今日は「子供の夢としてのYouTuber」に対して、大人の側がどう対応していくべきなのかについて書いてみようと思います。
テーマ的には大人に向けた記事になるわけですが、あなたが現在小中学生だったとしても(果たして当ブログにもそのくらいの年齢の方が訪れるのだろうか?)、何か参考になる部分はあるのではないかと思いますので、軽い気持ちで読んでいただけると嬉しいです。
YouTuberになりたい子供の増加
ここ最近、将来はYouTuberになりたい、という子供が増加しました。
10年前にはそんな風潮など存在しようもありませんでしたし、5年前にもまだそこまでの熱量は観測できなかったと記憶しています。
ここ2~3年くらいで子供達の頭に定着した、まさに新興の夢と言える職業でしょう。
学研が発表している「小学生白書Web版(2018年9月調査)」によれば、「将来つきたい職業」ランキングにおいて、「YouTuberなどのネット配信者」が全体で3位、男子の間では2位にランクインしています。
この勢いは本物で、YouTubeによほどの壊滅的激変でも起きない限り、これからも高位にランクインし続けるものと推測されます。
そういった流れを受けて、YouTuberを育成するカリキュラムを売る企業もぽつぽつと出現し始めました。
代々木アニメーション学院は「YouTuber科」を2020年からスタートさせますし、FULMAは「YouTuber Academy」という小学生向けの教育プログラムを運営中です。
これらのカリキュラムがどれだけ実際に有効であるか、内容が料金に見合っているか、といったあたりはまたべつの議論になりますが、ともあれこのようなスクールが出てきたということ自体、現在のYouTuberの勢いを物語っているとは言えるでしょう。
こういった流れについては、様々な反応があると思います。
もっとも古風なところとしては、「子供にはもっと真面目に、きちんと自分の将来を考えてもらいたい」という意見が考えられるでしょうか。
それとは正反対の反応としては、「これからは個人の時代、発信の時代。どんどんチャレンジすればいいと思う」という先進的な意見もあることでしょう。
あるいは、そもそも小学生の夢なんてそもそもふわふわしたものなのだから、そこにたいした意味なんてない、という声も聞こえてきそうです。
私個人としては、実のところプロスポーツ選手を目指すよりは現実的だし、学校の先生と答えるよりは視野が広いし、夢の在りようとしてはそう悪いものではないのではないか、と感じますね。
少なくとも、圧倒的多数を占める回答である「わからない」よりは、好奇心があって良いことではないかというのが率直な感想です。
専業で食べていけるYouTuber
このように、今や子供に大人気の職業となったYouTuberですが、では実際にこの仕事で食べていくには、自身のチャンネルをどのくらいの規模に育てればよいのでしょうか?
これについては幾つかの説をネットで見ることができます。
実のところ、YouTuberの広告収入は扱うジャンルによっても異なりますし、登録者数や動画再生回数だけでなく、案件をどれだけこなせるかといったことでも稼ぎが変わるものなので、一概には言うことができません。
ただ、私の観測範囲においては、よく見る指標として「登録者数10万人」というのが挙げられるように思います。
ちなみに、有名ブロガーのマナブさんの記事によれば、彼は登録者数10万人で月収が100万円に到達したのだそうです。
ただし、この100万円がまるまる懐に納まるわけではなく、諸費用を抜いて考えなければなりませんし(マナブさんの場合は、編集作業を外注に任せているので、その費用が割とかかっているようです)、また個人事業主の収入の数字は、サラリーマンのそれとはいろいろな面で同列には語れません。
なので月収100万円というのが、実際的にどのくらい「キラキラした」数字なのかは何とも言えないところがありますが、とりあえず食べていけるのは確かでしょう。
あくまで一例ですが、これが登録者数10万人の世界であるようです。
2019年8月現在、登録者数10万人のYouTuberというのは、日本のYouTuber全体の何%くらいを占めているのでしょうね?
絶対数で言ったら結構な人数になると思うのですが、私達が漠然と考えるより遥かに多くの「売れていない」YouTuberがいるであろうことを計算に入れると、恐らくそれなりには大変な道ということになりそうです。
もちろん、副業や趣味でやっていくぶんには何ら恐れるものはないと思うのですが、専業で食べていくことを目指すとなると、まあ、腹をくくって挑む必要は絶対にあるでしょう。
初期の活動を時給換算にしたら、間違いなく悲惨な数字になるでしょうし、支持を広げることができなければ永遠にその段階のまま、ということも十分あり得るわけです。
我が子が将来YouTuberになりたいと言ったら
そんなYouTuberの世界に、将来飛び込んでいきたいと、あなたのお子さんが言い出したとしましょう。
そんなとき、あなたはどのような反応をするべきでしょうか?
