天国的底辺

二次元、創作、裸足、資格試験、その他諸々についての思索で構成されたブログ

人間のマルチタスクはどの辺からマルチタスクなのか

機械と人間の違い

 複数の作業を同時にこなしていくことを、マルチタスクといいます。

 最近のコンピューターに搭載されているCPUは、内部に複数のコアを搭載しており、比喩ではない本当のマルチタスクを実現することができています。

 

 それに対して人間の脳は、同時に複数の作業をこなすことには向いていません。

 人間がマルチタスクをしているつもりになっているとき、実際に脳が行っているのは、タスクスイッチングと呼ばれるものなのです。

 つまり、ある作業から別の作業へと、主軸を細かく切り替えているだけなわけですね。

 これはプログラミングで言うところの、擬似スレッドに該当する物事の処理の仕方です。

 

 この人間タスクスイッチング、一見すると忙しく作業をしているので、周囲からはバリバリ行動しているように見えますし、本人的にも非常に充実しているように感じるのでしょうが、実際には効率が良くないことが研究の結果わかっているそうです。

 なので、そこから導き出されるライフハックとして、「あらゆる作業をシングルタスク化せよ」というのが定番になっています。

 

それって結局は程度問題?

 ……と、この辺までのことは、「マルチタスク 人間」などで検索すると、本や論文などを引用しながら詳しく解説している様々な記事が引っかかります。

 そちらを読んでいただければ問題ないでしょう。この記事の中で、それらの劣化コピーのようなことを書くつもりはありません。

 

 そうではなくて、今回私が言いたかったのは、次のようなことです。

「でもシングルタスクといっても、例えば一日中たった一つの作業ずっと行っている人はまずいないはず。

 誰もがどこかのタイミングで別の作業にスイッチングしていることになる。

 作業をシングルタスク化せよと言っている人たちも、そんな事は当然承知している。

 つまり人間におけるシングルタスクとマルチタスクの違いは、作業を切り替える頻度の程度問題に過ぎないということになる。

 では、どのくらいの頻度までがシングルタスクで、どこからがマルチタスクになるのだろうか?」

 

シングルタスクなら良いというものでもない

 このライフハックが語られるとき、シングルタスクは比較対象としてかなり無邪気に賛美されることになります。

 しかし実際には、シングルタスクにも問題というか、限度というものがある。

 まず肉体的には、同じ作業をずっと繰り返すことで体の特定の部分に疲労が蓄積するという現象が起きます。

 そして精神的には、飽きる、と言う永遠の敵がやって来ます。

 これらのことを考えるならば、さすがにある程度の時間が経過したら別の作業を行ったほうが効率的なのです。

 

 その意味では、「でもある程度はマルチタスクで動きましょうね」ということが、シングルタスク賛美の後続論点として語られるべきでしょう。

 問題はそのタイミングです。

 人間はどのくらいシングルタスクをすべきで、どのくらいマルチタスクを排除すべきなのか。

 

同じ職業でも全然違う

 作家の森博嗣さんは、小説の執筆中、いろいろな作業を代わる代わる行っているとご自身のエッセイの中で書かれています。

 15分小説を書いたら机を離れて別の作業に移り、その後またすぐ別の作業に移り、気まぐれのようにまた机に戻ってきて少し小説を書く。

 そういうことの繰り返しで作品が生まれていくのだそうです。

 

 まあ彼の場合はいろいろなことが特殊なので、この例はとても極端なものかもしれないのですが、一つ言えるのは、森さんにとって恐らくその作業切り替えの頻度は、悪い意味でのマルチタスクのうちに入っていないのだろうということです。

 彼にとっては、それ以上シングルタスクの方向に向かうと、疲れるとか飽きが来るといったデメリットのほうが大きくなるのでしょう。

 

 一方で、同じ作家さんという職業の中を見渡しても、数時間書き続けることでようやくスイッチが入って作品にのめり込むことができる、と主張する方もおられます。

 これはもう、個体差というほかありません。

 

生きることは複雑なこと

 この辺から考えるに、「とにかくあなたの生活をシングルタスクにせよ」と言うだけでは、あまり有効なライフハックにはなっていないのではないかと思えてなりません。

 人それぞれのリズム、あるいは作業の種類に応じたリズム、こういったものがかなり重要な要素となっており、結局のところ理想の作業形態を追求することは、とても複雑で、一概には言えない話になるのではないかと。

 

 しかし、「あなたはどのタイミングで作業を切り替えるべきか」みたいな視点で人間のマルチタスクを論じたものは、少なくとも私がweb上を観測した範囲内では見たことがありません。

 本や論文ではきちんと言及されているけれども、それを紹介するブログ記事などではそれらがスッパリ切り捨てられてしまっている、ということなのでしょうか。

 ならば、この辺についてはきちんとした文献に当たって勉強しなければいけないのでしょうね。

 

おわりに

 今回の記事に、オチらしいオチはありません。

 マルチタスクをやめてシングルタスクにしろと言われても、話はそう簡単じゃないよね、どうしたものだろうね、みたいなお話です。

 かっこいい引用やエビデンスに頼らず、体感だけを根拠に締めるのであれば、結局のところ次のような感じになるのでしょうか。

 

「飽きたり疲れたりするまでは一つのことをやれ。でもタイミングは本当に人それぞれで、他人にはあなたのそれがマルチタスクに見えることもある」

 

 なんだかとても凡庸な言葉になってしまいましたが。とりあえず私は、そのあたりを意識して生活していこうかなと考える次第です。

 

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