンスをさせていただきました。
これまで何度か司法書士試験関連の記事を書いてきたのですが、それがこのような報告に行き着いたことについては、まあ少なからずカッコ悪さを感じています。
しかし、勇気ある撤退という言葉が世間には存在します。ここら辺が私にとっての潮時ではないかと思うんですよね、正直なところ。
きっぱりと諦めて、新しい道を全力で進もうとするのも勇気であり、立派に前向きな挑戦ではないかと思うのです。
いろいろと試行錯誤を繰り返しながら、PDCAサイクルを回しながら、何としてでも自身を成功に導きたいと、今でも思っています。
べつに人生そのものを諦めたわけではありません。
これからも何かにつけ頑張っていきます。
何かの巡り合わせでたまたまこれを読んでくださったあなたに「お互い頑張って成功しましょう」という言葉を最後に投げかけ、記事を締めたいと思います。
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