私の意見は、次のようなものです。
「ある程度の初期費用を与えて、今すぐ始めさせるべし」
YouTuberという職業はいろいろな意味で特殊ですが、その特殊性の一つとして「年齢制限などまったくない」というのが挙げられます。
実際、フォーブス調べによる「2018年でもっとも多く稼いだYouTuber」は、当時7歳の少年だったくらいです(この場合、彼自身が動画を編集しているわけではないでしょうが)。
これを考えるなら、「将来」など待つ必要はどこにもないんですよね。
本当にそれをやりたいなら、今すぐ自分のできる範囲で始めてしまえばいいのです。
この方針には、2つの大きな狙いがあります。
まず第一に、早いうちから現実を知ること。
動画制作というのは言うまでもなく、動画を観ることとはまるで違う行為です。
作ることには作ることの面白さがあるわけですが、それは消費することとはまったく別次元のもの。観るのが好きだからといって、作るのも好きになれるとは限りません。
そして、作ることを好きになれなければ、絶対に動画制作など長続きしません。
子供がYouTuberになりたいと言ったのなら、それが果たしてその子に合うものなのかどうか、今すぐに試してみればいいのです。
もし子供が作ることに早々に飽きてしまい、例えばほんの10個の動画すら揃えることができなかったのだとしたら、それは幸いなことです。
べつにそのことで、その子が何かを失うわけではありません。ただ現実を知って、夢が他の何かに切り替わるだけ。今後はあくまで視聴者としてYouTuberの動画を楽しんでいくことでしょう。
逆に動画制作に嵌まり込んだのだとしたら、それも幸いなことです。
その夢中さは、その子を確実に成長させることになりますし、そういう子は成功する確率が段違いに高い。
もしかしたら将来、親であるあなたをその道で経済的にガッチリ支えてくれるようになるかもしれません。
そして第二に、動画制作をすることで様々なスキル・ノウハウが身につくということです。
動画を作ってYouTubeに公開するというのは、数多くの行動の集合体です。
まず企画を考えることに頭を使いますし、撮影には機材の知識が要りますし(とはいえ最初はスマホでもOK)、編集するにはソフトウェアを使いこなす必要があります。当然、センスも問われるところです。
公開したら公開したで、世界中の人間を相手にしたコミュニケーションの可能性が発生します。
YouTubeは「良い人」が「良いこと」だけを言ってくれる空間ではありません。発信者が子供だろうが何だろうが、発信されたコンテンツこそすべて。それに対して、忌憚のない意見を否が応でも受け取ることになります。
そこからフィードバックを得て、次の動画制作に活かしていく――それをこなすにはメンタルのコントロールも必要ですし、それによってスキル・ノウハウはさらに磨かれていくことになる。
そもそも何かを発信すること全般がそうなのですが、これはものすごい成長に繋がります。
こういうことを子供のうちから「楽しみつつ経験できる」機会があるのだとしたら、それを見逃す手はありません。
挫折も含めて教育投資である
まあぶっちゃけた話、そのようにして子供にYouTuberをやらせた結果どうなるかと言えば、ほとんどの子が成人すら待たずに辞めてしまうものと思われます。
もちろん、続く子は続くでしょう。それを止める必要はありません。恐らくその子は、親であるあなたが想像もつかないところへ、想像もつかないスピードで進んでいくはずです。あなたはただ、最低限の管理だけをしていればいい。
でもほとんどの子はそうはならず、何となく少しずつフェードアウトしていく。それはとても自然なことです。
これを受けて、「初期投資が無駄になってしまった」と考える人もいると思うのですが、私はそうは思わないのです。
意気込んで始めたことが途中で終わってしまったからといって、それが即、全部無駄なことだったとなるかというと、話はそう単純ではない。
というのも、「何かをかじったことがある」というのは、人生のどこで、どのように役に立つかわからないからです。
そのちょっとした経験が、何らかの壁を乗り越える鍵になることがあるかもしれませんし、あるいはもっとわかりやすく、「子供の頃に少しだけYouTuberをやっていたことがきっかけで、大学あたりで映像制作に目覚めてそのままプロになった」みたいなこともあるかもしれない。
その意味で、何かを始めてみることは貴重な財産なのです。
親としてあなたがすべきことがあるとしたら、YouTuberとしての活動に子供がすっかり嵌まり込んだ場合に、最低限のことはこなすよう諭すことだと思います。
ありふれた話としては、たとえば大学、少なくとも高校まではきちんと通い続けなさい、みたいなことですね。
私は個人的には学歴は割とどうでもいいかなと考えるタイプなのですが、しかし今のところそれが社会的に有効なのは確かですので、押さえておくのは賢明な判断と言えます。
その辺りのサポートこそが、親の務めだと言えるでしょう。
すべては教育投資です。
YouTuberになりたい子供に初期費用を与えるのも、大学の学費を出してあげるのも、教育投資という意味では同じ。
「可愛い子には旅をさせよ」という言葉がありますが、YouTuberをやらせてみるのも、一種の「旅」であると私は思う次第です。
そして旅の効能は「初期の目的地に着くこと」だけではないのだ、というのが、ここでの重要なポイントです。
おわりに
基本的に、子供に最短距離を歩かせようという発想は捨てたほうがいいですね。
人間はそんな簡単に定められた道をただただ歩くことはできませんし、それができたとしても、そのようにして「エリート」になった人間には、変なところに欠落があったりする。
例えば、世の中の人間がどれだけ無駄を楽しみ、それを糧にして生きているかがわからず、「そこに生産性なんてないでしょ」とばかりに軽い気持ちで規制しようとする。
私としては、そういう人間には育てて欲しくないわけです。
許容範囲の中で、いろいろな遠回りを経験させる。そしてそれをただフォローする。
そういうのがたぶん、親の仕事なのだと私は思います。
YouTuberになる・ならないというのも、その一環で考えてみるのが良いのではないかというのが、このテーマにおける私の意見です。