今日は、その名の通りの漫画『レズ風俗アンソロジー』1~2巻の感想を書いてみたいと思います。
実は第1巻については、以前、他の漫画と一緒に簡単な感想を書いたことがあるんですよね。
で、先日、第2巻である『レズ風俗アンソロジー リピーター』が発売されまして。
早速買って読んでみたところ、とても気に入ったので、改めて独立した感想記事を書いてみたいと思ったのです。
これはしっかり布教しないと、という気持ちにさせられたわけですね。
この作品タイトルはGoogleアドセンスのポリシー的にどうなんだろう、というドキドキもあるのですが、ともあれ熱を込めてご紹介していきたいです。
心も体も大切にする作品群
まず何をさておいても強調したいのは、本書が肉欲的なところだけでなく、心の部分も非常に大切にするお話ばかりだということですね。
少々大袈裟な表現をするなら、ある意味では「救い」についてのアンソロジーであるとも言えるのではないか、というくらい。
そのために用意されている悩みのたぐいは、決してめちゃめちゃ深刻なものではなく、見方によっては他愛がないと感じるかもしれないのですが、私に言わせれば、その塩梅がまたちょうど良いんですよ。
そういう「救い」を、風俗をテーマにした作品でやるところが、ニクいんですよね。
まあ言うまでもなく、風俗といったら、体だけの関係の代名詞みたいなものです。
ノンケの風俗だろうがレズ風俗だろうが、本質はお金で体を売る商売なわけで、そこを捻じ曲げてしまったら、舞台設定の根幹が揺らいでしまいかねません。
なので本書の収録作のほとんどは、その「体だけの関係」という割り切りを認めつつ、それでもなお生まれる救いはあるよ、という語り口を選んでいます。
そしてそれが、どの作品もおおむね上手く行っているのです。
「何か」を抱えているのは、客の側だったり、キャスト(嬢)の側だったりするのですが、いずれのケースにおいても、語らいとともに体を重ねることで、それが解きほぐされていき、希望のある結末を迎えます。
その流れが、少なくとも私にはとても心地よく、良い感じに刺さりましたね。
みんな良い人
テーマがレズ風俗で、心の部分を大切にするお話ということはつまり、女性心理をある程度深堀りしていく、ということです。
その点に関して、「女性の嫌な部分、ドロドロした部分」を前面に出してくるのではないか、という風に警戒する人もいるかもしれません。
しかし、本書においては、そのような描写はほぼゼロです。
ダークサイドを掘っていくことなしに、ささやかなつらさを、温かく見つめるような視点で描いていく方針が採られています。
これはまあ言ってしまえば、本書のレーベルが「百合姫コミックス」で、男性読者を意識しているから、ではあるでしょう。
これがいわゆる女性向けであったなら、間違いなく心の奥底のヘドロのようなものがクローズアップされていたはずです(やや偏見あり)。
その意味で言うと、物足りなさを感じる人もいるのかもしれません。甘っちょろさのようなものを見出す向きもあるかも?
でもそういうのを全部ひっくるめて、女性読者が入りにくい作りになっているかというと、そうでもないと思います。いや私は男性なので、これは想像ですが。
レズをテーマにしたお話の場合、少なくとも作品内レベルにおいては、キャラクターが男性に都合よく振る舞う場面が不要になります。
その意味で、本書の内容は女性でも比較的とっつきやすいものになっているのではないかと思うんですよね。
そしてそこにはたぶん、女性漫画家が多く参加していることも大きく作用しているのではないかと推察されます。
女性漫画家のえっち描写が好き
私は百合好きなオタクなのですが、それに限らず普通の「男性向け」であっても、基本的に女性漫画家の描くえっちい描写が大好きだったりします。
思春期の男子中高生的に、「女性がこのえっちい裸体を描いている」ということ自体に興奮している部分もあるのですが、それ以上に、女性漫画家の作るお話の流れと、女体のラインが、私好みであることがとても多いんですよ。
理屈で考えれば、男性の欲望は男性クリエイターのほうが理解できるはずだし、より高い純度で叶えることもできるはずなのですが、私に関してはそうではない。
この辺り、自分はある面で女性的なのかな? と思ったりするところでもあります。
先日も裸足フェチ関係の記事で、同じことを述べたばかりですね。
自分の中では、結構まじめなテーマだったりします。
部分的にとはいえ、「女性の選ぶ表現」のほうに男性としての欲望の回路がシンパシーを感じるのは、いったいどういう仕組みなんだろうか、と。
こういうところが私と同じだという男性にとっては、本書はまさにドンピシャを突いてくれるものになるはずです。
女性漫画家の良いところが、これでもかというくらいにじみ出ていますよ。
絵のレベルと過激度
絵のレベルと、えっちの過激度についても触れておきましょう。
心がどうの、救いがどうのと言っても、あくまでこれはレズ風俗アンソロジー。クオリティの高い絵で、それなりにえっちいものを読むことができなければ、本懐は遂げられません。
まず、絵のレベルについては、申し分なしです。
もちろん好みというものがありますから、簡単に「ハズレ無し!」と言い切ることには抵抗がありますが、素人なりに画力というものを考えたとき、とても高いレベルでまとまっていました、というのが感想になります。
個人的に、アンソロジーというものは(失礼ながら)一般論としてイマイチなものの含有率がそれなりにあるものだと思うのですが、本書は粒ぞろい。
数合わせで呼ばれたのだろうな、みたいな漫画家さんは一人もおられませんでした。
そして、えっちの過激度ですが、乳首は描かれているし、行為しているのはハッキリわかるし、喘いでもいるが、濃厚なエロスというよりは「綺麗」という表現が似合う――という感じでしたね。
一般向けの書籍なので、突っ切っていないのは当たり前として、「ゾーニングの限界に挑んだ」という感じでもなく、適度なえっち具合でした。
しかし、「切ないシチュエーションとかが丁寧だと余計興奮する」という私みたいな人種にとっては、そこらの「ヤるだけ」の成人向けコンテンツより、よっぽど刺さるところがあるかもしれません。
ちなみに、これは非常に個人的な性癖なのですが、巻末の作者コメントには結構心躍るものがありました。
レズ風俗みたいなテーマ、そしてそれをもとにしたえっちい描写、にポジティブな見解を示す女性って、何だかときめきませんか?
おわりに
いつもは漫画の感想を記事にする際には、本編中の画像を引用させていただくのですが(私は主に電子書籍で漫画を読むので、画像データとして引用するのは簡単なのです)、今回はやめました。
アンソロジーで特定作家さんを引用してもあまり意味がないし、かといって全員分引用するのも億劫。
また、引用するなら肝心なところを引用してなんぼですが、本書の場合「肝心なところ」はGoogleアドセンス的に100%アウトなので、この意味でもちょっと。
というのがその理由です。
そんなわけですので、具体的にどのような絵柄が揃っているかに興味のある方は、ご自身の目で確かめてみてください。
一定のクオリティがあることは、私が保証いたします。
そして「えっちなお話に触れて、興奮しつつほっこりしたい」人もぜひ。
少なくとも私は、どのお話にも何かしら優しい気持ちが引き出されましたし、それと同時に興奮もできるという素敵な体験をさせていただきました。
そういうのをお求めの方には、本書はぴったりの内容になっていると思います。