今日は、初めて司法書士試験を受験し不合格だった人が、翌年以降に予備校の中上級講座を受講する必要があるかについて、私なりの意見を書いてみようと思います。
自助努力のスケジュールを買う
まず、中上級者向けの講座の本質について語っておきますと、これらの講座は基本的には、その内容で受講生を導いてくれるもの、というのとは少し違います。
これは私個人の意見ではなく、私がこれまでに視聴してきたガイダンス動画において、予備校の講師の方々が実際に口にしてきたことです。
第一に、勉強全体のうち、予備校がサポートできる割合について。
ある講師の意見によれば、中上級者向けの講座は、勉強全体の8割が自助努力、残り2割を講座の内容がサポートする、くらいの割合であるとのことでした。
初学者向けの講座でも、自助努力が6割ほどと言っておられましたから、それとの比較で考えれば当たり前の数字であると言えるかもしれません。
第二に、中上級者向け講座の場合、それを買うということのほとんどが、実質的には「スケジュールを買う」ということなのだというのを、上記とはべつの講師が過去に言っておりました。
これも、講義の内容がその本質なのではない、と言う意味では、第一の項目と同じですね。
自分1人で勉強していると、元々の予定がどんどん遅れていき、年内にすべての教科を回すことができないまま、アウトプットに軸足を移していくべき翌年に突入してしまうということがおおいにあり得る。
そういうことを回避するために、講座を利用するのだ――というのが、その講師の主張でした。
資格試験の講座を受講するというと、難しい内容を噛み砕いて説明してもらうとか、良質なテキストを手に入れるとか、そういうことを想像しますよね。
でも、少なくとも中上級者向けの講座に関して言えば、そのためにお金を払うのではない、というのが、半ば公式の見解ということになります。
必要な人とそうでない人
上記の2つから導き出せるのは、次のようなことです。
「自分できちんとスケジュールを立てて、その通りに実行することができ、かつ適切な教材を手元に揃えているのであれば、中上級者向け講座の受講する必要は特にない」
予備校の商売の邪魔をするつもりは決してないのですが、講師の方々の意見を参考にするなら、そういうことになりますよね。
逆に言うと、自分1人で勉強しているとまず間違いなくスケジュールに遅れが出てしまうという人。
あるいは、現在手元にある教材や、市販の教材に対して、あまり信頼がおけないという人。
こういった人達にとっては、高いお金を払ってでも中上級者向けの講座を受ける価値はあるのだろうと思います。
そこら辺の簡単な資格ならともかく、司法書士ともなれば、そういうちょっとした計画の崩れや不信感が、致命的な結果に繋がりかねないものですからね。
ここでポイントになるのは、講座を受講するかどうかは、前年度の自分の成績とは直接関係がないということでしょう。
あまり深く考えずに判断すると、前年度の成績が良かった場合は独学で、悪かった場合は講座を利用する、という風になりがちですが、これまで書いてきたように、判断基準はそこではないわけです。
一言で言ってしまえば、講座を受講するかしないかを決めるのは、私達の生活環境と性格、ということになるでしょう。
市販テキストの充実がそれを加速する
これまで書いてきたことは、毎年いっそう信憑性のあるものになっています。
それを支えているのが、市販のテキストの充実です。
かつてはテキストといえば、予備校の講座に付属してくるものが質の面でも適切で、対して市販のテキストはいまいち信用度が薄い、という空気がありました。
でも今は、だいぶ事情が異なります。有名な講師が書いたテキストが数多く市販され、しかもそれらのテキストは予備校の講座でも使用されているのです。
品質という点で、市販のテキストを避ける理由はもはやまったくないと言えるでしょう。
業界最大手のLECは、ほんの少し前まで、独学する人のためのテキストを一切販売していませんでした。
ところがやはり時代の流れには逆らえなかったのか、まずは初学者向けに使っている『ブレークスルーテキスト』を市販するようになり、そして今では、看板講師である根本正次先生の名前を冠した、独学者のためのオリジナルテキストを市販するに至っています。
そういう流れなのです。
この状況はつまり、こと教材に関して言えば、中上級者がわざわざ予備校に通わなければならない理由は既に存在しない、ということを意味するのだと思います。
個人的にはあまり好きなテキストではないのですが、この流れを作ったのは間違いなく、山本浩司先生のオートマシリーズでしょう。
予備校は今や、少なくとも中上級者向けの講座に関して言えば、整理整頓されたわかりやすい情報を噛み砕いて伝えて欲しいだけなら、特に用のないものになっているのです。
ただし注意事項が1つ
……と、ここまでほとんど「(中上級者に対する)予備校不要論」のようなものを展開してきたわけですが、ここで1つ、注意していただきたいことがあります。
当記事を書いている私は、合格者でもなければ、ギリギリで合格できなかった成績優秀者でもなく、落ちこぼれの部類に属するベテラン受験生であるということです。
私はいちばん最初に受験をするときに、LECの15ヶ月コースを受講しました。
それで悲惨な成績をとって不合格になって、次の年からは独学で受験を続行することに決めました。
それから数年の時を経て、今でもなお実りのない受験生をずっと続けている次第です。
この状況を見て、「もしかしたら、ちゃんと中上級者向けの講座をとっていたら、アンタ違う結果になったんじゃないの?」と考える人がいても、おかしくないでしょう。
その意味では、当記事はやや信頼性に欠けるものであると判断されても仕方のないところなのです。
その辺りを考慮して、記事の冒頭で講師の方々の言葉を引用し、権威性を持たせようとしたわけですが……。
「基準点も取れないような人間に、予備校の判断なんかできるわけないよ」と言われたら、私としては反論のしようがありません。
というわけで、当記事に書かれた内容をどのように噛み締めるかは、すべてあなたにお任せしようと思います。
あくまでも自己責任の範囲で、うまく活用していただけると嬉しいですね。
おわりに
今さら言うことではないと思いますが、司法書士試験は難関試験です。
そして難関試験であればあるほど、最初の計画建てを間違えると、ゴールから遥かに離れた場所に辿り着いてしまい、そこからの修正は難しいものとなります。
具体的には、年内の学習を間違えたらかなりヤバイ、そして3月までの学習を間違えたら完全にアウト、というところでしょう。
私は独学を選んでいるわけですが、より安全な道を進むために、経済的に余裕のある人は一応講座を受講しておくというのが、賢い選択であるとも思います。
そこで私がオススメするのは、大手ならLEC、新興勢力なら資格スクエアです。
あなたの現在の状況に応じて、このどちらかを選ぶのが良いのではないかと思います。


いずれにせよ、司法書士試験は過酷な椅子取りゲーム。
どんな勉強をしようが、ほとんどの人が受からないわけで、自分と勉強とが奇跡的に噛み合わない限り、成功を掴むことはできないでしょう。
その奇跡を来年起こせることを、お互いに期待したいところですね。
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