ご存知の方もたくさんおられると思いますが、いわゆるマルチタスクというやつは、人間にとってあまり良いものではない、と言われています。
単に作業効率が悪くなるばかりでなく、「脳がダメージを受ける」という研究結果もあったりして、なかなかシリアスなお話。
それらが指し示す結論としては、その都度一つ一つの物事に集中して取り組むべし、ということになるようです。
でも、本当にすべてが非効率で悪影響を及ぼすものなのでしょうか?
この記事では、私なりに「でもこれはOKなのではないか」というものについて、主張していこうと思います。
実際に私も実践しており、結構捗っているので、興味を持った方はぜひ生活に取り入れてみてください。
ポイントは「聴く系コンテンツ」
まず、すべての基本となるのは「聴く系コンテンツ」というくくり方です。
これは私がこの記事を書くにあたって決めた言葉で、聴覚情報オンリー、ないしそれが主軸となっているコンテンツ全般を指します。
音楽やラジオが代表的ですが、例えばYouTubeの動画でも、画面を観ている必要があまりなく、聴いていれば内容のほとんどを理解することができるようなものなら、このくくりに入ります。
この聴く系コンテンツは、他の作業と非常に相性が良いんですよね。
そもそも聴覚情報というものにそういう性質があるのか、あるいは歴史的経緯なのかはわかりませんが、本質的に「日常の隙間にするっと滑り込んでくる」ような存在の仕方をしている。
なので、「聴きながら○○」というのが実に自然にかたちになるのです。
それによって脳がダメージを負うかどうかは、残念ながら私にはわからないのですが、作業効率ということで言うならば、次のことが断言できます。
「組み合わせる作業をきちんと選べば、効率はまったく落ちない」
これは人によりけりな部分もあるのかもしれませんが、少なくとも私は、幾つかの物事において、実際にやってみた結果として、それを実感している次第。
では、どのような組み合わせが良くて、どのような組み合わせがそうではないのか?
具体的にご紹介していきます。
オススメの組み合わせ
調べ物
広義の調べ物は、聴く系コンテンツとの共存がかなり容易であるというのが、私の意見です。
調べ物をしている最中というのは、行為としては「忙しい」状態に他ならないわけですが、そのとき思考がどうなっているかというと、結構暇だったりするんですよね。
ある情報を求めて、ネットを徘徊したり、本棚をあれこれ引っ掻き回しているとき、私達の脳は、目の前の情報に対して「これが探しているものか否か」という判断しかしていないんですよ。
それは単純なイエス・ノーに過ぎないので、実のところ作業時間のほとんどは、リソースの空いた状態になっているのです。
そこに聴く系コンテンツを流し込むと、かなりすんなりと馴染むんですよね。
しかも、調べ物自体は大部分が単純な手作業なので、そういった新しい情報が耳から入ってきたとしても、そのことによって速度が落ちることはほぼない。
第一印象としては、頭脳労働の最中にべつの情報を頭に入れるなんて……という感じかもしれませんが、実態としてはそうでもない、という、盲点のライフハックだと思います。
家事
これは鉄板な気がするのですが、意外と実践していない人も多いように観察されます。
家事は家族の人数に応じて大変になっていくもので、特に小さな子供のいる人のそれは肉体的にも精神的にも負荷の高いもの。
そのイメージからか、家事の最中にさらに何かをインプットしようという考えになりにくいみたいなんですよね。
ですが私としては、ワイヤレスイヤホンでも買って、もうずっと耳にはめっぱなしで活動しているくらいがよいのではないかと思うわけです。
好きな音楽をさらっと聴き流すのもいいですし、英語のリスリング教材をじっくり聴き込むの悪くないですね。
あるいはYouTubeの動画を音声だけ聴いているのも、面白いものです。
家事をそういう「情報を食べる時間」にすることで、生活の質は格段に向上するのではないでしょうか。
運動
