今日は、吉富昭仁さんの漫画『しまいずむ』全3巻の感想を書いてみようと思います。
何年も前に完結した作品であり、また作者は私の属するところの裸足フェチ界隈ではとても有名な方なので、今さら紹介することには意味が薄いかもしれないのですが、あえて取り上げさせていただきます。
当記事で引用している画像はすべて、芳文社刊『しまいずむ』からの引用であり、各種権利は作者と出版社に帰属します。
ご了承ください。
あらすじ
西山遥、14歳。その妹の桜、12歳。
遥の親友である友長芳子、14歳。その妹の舞は桜の親友、12歳。
とても仲の良い4人組だが、実は1つ(いや2つ)だけ、ちょっと特別な事柄を相関図に書き加える必要がある。
遥は舞に恋をしており、芳子は桜に恋をしている――つまり、どちらの姉も、親友の妹に恋をしているのである。
そんな気持ちを胸に秘めながらの、のんびりとした日常。
さて今日はどんな出来事が待っているのか――?
裸足と百合の小さな楽園
本作は、淡い恋心を、たまにちょっと変態チックにはみ出させながら日々を送る、2人の女子中学生を軸に展開します。
彼女達はもちろん普通に学校に通っているはずなのですが、本作ではとても珍しいことに、学校の描写は一切登場しません。
すべてが放課後や休日のメインキャラクターだけで完結しており、そしてお話のほとんどは西山家の中で進行することになります。
一見してすぐにわかるのは、裸足描写に対する作者の積極的すぎる姿勢です。
西山家においては、基本フォームは姉の遥が制服裸足、妹の桜は私服裸足。友長姉妹も半々くらいの率で、靴下を履いていない描写がある。
全3巻のあいだ、ページ内に裸足が描かれていないことのほうが少ないのではないかというその徹底ぶりを察するのに、特殊な性癖は必要としないでしょう。
引用元:第1巻P24-25
そして、当たり前のように描かれる女子から女子への恋心。
あまりにも自然なかたちをとっているので、それがマイノリティであるとか、ましてやおかしなことであるというような気持ちが湧いてきません。
本人達は自分達のそれを「変態」と言及したりするのですが、読者のほうが慣れてしまい、「べつにそんなことないよなあ」という風に、彼女らをある意味で追い越してしまう。
そんな描き方が特徴的です。
引用元:第1巻P9
裸足、百合、お互いだけで完結する構成。本作を本作たらしめているのは、この3つの要素であると言えましょう。
姉達は、お互いの妹に恋していることをお互いには打ち明けているのですが、妹達には一切明かしていません。
たまに妹達に対してそれが漏れ出てしまいそうになるのを、何とかごまかしながら仲良くやっています。
その妹達への気持ちも尊いのですが、私が個人的にグッと来たのは、姉達がお互いの存在に妹を重ねそうになる描写ですね。
芳子が「桜ちゃんの足を見ていたらぺろぺろしたくなっちゃったから、代わりに遥の脚をぺろぺろさせて欲しい」と言い出し、それを遥が了承するくだりは、ほんわかした中に良い塩梅の背徳的要素があり、たまらないものがありました。
引用元:第1巻P78-81
後半になると、この2組の姉妹の他に、もう2組、べつの姉妹が登場します。
小川ひろみ・あきら姉妹と、田中サキ・マリ姉妹。
こちらは姉同士、妹同士が好き合っており、西山・友長姉妹より少しずつ歳上という設定。
結果的に全3巻と短かった本作ですが、この新しい2組によって作品世界は間違いなく良い意味で拡張され、見どころのあるものになっていました。
もちろん、彼女達にも裸足要素はたっぷり含有されています。
引用元:第3巻P102-103
日常ものとして上手く膨らんでいたと思うのですが、どうして3巻で終わってしまったのでしょうね。
人気がなくて打ち切られたのか、それとも彼女達についてこれ以上描くのは蛇足だと判断したのか……。
わかりませんが、もうちょっとこの作品に浸っていたかったな、というのが、読後の素直な感想でした。
あと、100%無理なのはわかっていますが、裸足に理解のあるスタッフによるアニメ化とかしてくれたらなあ……みたいな。
吉富昭仁という漫画家
作者の吉富昭仁さんは、長いキャリアの中で様々なタイプの作品を世に送り出してきた方で、必ずしもこういう、裸足と百合を固めたみたいな作品ばかりというわけではありません。
私が吉富さんのお名前を初めて知ったのは、かつて(深夜アニメが今のような形態をとるようになった最初期)アニメ化された『EAT-MAN』です。
筋肉少女帯によるOP『小さな恋のメロディ』が名曲なので、それをきっかけに作品を知っているという方もたくさんおられるのではないでしょうか。
およそ当記事の主役である『しまいずむ』とはかけ離れた作風で、こちらもまた、まったくべつの種類の読者を多数獲得しています。
そのような遍歴を持った方なので、ある作品を指して「これがこの人の本質だ」と決めつけるのは無理筋であると言わざるを得ません。
私は吉富さんのインタビュー等を虱潰しに読んでいるわけではないので、多彩な作風についてご本人がどのように語っておられるのかは存じ上げないのですが、いずれの作品においても、100%自分の嗜好だけで描いたわけでも、100%世間のニーズだけで描いたわけでもないものと想像することはできます。
