私がAmazonの電子書籍・Kindleに手を出したのは、確か2年半くらい前のことだったと記憶しています。
理由は一にも二にも、本の収納スペースの問題。
昔からそこそこ漫画を買っており、それらを処分したことが一度もないため、本棚はとっくに収納率100%を超え、限界に達していたのです。
Kindleを生活に組み込むことによって、それは解消されました。
それだけでもありがたかったのですが、しかしそれだけではなく、予想外の恩恵も受けることができるようになりました。
それが、「無料の第1巻を読みまくることができる」というものです。
今日はそれについて、思うところを少し書いてみたいと思います。
ウサギ小屋に住む貧乏人に優しい電子書籍
電子書籍の使い勝手については、細かい議論がいろいろとあるのですが、それはここでは省略します。
が、冒頭にも書いた通り、場所を取らないことについては疑いなく素晴らしいです。
紙の蔵書をこれ以上増やすには、もっと大きな部屋を手に入れるしかなかったのですが、貧乏人の私にはそれは叶わぬ夢。
そんな私でも、さらにたくさんの本を、しかも同時に持ち運べるようにもなったわけですから、これはありがたいですよ。
最初はPC版のビューワーで買った本を読んでいたのですが、言うまでもなくとても読みづらい。
そしてスマホではいまいち画面が小さい。それに目に対するダメージについての意識もありました。
そこでKindleの専用端末を買い、それ以降はこの端末を愛用しております。
機種はKindle paperwhite。最近になって防水タイプが出たのですが、私はその1世代前の32GB版、いわゆる「マンガモデル」と呼ばれるものを使っています。
ちなみに、それはすぐ漫画以外にも広がっていき、今ではほとんどの本をKindleで買うようになっています。
特定の箇所を読みたくなったときに、すぐにそこを開くことができないという扱いづらさはあるのですが、やはり省スペースの魅力はとても大きく、その点を十二分に堪能している状態です。
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セールが生んだ大きな変化
そのようなわけで、私は電子書籍の……まあミドル級ユーザーといったところです。
そもそも紙の本に対する愛着があまりなかったのが大きいでしょう。
読書好きな人たちはしばしば「紙の本の素晴らしさ」を説きますが、私の目には単なるフェティシズムにしか映りません。
それがここでは良い方向に働いたという感じです。
さて、そんな私がKindleと共にある生活を年単位で行ってきた結果、蔵書にどのような変化が生まれたでしょうか?
一番の変化は次のようなものです。
「いろんな漫画の第1巻だけが大量に増加していった」
どうしてこのような事態になっているのか、Kindle、というか電子書籍の現状に詳しい方なら、すぐにわかるのではないかと思います。
そう、その答は無料セール。
他の本と違い、漫画は1つの作品が何巻にもわたって続くことが多いので、そのうちの最初の1巻だけを0円で販売(0円でも「販売」と呼ぶのかは分かりませんが)し、新たな読者を獲得するという戦略を採っていることがとても多いのです。
長く続いている作品に関しては、3巻まで無料になっていることもよくあります。
これをですね、よほど作品が自分に合わないと判断しない限り、ついかき集める習慣が身に付いてしまったのです。
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電子書籍以降の流れ
電子書籍が生まれる前、紙の本がこのような売り方をすることはありませんでした。
特殊な場合にはそういうこともあったのかもしれませんが、少なくとも私の認識する限りでは、そういうセールが当たり前のように日常的に行われているということはありませんでした。
しかし今や、いつ見に行っても必ず何らかの作品は第1巻を無料で販売しています。
あまりにもそれが当たり前のことになっているものですから、私はKindle端末の残り容量を気にする意味でも、あえてチェックする頻度を抑え目にしているくらいです。
消費者意識
こういったセールが、実際にどのくらい販売実績に繋がっているのかわかりません。
一つ言えるのは、私の漫画の買い方、そして読み方に、次のような変化が生まれたということです。
「無料で大量の第1巻を入手できるようになった結果、それだけで読書のキャパがじゅうぶんに埋まってしまい、お金を出して漫画を買うことが少なくなった」
私のような人間がどれくらいいるのかはわかりません。
あるいはこういった戦略は十分な効果を生んでいて、縮小しつつある出版業界を多少なりとも支えているのかもしれません。
しかし、少なくとも私が自分を基準に考えたとき、そこには他人事ながら大きな心配が生まれてしまうわけです。
電子書籍のセールって、お金を出して本を買うという意識を小さくしませんか?
このことは、無料セールだけに限った話ではありません。
他にも電子書籍は、半額セールや、大きなポイント還元などを頻繁に行っており、とにかく紙の本に比べて安く手に入れることができる機会がとても多い。
あまりにもそれが多いので、少なくとも私は、本を定価で買うという意識が劇的に低くなってしまいました。
少なくとも、ここ1年ほどの「定価で本を買った率」は10%も行きません。
思いっきり活用している身でこういうことを言うのは抵抗があるのですが……本当にこの流れは大丈夫なのでしょうか?
出すほうの立場になって考えてみる
私はライトノベルの新人賞に投稿している人間です。
どうしてもプロの小説家になりたい、というわけではないのですが、投稿している以上、やがて自分が本を出版する立場になることを意識していないといえば嘘になります。
それを考えるとき、私が現在謳歌しているものの意味はひっくり返ります。
もし自分の作品が、半額セール等でしか売れなくなったとしたら――?
私は出版業界の人間でも、事情通でもありません。
したがって、何度も繰り返してきたように、電子書籍のセールというものが出版社と作家さんの懐事情にどのような影響与えているのか、実際のところはわかっていません。
なのですべては妄想の域を出ないのですが……もし現在のこの状況が、いわば「プラットフォームに追い立てられている」状況なのであれば、あまり0円の本や頻繁に行われるセールに飛びつくべきではないのかな、などということも最近はよく考えます。
この現状、どう捉えたものなのでしょうね。