天国的底辺

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【創作】突っ込まれにくい異世界設定を割と簡単に作る方法

 今日は、いわゆる異世界の設定作りについて書いていこうと思います。

 タイトルにある通り、ここで重視するのは「突っ込まれにくさ」と「簡単さ」を両立させることです。

 ぶっちゃけた話、あなたが博覧強記の人で、可処分時間が大量にあるならば、突っ込まれないしっかりした異世界設定を作ることは幾らでも可能でしょう。

 当記事はそうではなく、(言葉は悪いですが)「持たざる人」がいかにして手早く、そこそこイケてる異世界を作っていくか、というのを追求しております。

 

 コンセプトからしてへっぽこ、と言われると返す言葉もありませんが、真面目に考えてみましたので、ぜひお付き合いいただければと思います。

 

 

いわゆる「なろう系」の異世界

 現世の人間が、どこかべつの(架空の)世界に行く物語は、古今東西たくさんあります。

 それらも含めて「異世界物」と呼んでしまうのであれば、異世界物はフィクションの定番の一つであると言えるでしょう。

 歴史あるジャンルであり、深堀りすればするほど、名作のオンパレードとなります。

 

 しかし昨今「異世界物」と言うとき、意味するところはそこまで広くありません。

 少なくとも私の観測の範囲内では、今現在「異世界物」と言えば、web小説の分野で流行している、いわゆる「なろう系」の異世界物が中心となります。

 現実の世界から、RPG的なファンタジー世界に転生し、あるいは召喚され、そこで生きることになる――まあ、そういう作品の総称ですね。

 当記事でも、異世界物という言葉を、主にこの意味で使っていきます。

 

 さて、この異世界物、とにかく人気のあるジャンルであり、良くも悪くも雨後の筍のように書籍化され、その中の幾つかはメディアミックス化もしています。

 特にアニメ化することは作品にとって大きな話であるわけですが、ここで成功を収める作品もしっかりある。

 私が真っ先に思い出すのは『転生したらスライムだった件』と『盾の勇者の成り上がり』でしょうか。

 ここまで上手く運んだ作品について、私から言うことは特にありません。

 

 しかし、多くの作品はなかなかそこまでは作り上げられない。

 というか、そこそこ人気を博している作品も含めて、突っ込みに次ぐ突っ込みが入るのが、この分野の常であるように観察されます。

 まあ、そもそも素人が空き時間で書いているものなのだから、仕方ないだろうというところもありますが……とにかくよく突っ込まれる。

 

 他のジャンルと比べて、異世界物のそれはちょっと格が違うように見受けられます。

 それはやはり、こことは違う成り立ちの世界を一つ作り上げるということが持つ、根本的な難しさに原因があるのでしょう。

 現実世界が舞台であるならば、例えばの話、世界について何も語らなくても成立し得ます。

 物語に必要なところだけ描写すれば、あとは読者が勝手に周辺領域を脳内補完してくれる。

 というかむしろ、そこで「世界」などを語り出すのは蛇足である場合も多いですよね。

 

 しかし異世界となると、そこがどのようなところなのか、一応は説明しなければならない場合がほとんどです。

 その場合、当然ながら、しっかり考え抜かれたものでなければ、説得力は生まれません。

 しかも、説明に終始するような作劇では読者を退屈させてしまいますから、興味を引く展開を作りながら、まんまと読者の頭に物語世界をインストールする手腕が求められる。

 そりゃあ、難しい仕事になりますよね。

 

 この点で、いわゆる「なろう系」は安直なものが溢れている――残念ながらこれが現実であることに異議を唱える方は、あまりいないかと思います。

 それでも多くの人が挙って異世界物を書こうとするのは、そうでないとそもそも読んでもらえないという事情からでしょうか。それとも異世界物には何か「現代人の筆を刺激する」要素があるのでしょうか。

 わかりませんが、とにかく今日も今日とて、たくさんの異世界物が生産され、そして突っ込まれている。令和になってもそれは健在です。

 

異世界設定への主な突っ込み

 ここで、異世界物の設定に対する、主な突っ込みを3つほど挙げてみようと思います。

 細かく言い出したらキリがないので、あくまでざっくりと。しかし本質的なところは押さえておくというコンセプトで並べてみました。

 