そういうのがプロの仕事でしょうから。
ただ、一つだけ、はっきり言えることがあります。
それは、本作(そして他の幾つかの作品)に見られる裸足要素については、間違いなく吉富さんの嗜好の中から出てきたものであろうということです。
そういう個人的な執着がなければ、こういう細かくフェチいものを作ることは不可能だと思いますし、第一、世間のニーズに答えるかたちでここまで裸足フェチ要素をねじ込む機会なんて、まず無いと思うんですよ。
そういう理屈から、私は吉富さんを完全に「同好の士」として見ている次第。
このような嗜好を備えたクリエイターさんがいるというのは、とても素晴らしいことであり、貴重なことでもあります。
まだまだこの方向で活躍していただきたいですし、後に続くクリエイターさんもどんどん生まれていただきたいと、心の底から願うところですね。
各論1:キャラクター
さて、話を『しまいずむ』に戻して、各論にいきましょう。
まずキャラクターですが、とにかく本作の女の子達には嫌味が一切なく、読んでいて極めて消化しやすかったです。
あまりに引っかかるところがなさすぎて、もしかしたらそれがドラマ性の欠如に繋がり、3巻以上のお話を展開させられなくなったのかもしれません。
その辺りは何とも言えないのですが、全員の好感度が高かったのは確かです。
結果的に、小学生・中学生・高校生・大学生が2人ずつ登場する作品になったわけですが、先述したように学校生活というものが描かれないので、年齢による関係性の差というものはあまり観念されなかったように思います。
特に、高校生組の一人であるあきらが、中学生である遥と芳子に敬語だったりしたあたりで、上下関係的なものは余計曖昧になった感じですね。
あくまでも「姉妹が4組」というくくりだけが、確固たるものとしてあったかたちです。
全員にちゃんと個性があって、短い作品ながらもきちんと全員に見せ場が用意されていました。
メインである遥と芳子の掛け合いがちゃんとしており、絡みの面白さも確かなものであったと言えます。
あえて指摘するなら、小学生の2人が「幼いという記号」だけで攻めていたところがあり、少し顔が見えづらかったかなというのはありましたが、まあ許容範囲でしょう。
各論2:絵
すっきりした線で、どちらかと言えば淡白なテイストを指向した絵柄です。
親しみやすさがあり、(こういうフェチい作品では特に重要な)人体の確かさやなめらかさも、申し分ありません。
いちばん肝心な(?)裸足の描き方も、なかなか素晴らしいです。力の入れ具合の点で、顔にまったく引けを取っていないのは、流石と言うべきところでしょう。
ただ個人的な好みとしては、もう少しだけ「濃い」ほうがいいかなあ、というのが正直な意見だったりします。
これは純然たるスタイルの問題なので、長所とか短所とかいう話ではまったくないんですけどね……。
各論3:ストーリー
すべて1話完結で、いわゆる「日常」の一コマを丹念に描いたものとなっています。
身も蓋もない言い方をするならば、「いかに相手のことが好きなのか」について、ひたすら小さな振る舞いを積み重ねたもの、と言うことができるでしょう。
良くも悪くも、それ以外のことを深く追求しようとはしていません。
人によっては、こういうものを「ストーリー」とは呼びたくないと思うのかもしれませんが、私としては、これも立派なストーリーのうちだと考えます。
まあ確かに、全3巻の中で、進展したものはほとんどありません。
唯一そうだったと言えるのは、あきらとマリのペアが、最初はお互いに片思いの状態だったのに、無事に気持ちを確かめ合って付き合うことになり、最終的には大学生の姉カップルを追い越して先まで進んでいたということくらいでしょうか。
メインである西山姉妹と友長姉妹について、関係を何ら発展させなかったのは、第一に「一般作で小学生を相手に関係を進めるわけにはいかない」という問題があったのではないかと思います。
その辺りを想像すると、正直とても残念な気持ちになるのですが、でも最終話を見た後には、まあこんなふうに終わるのもアリなのかな、と感じる自分もまた同時に存在しました。
それはそれで、可愛らしさを表現していたと評することができるかな、と。
いや、JCに足を舐められて感じるJSとかも拝んでみたかったですけどね。そりゃあもう。
おわりに
以上、簡単ながら、作品の感想を述べさせていただきました。
それなりにいろいろなことを書いてきましたが、やはり私の結論としましては、裸足フェチの人にこそしっかり追いかけていただきたい作品だな、という感じです。
裸足フェチそのものがテーマになっているわけではないのですが、先述したように、作者の吉富さんの裸足に対する愛着が、極めて多くのページにこれでもかと焼き付いている。
それを確かめるためだけにでも、作品を手に取る価値はあるのではないかと思いました。
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