今日は、森尾正博さんの漫画『異世界でも○○嬢やってみた』第1巻の感想を書いてみたいと思います。
タイトルの中に含まれている微妙な2文字が、もしかしたらGoogleアドセンス的にポリシー違反になるかもしれません。
そのときは当該箇所を伏せ字にすることで対応する予定ですので、もしあなたがこれを読んでいる時点で『異世界でも○○嬢やってみた』になっていたら、それは正式なタイトルではなく、私の事情で伏せた結果であるとご理解いただければと思います。
なお、本記事で使用している画像はすべて本作電子書籍版からの引用であり、その権利はすべて、作者である森尾正博さんと出版社さんに帰属します。ご了承ください。
あらすじ
とある「賢者」によって異世界に召喚されてしまった、池袋のNo.1嬢・ゆづき。
彼女はその異世界においても、まったく同様に嬢の仕事を続けていた。
目的はただ一つ、元の世界に帰ること。そのためには、与えられた本に記されている条件を満たす者達全員を、「客」として満足させなければならないのだ。
城下町ランドバールの店「夜遊びネコの泉」に身を置き、今日も条件に合致する者を探しては、店への誘いをかけるゆづき。
果たして元の世界に戻れるのはいつの日か――?
嬢キャラのテンプレを持たない主人公
嬢が主人公ということで、読み始める前には「いわゆる嬢キャラ」という感じのキャラクター像を思い描いていました。
ちょっとアンニュイで、世間ずれしていて、いかにも大人のお姉さんという感じのやつです(我ながらコテコテすぎてどうかという感じもしますが)。
しかし実際に読んでみると、それとはまるで違う……というより、ほとんど正反対と言ってもいいキャラクターになっていました。
普段はメガネっ娘で元気で人懐っこく、屈託というものが全然ない。
第1巻の時点では「そもそもなぜ嬢になったのか」は描かれていないのですが、そこにシリアスな何かがあるようには到底思えない、無邪気なイメージ。
女子高生キャラと言っても通用しそうなその造形は、私にとって良い意味で完全に虚を突かれるものであり、最初の数ページで惹かれましたね。
引用元:P8
しかし何と言っても、池袋でNo.1だった嬢。そのテクニックはずば抜けており、あらゆる種類(人間以外にも様々な種族が暮らす世界です)の客を、それによって満足させていきます。
普段の人となりと、そのテクニックのギャップがまた魅力的で、あっけらかんとした描き方でありながら、そこには深みのようなものが出ている。
ゆづきのキャラクターについて、あるいは「リアリティが無さすぎる」と考える人もいるかもしれないのですが、私としてはその辺の判断には悩むところです。
というのも、いわゆる嬢をやっている女性の全員が、それまでの人生で大変な苦労をしてきて、その結果すっかり世間ずれしている、とは言い切れないじゃないですか。
私は嬢に知り合いもいませんし、その界隈の常識というものもまるでわかっていないのですが、「こういう嬢だったいるはず、いていい」という主張は十分に通るのではないかと、個人的には思っています。
良い意味で都合の良い世界観
ゆづきは異世界の在りように100%どっぷり浸かり、生活のすべてをその世界観の中で営んでいる……かというと、そういうわけではありません。
手持ちのスマホが元の世界と繋がっており、それを介して買い物をしたり、誰かと連絡を取り合ったりすることが可能なのです。
バッテリーの充電はどうなっているのか気になるところですが、その辺りの説明はもちろんありません。
引用元:P61-62
これを利用して、ゆづきはローション等の「仕事道具」を元の世界から仕入れており、それらを駆使して、ほぼ以前と同じ仕事のやり方を継続しています。
この設定があるがゆえに、本作は「異世界の住人を現実世界のプレイに出会わせる」シチュエーションを描くことができ、異世界モノでおなじみの「現実世界の知見で無双する」パターンを楽しむことができるようになっているわけです。
私はいわゆる異世界モノにそこまで詳しいわけではないのですが、正直なところ、そういった種類の「無双」がそれほど好きなわけではありません。
現実世界からの「持ち込み方」が安直ですし、「無双する側が凄い」というより「無双される側が凄くない」描写でしかなく、爽快感の作り方がお手軽すぎるように感じるからです。
ただし、それはお話がシリアスだった場合。
本作のようなコメディの場合、そういうのは深く考えるところではなくなり、すべて笑いで片づけることができてしまいます。
現実と繋がっていて通販が届いてしまう、と言われても普通に楽しんでしまえますし、何ならもっとそういうところを描いて欲しいとすら思えてくる。
物語のテイストが、ここまで素材の意味を変えてしまうのか……と、改めてフィクションの味わいが紙一重のものであることに感じ入りますね。
ストーリー展開
第1巻ですので、まずは日常を1話完結で描くところから本作はスタートしています。