魔法と文明進度の不一致

 先ほど、異世界を「RPG的なファンタジー世界」と表現しましたが、そこから当然に導き出されるものとして、魔法はまず間違いなく登場する要素となっています。

 まあ、ちょっとヒネった作品だと、あえて魔法ではなく違う名前で読んだりもしますが、やっていることは同じです。まとめて魔法と呼んでも本質的には問題ありません。

 

 もちろん細部の設定は作品ごとに異なりますが、ほぼどの作品においても、魔法は非常に便利に描かれています。

 あえて身も蓋もない表現をしますと、何もないところから火が出たり氷が出たり雷が出たり、あるいは空を飛べたりバリアを張れたりする。

 そういうことのできる存在、いわゆる魔法使いのたぐいが、一定数いるのが異世界なのです。

 

 しかしその割には、人々の暮らしが便利になっていないことが多いんですよね。

 まるで、魔法など存在しない前提で構築された文明がまずあって、その上で「魔法使い」達がいろいろと便利な魔法を使っている――そんな感じなのです。

 もちろん、そうなっていることに理由があるなら、何も問題ありません。例えばですが、魔法を使えるのが世界に数人しかいなければ、文明に関与しないのも当然でしょう。

 しかし多くの場合は、特に理由がないのです。なので魔法の存在と、文明の進度との整合性が、ちょっとおかしなことになっている。

 

 私見ですが、これは作者が魔法というものを「戦闘用のもの」としか考えていないがゆえに起きる現象なのではないかと思います。

 魔法みたいなものがあれば、まず普段の生活をそれでどうにかするはず。ならば生活スタイルはどのようになるだろうか――。

 そういうシミュレーションをしていないのだろうな、という感じなんですよね。

 結果、読者からは少なからずナメられてしまうことになるわけです。

 

作者の知識をageるための異世界人sage

 トレンドに若干の変化はありますし、例外が人気を博した例もありますが、基本的になろう系の異世界物には、いわゆる無双、主人公が物凄く強いという描写が付き物です。

 まあ、これ自体は何も問題ありませんよね。少年漫画にだってそういう要素を持ったヒット作が山のようにありますし、単純な話として、弱いよりは強いほうが面白い上、いろいろな展開をさせることもできます。

 

 ただ、なろう系の場合、単に魔力が強いとかそういう方向にとどまらず、知略のようなもので主人公に無双させようとする作品があります。

 そこでしばしば問題になるのは、読者から見てそこまで凄いものではない主人公の知略が、異世界においては凄いものとして扱われる、という描写です。

 魔力と違って知略は現実世界にも通じるものなので、「読者である私達」との単純比較が可能になってしまう。

 そうなると、読まされた側としては、作者の意図した通りに「主人公すげえ」と感じることは到底できないわけです。

 

 さらにここで問題なのは、そうした場合に、全体の構図が「作者の知的限界を無理やり持ち上げている」ように見えてしまうことです。

 主人公の知略が凄くあるべき場面なのにちっとも凄くない、その原因は何だろう、と考えていったときに、真っ先に浮かぶのが、作者の限界だからです。

 こうなると、作品そのものが「作者が気持ちよくなる手段」でしかないように思えてしまい、もはやまともに楽しめる状況ではなくなってしまう。

 これをリカバーするのはほぼ不可能であると言っていいでしょう。

 

時代設定の不整合

 よくあるパターンとしては、中世ヨーロッパ風なのに、特定の技術だけ後の時代のものだったり、というのが挙げられますね。

 こっちでこれができないのに、どうやってあっちであれを実現しているの?

 あるいは逆に、こっちでこれができるのに、なぜあっちではあれをやっていないの?