運動と聴く系コンテンツの相性は抜群です。
これは私だけではないと思うのですが、運動を続けていく上で最もネックだなと感じるのは、それ自体の大変さではなく、「貴重な時間を運動に割いてしまうことで、そのぶん他のことができなくなること」なんですよね。
例えばウォーキングを例に取ってみると、科学的に推奨されている6,000歩とか8,000歩を歩くためには、どう見積もっても1時間は確保する必要があります。
可処分時間の中からそれだけの時間を引くと、残りはかなり少なくなってしまう――そういう計算に、運動への意欲を妨げられている人も多いのではないでしょうか。
そこで、聴く系コンテンツの出番となります。
運動をしているあいだ、常に何かを聴き続けていることで、その時間をそっくり「それを聴くために割いた時間」とすることができます。
一種の逆転現象が起き、むしろ「それを聴くついでに体を動かした」という感じになり、ただ運動をするだけのときに感じていた感覚はすっかりなくなってしまうのです。
ついでに言うと、家での運動に限っては、聴くだけでなく観るほうのコンテンツも同時に消化できることが多いので、オススメですね。
私は個人的に、アニメを消化したり、YouTubeの動画をチェックしたりしながら、筋トレをすることにハマっています。
自分の中では、その時間は「動画コンテンツを消化している時間」であり、体を動かしているのはあくまでも「ついで」。
インドア趣味を行いながら、ついでに体も鍛えられてしまうのですから、こんな都合の良いものもそうそうないと言えるでしょう。
オススメしない組み合わせ
逆に、聴く系コンテンツと同時に行うことをオススメしないものもあります。
個別具体的に語るよりは、抽象的に語るほうが本質を捉えていると思うので、そのようにさせていただきますが――原則として、アウトプット全般は、聴く系コンテンツと同時にやらないほうがよいのではないかと、私は考えています。
特に、言葉が飛び交うコンテンツは、熟考がそっちの言葉に引っ張られてごちゃごちゃになってしまい、集中力にかなりのケチがつくことになります。
私は文章を書くことが多いのですが、その作業中には、普段楽しんでいるYouTubeの聴く系コンテンツは常に封印していますね。
自分の中から出てこようとしている言葉が、耳から入ってくる言葉にかき消されてしまうからです。
人によっては、音楽を聴きながらアウトプットをしている人もいます。
そういう人達に言わせれば、音楽はむしろ集中力を高めてくれる、という風になるのでしょうが、科学的にはどうもそうではないみたいですね。
音楽も音楽なりに、邪魔をしているというのが実際のところであるようです。
なのになぜ音楽を聴きながら作業をする人が多いのかといえば、恐らく「音楽よりも邪魔な各種の音を排除する」効果に期待しているからでしょう。
そこで私が音楽を聴く代わりにオススメしたいのが、シンプルに耳栓をすること。
あるいは、ノイズキャンセリング機能付きのヘッドホンかイヤホンをして、心理的に良い効果をもたらすと言われている自然音の動画を、YouTubeで見つけてきて再生することです。
特に後者は、周囲に他人がいてもそれを気にせずに作業に没頭することができるので、非常に効果的ですね。初期投資は必要ですが……。
おわりに
以上、「おすすめのマルチタスク」というテーマで、私なりの意見を書かせていただきました。
ある程度忙しくしていると、ある行動の最中に自分の脳が空いている感覚を「もったいない」と感じるようになってきます。
そこに何かを詰め込めば、一日24時間という決められた枠を、実質的に越えることもできるのではないかと。
ですが、その「何か」の選択には慎重になるべきでしょう。
何しろ下手をすると、待っているのは脳へのダメージと作業効率の低下です。相当慎重になっても、やりすぎということはありません。
例えばそんな忙しい人のために、この記事では「聴く系コンテンツ」の利用法を説明してみた次第。
あなたのお役に立てそうなのであれば幸いです。