先述したように、ゆづきが元の世界に帰るためには、「本」に記された条件を満たす者達すべてを、客として満足させなければならない。
序盤はその基本設定に従って、客を引いては満足させ、という本作なりのスタンダードが繰り返されます。
といっても、何しろ舞台は異世界。
なので客と言っても、エルフ、魔王、オークと、最初から飛ばしまくり。
特に、2話で魔王が登場したときには笑えましたね。普通の発想ならそういう存在は温存しておくものですが、その気がまったくない。
ある意味では、「こういう店に来たら、客は普段の社会的地位などすべて忘れて楽しむものなのだ」という本質を見事に描いたとも言えます。
しかし、迎え入れるほうのゆづきは、なかなか大変です。
何しろ人間以外の種族にはこれまで縁がなかったわけですから、いろいろと未知ですし、種族ごとに様々な特徴があるので、それを理解した上で的確に対応していかなければなりません。
そういったことを機転を利かせて突破していく様は、ちょっとファンタジーもののバトル漫画のような感じでもあり、純粋に「これはどう乗り切るのだろう」という興味に繋がっています。
引用元:P71
話数が進むことで、当然物語は広がっていき、6話では「開かずのほこら」への冒険をする展開に。
そこで出会った古の大魔獣、ヤーマ・ラビスともいろいろあってプレイするに至り、ラビスはゆづきを気に入ってそのまま仲間に。一緒に仕事をするために女体化する、という、これまたとても都合の良い(褒め言葉)展開になりました。
引用元:P151
そして第1巻ラストでは、世界三大店の一つ「華麗なる乙女の森」がライバル店として同じ町中に登場。
その店主(?)であるハーフエルフが宣戦布告をしてくるところで、次巻へ続く――となっております。
好きな点、残念だった点
いちばん気に入ったのは、何と言ってもゆづきのキャラクターです。
嬢という際どい仕事に対する屈託のなさ。しかしまったく恥じらいがないというわけでもないという、絶妙な感じが心地よい。
そして、彼女が客を引いてくるのはあくまでも自分が元の世界に帰るためなわけですが、その打算に嫌味がなく、仕事を引き受けた以上は客との束の間の時間を幸せなものにしようというプロ意識もしっかりある。
そういった造形すべてが、ゆづきを非常にとっつきやすい存在にしています。
引用元:P12
客もみんな個性豊かで面白い。
感心するのは、女体以外の作画にもまったく同じだけのリソースを割いている(ように少なくとも私には見える)ところですね。
客側の個性も本作の大切な武器であり、それをしっかり描くことが面白味に繋がることを、よくよく肝に銘じて描かれているのがはっきり伝わってきます。
絵柄は可愛らしく、そして読みやすい。
結構描き込まれていますが、ごちゃごちゃした感じはまったくなく、「本作の内容が絵に求めているもの」をきちんと拾っているという感じがしました。
個人的に残念だった点を挙げるなら、魔法の影響で幼女体型になる展開でしょうか。
引用元:P115
いや、そういう姿になること自体は歓迎だったんですよ。
ただ惜しいことに、このあと次のプレイをする前に、元の姿に戻ってしまったんですよね。
しかもその戻り方が若干不自然で、幼女体型のゆづきにプレイをさせる展開を避けたのが露骨にわかってしまったのです。
まあ、それをやるとちょっと危ないことになると判断したのでしょうが……それだったら幼女化させる流れを作って期待値を高めることはして欲しくなかったなあ、とか思ってしまったわけです。
不満だったのはここくらいでしょうか。
あとは気楽に楽しむことができました。
今後の展開への期待
第2巻でライバル店をどう使っていくのか、楽しみですね。
ものすごく個人的な希望を言わせていただくなら、ハーフエルフらしき向こうの店主と、ゆづきとのレズバトルとか読んでみたいな~、とか。
バトルもののように直接対決するという熱い展開的な意味でも、プレイの新境地を開くという意味でも、そっちに幅を広げて欲しいなと思うわけです。
それでできれば、ゆづきが一度は快楽堕ちして敗北とかしてくれると最高ですね。
……ええ、100%趣味で言っているだけですが。
それに限らず、手練な客のテクニックに翻弄されるとかして、一度はゆづきの「プレイ面での負け顔」も見てみたいというのが、私の嗜好からくる本音だったりします。
女体化後のラビスと絡んでくれてもいいですよ!
おわりに
本作は、「ものすごくえっちい」わけではありません。成人向けではないので。
しかし、Googleアドセンスをやっているブログで紹介するのはいろいろ気を遣うな、という程度には、そっち系のネタが充実しています。
当記事で引用していないだけで、そういうシーンはふんだんに用意されています。
シンプルに、そこも大きな楽しみの一つなのは念を押しておきたいところです。
個人的には、その要素とゆづきの「嬢っぽくない元気少女ぶり」の配合がとても気に入ったので、ぜひあなたにも本作を手にとって、そこを楽しんでいただきたいと思います。
第2巻も楽しいものになりますように。