 そういう突っ込みが、歴史に詳しい人からいろいろと入るわけです。

 

 実のところ、そういう突っ込みは「野暮」の一言で片づけることが可能ではあります。

 というのも、異世界はあくまで異世界であり、誰もそこを「中世ヨーロッパ」だとは言っていないわけですから、文明の細部が現実世界の中世ヨーロッパとどれだけ違おうが、「ここはこういう世界なのだ」と主張すれば、それでいいんですよね。

 

 しかし、事実関係はそれでよくても、それが説得力に繋がるかどうかは、またべつの問題となります。

 上の項にも通じることですが、「作者がろくに考えていないからこういうことになっているのだろう」といったん思われてしまうと、異世界だから云々と言ってみたところで、すべてが見苦しい言い逃れにしか聞こえなくなってしまうのです。

 やはりここでも、ナメられたら終わり、なんですよね。そうなったが最後、作者も読者も楽しくない、誰も幸せでない状態に陥ってしまうわけです。

 

突っ込まれにくい異世界設定

 上に挙げた3つの突っ込みの肝は、次のように要約できると思います。

「世界構造をきちんと固定するのは難しい。そこに無理して挑んで、作者の知識の限界が舞台設定のかたちと一致してしまうと、一気に白ける」

 逆に言えば、これを避けることができれば、少なくとも上記のような根本的すぎる突っ込みは、そう簡単には食らわなくなるでしょう。

 

 しかし、それを真正面から実現するのは、とても難しいことです。

 それはつまり「しっかり勉強して、設定を徹底的に作り込む」ということなわけですが、これにかかるコストは生半可なものではありません。

 もちろん、できるならそうすべきですが、なるべく簡単に、とりあえず全否定的な突っ込みだけは避ける手段はないものでしょうか。

 

 ないわけではない、というのが私の意見です。

 完全に突っ込みを封じることはできませんが、以下の3つの手法を使えば、それなりには設定が仕上がるのではないかと思われます。

 順番に説明していきましょう。

 

最初に気持ちいい大ボラを吹いておく

 物語の冒頭、できるだけ早いうちに、とにかく大きなホラを吹いておくのです。

 この異世界は、これだけぶっ飛んでいるんですよ。ちまちましたところを考証してもたいした収穫はないんですよ。大事なのは大嘘にどっぷり浸かることですよ――。

 そういうメッセージを、いきなり読者に送りつけてしまうわけですね。

 

「気持ちいい」というのが、ここでの大事なポイントです。

 いくら作者が戦略的に大ボラを用意しようが、それが魅力的でなければ、読者はそれに乗っかって共犯者になる気にはなりません。

 だからここに思いっきり脳みそを振り絞る必要があります。

 これが成功すれば、設定の細部について「突っつく奴のほうがわかってない」という空気を作ることができるでしょう。

 

 異世界物ではありませんが、この辺りについては『ガールズ&パンツァー』の学園艦の出し方が参考になるのではないでしょうか。

 第1話の最後であれが登場したことで、ガルパンはかなり多くの物事が視聴者に「許可された」状態になったと思うのです。

 なるほど、この作品はこういう無茶なものがこういうタイミングで登場するものなのか。

 この認識が、リアリティラインを良い意味で下げたわけですね。

 

 もちろんガルパンの場合、その上で戦車の描写に関してはリアリティを追求していたから面白かったわけで、決して「まんまと綿密さから逃げた例」ではないのですが、参考にはなるところだと思います。

 

異世界の住人もきちんと作る

 主人公が圧倒的に強いとかは、全然構わないと思うんですよ。

 先述したように、弱いよりは強いほうが面白いですし、展開の幅も広がります。

 ぶっちゃけ、「現実ではたいした存在ではないので、フィクションに触れているときくらいは気持ちよく無双を体験したい」というニーズは確実に大きいでしょうし、ニーズがあるなら応えるのは自然なことです。

 

 ただ、そのために異世界の住人を作劇的に薄っぺらくすると、それがそのまま作品の薄っぺらさに繋がってしまいます。

 魔法がどうとか、種族がどうとか、その辺をいくらちまちまと考えてみたところで、その上で動くキャラクターに実体感がないと、活きてこないんですよね。

 

 というわけで、私としては、異世界のキャラクターの履歴書を作ってみたらどうか、と思うのです。

 ここでいう履歴書というのは便宜的な言い方で、要は現在の身体的・精神的特徴や、これまでの生まれ・育ちをまとめたリストですね。

 それを、名前がある程度に重要度の高いキャラクターに関しては、全員分作ってみる。

 そうすることによって、弱いなら弱い、悪いなら悪い、無知なら無知で、しっかりした理由が背後にある状態を作れます。

 そういうキャラクターを動かして紡ぎ出される物語は、設定が多少荒くとも、それなりには作者の意図した通りに汲み取ってもらえると、私は思うのです。

 

