天国的底辺

二次元、創作、裸足、その他諸々についての思索で構成されたブログ

野球嫁、制服裸足で奮闘す:漫画『帷子しずくはリードしたい!』感想

 今日は、須賀達郎さんの漫画『帷子しずくはリードしたい!』の感想を書いてみようと思います。

 単発で紹介する作品としては、初めての4コマ漫画となります。

 4コマ漫画には4コマ漫画なりの作品の捉え方というものがあると思いますので、その辺りに気を遣いつつ、しかし素直に感じたところを述べていきたいと思います。

 

 なお、当記事で使用している画像は、アース・スター刊『帷子しずくはリードしたい!』からの引用であり、すべての権利は作者と出版社に帰属します。

 ご了承ください。

 

 

 

あらすじ

 帷子しずくは20歳の新婚妻。

 夫はプロ野球チーム、東京スピードワゴンズに所属する若手ピッチャー、帷子ユウリ、22歳。

 恵まれた体格と資質を持ちながらも、繊細すぎるメンタルゆえか、なかなか大成しないユウリを、しずくはある時は陰ながら、またある時は鬼コーチのごとく支えている。

 果たしてユウリは、そんなしずくの想いに応えて大活躍することができるのか?

 

イチャラブが基本だが……

 本作の軸となっているのは、新婚夫婦のラブラブな関係です。

 2人は幼馴染であり、ユウリはそれこそ幼少の頃から野球三昧、そしてしずくはずっとそれをサポートしてきました。

 田舎の弱小校出身の自分がプロになれたのは、しずくのそのしごきのおかげだったと、ユウリは回想しています。

 

 お互い以外にはあり得ない、という物凄くピュアな関係。

 甘ったるすぎると思った方には合わないかと思いますが、こういうのが好きな向きにはたまらないものがあります。

 自分ははっきりと後者なので、2人の微笑ましい描写に心の底から乗っかることができました。

 

 しかし、野球そっちのけで夫婦のイチャイチャを描いているかというと、そういうわけでもありません。

 作者が野球を好きなのがはっきりとわかる程度には、野球をしっかり絡めてきますし、特に成績面の描写がリアルなのです。

 ユウリの前年の成績は6勝2敗、防御率3.53。今年の年俸は1,600万円。

 22歳という年齢と合わせて考えるに、なかなか渋い数字を設定したものだと感心しました。

 

 そういうリアリティの上に、萌え4コマ漫画を構築しているので、ちょっと不思議なテイストが醸し出されているんですよね。

 これはたぶん、それなりに野球に詳しい読者にしか感じられないことなのでしょうが……間違いなく本作の味であると思います。

 

謎の制服裸足

 そんな作品なのですが、では私が野球絡みで本作を手に取ったのかと言いますと、そうではなかったりします。

 実は某所で、しずくの普段の恰好が制服裸足であることを知ったからなんですね。

 ……いや、彼女はもう女子高生ではないので、厳密に言えば「制服」というのは間違っているでしょうか。

 でも家では明らかにセーラー服みたいなものを着ていて、足元は常に裸足なのです。

 

制服裸足のしずく

引用元:第7話

 

  このデザインに惹かれるかたちで購入した、というのが実際のところです。

 同好の士にしかご理解いただけないことかもしれませんが、こういうのが強烈な購入動機になり得るんですよね。

 その部分についての感想ですが、「制服裸足可愛い! でも裸足のアップがなかったのは残念!」というところでしょうか。

 めちゃくちゃ美味しいかというと、そこまでではないかもしれませんが、しずくの可愛らしさをおおいに引き立てているのは確かなので、その意味では一見の価値ありなのではないかと思います。

 

各論

ストーリー

 1話完結で、各話にテーマを設定し、それを着実にこなしていくスタンダードなスタイルです。

 大抵の場合、軸となるのはユウリのメンタル面の弱さからくる問題。それを夫婦で乗り越えていく過程が、コメディ色豊かに描かれていきます。

 1巻で終わってしまった作品ですが、その中できちんとユウリの成長物語が構成されていたのは、良い点ではないでしょうか。

 

 先述したように、作品の肝になっているのはあくまでもしずくとユウリのラブラブなやり取りなのですが、随所に挟まる試合の要所のシーンが、結構「野球漫画っぽく」できているんですよね。

 漫画でもアニメでも、「これ作った人ら、野球のこと全然知らないな」というのがすぐわかってしまう作品は意外とあるものですが、その点、本作は安心して読めるものになっています。

 

 好きなものを作品に込めるのって大事だな、と思わせてくれましたね。

 

キャラクター

 主役であるしずくとユウリの可愛いところは、間違いなく魅力です。

 しずくはちんまりとしていて清楚なイメージのある、とてもおしとやかな女性に見えるのですが、野球への傾倒は本物で、その落差もまた魅力。

 ユウリは198cmの巨漢にもかかわらず、落ち込みやすく気弱。なのでしずくとの関係においては、タイトルの通り、彼女にリードされる場面がとても多い。

 そんな2人が仲睦まじく物事に取り込んでいく様子は、読んでいて普通にニヤけます。

 

 脇役も(そんなに多くはないのですが)良い味出していますね。

 中でも左のエース・入江とその妻は気さくな人柄で好印象。描き方を間違えると2人だけで完結してしまいそうな帷子夫妻を、外部に開かせる役割をきちんと果たしていました。

 

 まず、見やすい。私にとっては、これがいちばん大事なところです。

 その上で、しずくをとても可愛らしく、そして時折ドキッとするような色っぽさを醸し出すように描いている。

 これでもう、十分ではないかと思います。

 

 男性キャラも結構しっかり描き分けていますし、動作の切り取り方も確かですし、これといってケチをつけるところは見当たりませんね。

 そつなく愛される絵であると言えるのではないでしょうか。

 

おわりに

 という具合に、私は楽しく読ませていただいたのですが、先述したように、本作は全1巻、これでオシマイなんですよね。

 伝え聞いたところによれば、この「第1巻」がある程度以上の支持を得れば、続きが出る計画もあったらしいのですが、残念ながらその水準に至らず、ポシャったのだとか。

 なので、表紙に「VOLUME ONE」と書いてあるものの、続きはないのです。

 

 正直、もうちょっと続くべき作品だったのでは? と思いましたね。

 まあ、傑作4コマ漫画なのか、と問われると、そこまでは即答しかねますが、わずか1巻で打ち切られるような失敗作でもないはずなんですよ。

 萌えと野球の融合がウケないんですかね? いや、ハチナイとかがありますし、そういうわけでもないか……。

 私にはちょっと、売れなかった理由がわかりません。

 

 そんなわけで、今から買い支えても続刊しない作品ではあるのですが、野球とピュアピュア夫婦、そして制服裸足、この辺りが刺さる方には、オススメしたい作品です。

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