2019年夏シーズンが終わり、たくさんのアニメが最終回を迎えました。
今日はそれらのうち、私が最後まで視聴することのできた作品の感想を、ぎゅっと濃縮したかたちで書いていきたいと思います。
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2019年春アニメ
この世の果てで恋を唄う少女YU-NO
長年の原作信者として、私が毎回ハラハラしながら追いかけていた作品。
ゲームデザイン的、ボリューム的に、映像化することに明らかに向いていない原作を、果たしてどのように映像化していくのか、ずっと見守っていたのですが――。
結論としては、ちょっと残念なことになったな、というところです。
意欲は見られたんですよ。
圧縮しなければいけないところをどう圧縮するか。原作で説明不足だったところにどのような説明を足していくか。
そういったことで、様々な試みを確認することはできました。
でも、肝心の「映像作品としての魅力」に欠けていたんですよね。
そのため、せっかくの工夫も「まあ、段取りは丁寧だね」というだけに留まってしまった感があり、実を結ばなかったのです。
本作については後日、独立した記事を書く予定です。
その記事の中で、原作信者から見た「改変の意味」や「緩急の価値」について、私なりの意見を詳しく述べたいと思っています。
2019年夏アニメ
手品先輩
笑いの作り方が基本的に1種類しかない作品で、それに飽きたらそれっきりだなと思って視聴を続けていたのですが、15分アニメという形態のためか、何となく完走することができてしまいました。
先輩の無自覚な色気に、上手く引っ張られたような気がします。
ただのポンコツのような、そうでもないような、不思議な人物像も、深読みすればするほど底知れない感じがして、独特の味に繋がっていたのではないかなと。
尺というのは大きな要素だなと、改めて思いましたね。30分アニメなら絶対に上手く成立しないものも、15分なら何とかなる。
TVアニメは言うまでもなくTVのプログラムなわけですから、尺にガチガチに縛られてます。
普段それを当たり前のこととして受け入れているわけですが、これから先、配信オンリーの作品が増えていく可能性はおおいにあります。
そうなった暁には、各作品が「自身に最適な尺」を細かく決めることができるようになるわけで、それだけでも面白くなる確率はかなり高まりますよね。
そんな時代の到来が楽しみです……って、話が脱線してしまいましたが。
ソウナンですか?
サバイバルの知識がガチで、半分くらいはそれを勉強するようなつもりで観ていた気がします。
少なくとも15分1クールという枠内において、その内容は十分すぎるほど濃密であり、毎回しっかりと楽しませてもらいました。
4人の少女は、サバイバルに長けたほまれと、そうでない3人とに分けられるわけですが、後者が後味の悪い足の引っ張り方をしないドラマ作りをしていたのが、私にはとても安心できる要素でした。
この手の物語だと、知識の無いキャラクターがわがままを言い出して険悪な雰囲気を作ったりするのが王道的だと思うのですが、あまり好きではないんですよね。
なのでそういうことをしなかった本作は、とてもありがたい存在でした。
ダンベル何キロ持てる?
終始楽しかった作品。多くのオタクを筋トレに目覚めさせた功績は大きいと思います。
上記の『ソウナンですか?』にも言えることなのですが、最近はこういう「女の子がガチなことをやる」アニメが昔より多くなった印象ですね。
英語圏にはCGDCT(Cute Girls Doing Cute Things)というアニメのくくり方があるのですが、サバイバルも筋トレもCute Thingsとはだいぶ違います。
こういった作品を総称する、何らかの新しい言葉があると便利だなと思うのですが、どんな風に呼ぶのがいいでしょうね?
また、本作の大仕事の1つとして、声優のファイルーズあいさんを発掘したことが挙げられると思います。
聞いた話によれば、ファイルーズさんは本作が初アフレコだったとか。私は演技については完全な素人なので確かなことは言えませんが、にわかには信じられない芸達者ぶりでした。
声優業界は「上手ければ売れる」という単純なところではないと思いますが、彼女がこれからどんどん活躍していくことには期待したいですね。
魔王様、リトライ!