 また、履歴書を作っていく過程で、自然と舞台設定も膨らんでいくことになるでしょう。

 そのようにして生まれた設定は、取って付けたような設定と違って、キャラクターの生き様と不可分になっているので、実体感が宿ります。

 こういったことも「副産物」として期待できるのではないでしょうか。

 

不完全性に意味のある異世界を作る

 大抵の異世界は、きちんと独立した世界としてそこにある設定になっています。

 きちんと独立した世界だから、きちんと作り込まなければならなくなる。例えば、あるコミュニティがあったら、それ以外のコミュニティとの関係がどうなっているのか、ということも必要になってくるわけですね。

 しかしだからこそ、それが蟻の一穴になり得ます。作り込みのどこか一ヶ所でも変な要素があれば、そこから突っ込みが入り、結局「全部おかしいでしょ」という話になってしまいかねないのです。

 

 ならば最初から、不完全であること、いびつであることに理由のある異世界を作ってみてはいかがでしょうか。

 

 この格好の例として挙げたいのは、TVアニメ『灰羽連盟』です。

 壁に囲まれた「グリの街」に、灰羽として生まれた主人公ラッカは、街に来る前の記憶がありません。どこかで何かをしていたことはわかるのですが、それを思い出すことができない。

 また、壁の外に何があるのかも、誰にもわかりません。街は(トーガと呼ばれる存在との交易を除いて)完全に街だけで完結しており、その外が描かれることは決してありません。

 謎だらけで、まるで「途中まで描かれた絵」みたいな舞台設定なのですが、しかし本作はそこにこそ深い意味があるのです。

 このような異世界のかたちも、考えればいろいろ思いつくはずですよね。

 

 私は小説を書いて新人賞に投稿しているのですが、以前、登場人物の一人の頭の中の世界に、住んでいる屋敷ごと紛れ込んでしまうという物語を作ったことがありました。

 ある種の異世界です。

 そこは淡々とした荒野が視界の遥か向こうまで続く空間で、昼も夜もなく、自分達以外には何一つ存在しない。

 そのくせ、屋敷の電気やガス、水道といったインフラだけはそのままで、食料すらも一定の期間が経つと元通りに戻る。

 そんな「説明要らずな」設定です。

 

 まあ電撃大賞の三次選考で落ちたので、世に出るレベルではなかったという点では好例ではないのかもしれませんが、編集さんの一人には絶賛をいただいたので、アリかナシかで言えばアリなのでしょう。

 こういった物語のバリエーションは、文字通り無数にあると思います。

 

おわりに

 先述したように、現世の人間が異世界に行く物語には、結構な歴史があります。

 それが突っ込み対象の代表格みたいになったのは、本当に最近のことでしょう。

 今、Googleの検索フォームに「粗製乱造」と入れてみたのですが、候補の一つに「粗製乱造 なろう」というのが表示されました。

 まあ、そういうことなのだろうと思います。

 

 大事なのは、異世界を「低コストでダイナミックなことをする手段」として便利使いしないほうがいい、ということでしょうね。

 テンプレは決して否定されるべきものではなく、むしろ基礎としてはリスペクトすべきものなわけですが、上記のような思惑で扱うと、どうしようもないものが出来上がるのは必至です。

 しかし、長く深く勉強をして、徹底的に作り込むのにも、限度というものがある。

 そこで「できるだけ簡単に」そこそこの異世界を作るにはどうするのが良いのか、というのを考えてみたのが、本記事でした。

 

 あなたが字書きであると仮定してお訊ねしますが、どうでしょう、少しは使えそうな内容だったでしょうか?

 世の中、細かい突っ込みどころを探しては「くだらねー」と言いたがる人で溢れており、発信することはその意味でなかなかエネルギーを必要とすることですが、でも物語を作るのは本当に楽しいことです。

 そのためのヒントになりそうな箇所があったのなら、嬉しいですね。