私は夏のあいだずっと、本作をいつ切ろういつ切ろうと思いながら過ごしていました。
こう言っては失礼ですが、面白いかと言われると、そういうわけでもなかったので。
ただ、同時に切るための決定的な理由もなかったんですよね。
非常にサクサク観ることができてしまうので、消化することにストレスが皆無だったんですよ。
そうこうしているうちに、ほとんど自動的に最終話まで視聴が終わってしまいました。
キャラクター相関としては、主人公の九内に、他のキャラクター達が何らかのかたちで惹かれているという、ある意味ではハーレム属性な感じ。
ヌルいと言えばそうなのですが、独特の変なノリがそれを上手く加工しているところがあって……うーん、上手く言えないですが、不思議な作品だったというのが感想です。
通奏低音としての「憎めない適当さ」に、まんまとやられました。
うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。
本作のコンセプトは「ラティナが可愛い」という一点です。
その一点をあの手この手で見せていくのが、物語の役目だったと思うのですが……後半、それがちょっと弱くなっていたかな、というのが正直なところです。
ラティナがとても賢い少女で、順当に成長していったせいもあるのでしょうか。
いや、成長することを悪いことみたいに言うのも抵抗あるのですが、本作の場合、彼女の成長にネタのほうが追いついていなかった、みたいな現象が起きていたように思うんですよね。
あと、これは個人的な好みの問題でしかないかもしれないのですが、全キャラクターの中で、主人公のデイルがいちばん魅力がなかった気がして、そこにもちょっと、作品としての弱さを感じたというのがあります。
ラティナにとっては最も大切な存在なわけですが、戦闘能力が高いという以外に見どころが特になくて、ワンパターンの親バカ台詞をただ繰り返しているだけに見えたんですよ。
あとEDは違うものにしたほうが良かったと思います。
まちカドまぞく
2019年夏アニメ最大のダークホースが、本作でしょう。
台詞の面白さと、間の確かさで、ものすごく濃密なコメディを作り上げることに成功していました。
しかも意外と(失礼)設定も考えられていて、そちらの意味でも続きが気になる終わり方。
しっかり売れて、2期に繋がって欲しい作品ナンバーワンです。
また、「シャミ子が悪いんだよ」というネットミームを生み出したのも無視できないところですね。
作品の外側で生まれたものではあるのですが、この架空台詞が広まった原因には、間違いなく本編中のシャミ子と桃の関係性の魅力が土台としてあります。
それくらい、よく作られていたわけです。
最後のナレーション(というかヨシュア)の言葉で、不覚にも泣きそうになりました。
話数が進むにつれて尻上がりに面白くなっていく、素晴らしい作品だったと思います。
女子高生の無駄づかい
これもダークホースといえる作品だったと思います。
やはり間がとても正しく作られており、コメディとして合格点。
キャラクターの個性も抜きん出ており、最後まで飽きさせることがありませんでした。
改めて言うことではないとは思いますが、あだ名の力は大きかったと思います。
これがあるか無いかで、作品の見晴らしはだいぶ違っていたはず。
EDクレジットの本名のところだけを読んでみると、その感じがわかります。普通に全員が全員本名呼びし合う仲だったら、面白味は数段落ちていたことでしょう。
ここはアイディア勝ちでしたね。もちろん、そのアイディアを活かす、効果的な掛け合いがあったからこそなのですが。
タイトルに「無駄づかい」とありますが、これはとんでもない謙遜で、女子高生という存在を本当に魅力的に扱っていたと思います。
ちょっとした空気感が、ふいに激しくリアリティを醸し出したりしていて、油断のならない作品でもありました。
通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?
一発のネタでずっと引っ張るタイプの作品で、出落ちみたいなところはあったように思います。
1クールの半分もいかないうちに、もう作品の手の内はだいたいわかってしまい、実際それ以上のものを見せてくれることはありませんでした。
その意味では、どんどん尻すぼみしていく、悲しい内容だったと言えます。
ただ、「何も考えずに何となく観るには最適」という捉え方もあり、そういう需要は満たしていたと言えるのかもしれません。
実際、私が本作を最後まで観てしまったのも、視聴することに何ひとつストレスが生じないことが、半ば約束されているからでした。
濃厚な作品ばかりではなく、こういったスカスカな(とまで言うとアレですが)作品もそれなりに必要なのです
そういう意味では、無駄ではなかったかなというところです。
可愛ければ変態でも好きになってくれますか?
変態な女の子達に囲まれて、嬉しいんだかしんどいんだかわからない関わりを深めていくという作品でしたが、その字面の軽薄さに反して、テンポ等はしっかり作られており、意外と飽きがこなかった、というのが率直な感想です。
終わってみれば「あれ、12話も使って何をやっていたんだっけ?」となるタイプのお話ではあるのですが、その瞬間その瞬間は悪くなかった。
結局、大事なのはそういうところですからね。
ただ個人的な願望として、この内容で行くならもう少し映像的に過激でも良かったんじゃないかな、というのはあります。
変態を前面に出している割に、作風は割と健全だったんですよね。
その辺り、本当に「変態的に」攻めてくれたら嬉しかったのですが……まあ、たぶんそれをやると原作破壊になってしまうところだったのでしょう。
総評
私の現在の心境を反映するかたちで、コメディを多めにチョイスしていたのですが、良いものがいくつかあり、それなりに収穫のあるシーズンだったように思います。
まったく期待していなかったものが、不意打ちのように輝き出すのを見るのは、何度経験しても嬉しいことですね。
それと同時に、面白さというものは事前の情報では絶対に読めないものなのだというのを、改めて感じた次第です。
その一方で、YU-NOは残念でした……。
もともと期待をまったくしていなかった原作ファンにしてみれば「知ってた」というところなのでしょうが、私はそれなりに期待をしていたんですよね。
それだけに、もうちょっと盛り上がるものになっていたら、という想いが拭えません。
おわりに
これを書いている現在、すでに秋アニメは始まっており、それを消化するのに忙しくなっています。
観たものをろくに振り返る暇もなく、次から次へと新しい作品が流れていくのは、リッチなことなのかもしれませんが、もうちょっと余裕が欲しいな、と思うこともありますね。
この供給過多の状況は、いつまで続くのでしょうか?
アニメ業界が何とか保ってくれることを祈るばかりです。
あなたにとっての夏アニメはどんなものでしたか?
秋アニメが充実したものになることを、お互いに祈っておきましょうか。
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