今日は分散学習帳というアプリのレビューをしてみようと思います。
このアプリはメンタリストDaiGoさんと弟さんが開発したもので、いかに効率良く物事を記憶するかということが開発のコンセプトとなっています。
長期記憶化が命
人間の記憶のシステムには、短期記憶と長期記憶の2種類があり、知識は長期記憶のほうに収めることができなければ、いずれ必ず忘れてしまいます。
逆に言うと、長期記憶の容量は無限大と言われており、ここに収まった知識はそう簡単には引き出せなくなることはありません。
この長期記憶には「生き延びることにとって重要なものほど優先される」と言う性質があります。命を脅かす要素だとか、ものすごく役に立った物事だとか。
生命の長い歴史を思わせる、なかなかシリアスな仕様ですね。
そんな長期記憶のシステムに対し、何らかの知識を意図的に刷り込むには、「何度も何度もその同じ知識に繰り返し触れる」という対策が有効とされています。
つまり、同じ知識に何度も触れることで、「これだけ繰り返し入ってくるということは、この情報は生きる上でとても大切なことなんだな」と脳に勘違いをさせるのです。
記憶に最適な学習タイミング
しかし最新の研究によれば、例えば毎日毎日まったく同じ知識を繰り返し読むなどして学習をするのは、あまり効率的ではないとされています。
長期記憶は「その知識が短期記憶から失われかけた時に必死になって思い出す」という作業によって、最も確実に定着するので、まだバリバリに覚えている状態で繰り返しても、意味が薄いのです。
この場合、大切なのは、人がどのようなタイミングで知識を忘れかけるかということで、それを上手に掴むことができなければ、効率の良い学習はできないということになります。
分散学習帳は、そのタイミングを自動的に計算してくれるアプリなのです。
アプリの動作
実際の使用感について説明していきましょう。
まず、このアプリは自分で作った問題と解答をインプットすることから始まります。
そしてそれを適当なタイミングで、クイズ形式で解いてみる。
答えが分かったにせよ分からなかったにせよ、「答えを見る」を選択して解答を見ます。そしてそれに対して、「わからなかった」「難しい」「普通」「余裕」の4つの選択肢の中から1つを選びます。
どれを選んだかによって、その問題が次に現れるまでの時間が変化するのです。
1番最初にその問題にチャレンジしたときには、「わからなかった」を選ぶと3分後、「難しい」を選ぶと30分後、「普通」「余裕」を選ぶと1日後、に同じ問題がもう一度出現するという仕様になっています。
この間隔が、問題を解けば解くほどどんどん長くなっていき、ある程度以上の間隔が空いたところで、その問題が訊いている知識を無事に覚えることができたとみなされるのです。
私の使い方:過去問・テキストから落とし込む
私は司法書士試験の勉強に、このアプリを活用しています。
まず第一に、過去問集を解いていき、知らない知識を必要とする問題に出くわしたら、その問題をもとに、その知識をよりダイレクトに必要とするオリジナル問題を考えて、解答とともに分散学習帳に食わせる、ということをしています。
そして第二に、テキストを読んでいて「ここの知識は問題として出されたら危ういな」と思う箇所があったときに、やはり同じようにオリジナル問題と解答を考えて、インプットしています。
こうすることで、分散学習帳の中に「今の自分の長期記憶に収まっていない知識」が集約されることになり、これを問題集として繰り返せば、知識の穴を埋めることができるというわけです。
これまでは、問題を繰り返すタイミングを自分で決めなければならなかったので、「ちょうど忘れかけたタイミングでその問題に触れる」ことをズバリ行うのが難しかったのですが、このアプリを使うことで、そのことについて考えることからは解放されました。
効能
さて、では一番肝心なこと――このアプリを使うようになって、知識がどんどん長期記憶化されるようになったでしょうか?
結論から言うと、覚えにくいものは何度出題されてもなかなか記憶に定着しません。
脳みそがどういう選択をしているのかはわからないのですが、覚えやすい知識と覚えにくい知識の差がものすごくあり、前者はこのアプリを持ち出すまでもないというほど簡単に覚えられる一方で、後者はこのアプリをもってしても一筋縄ではいきません。
これは仕方ないですね。記憶する魔法、というわけではないのですから。
不満点:間隔算定アルゴリズムがまだ甘い
アプリの仕様について一点、使いづらいところを言わせていただくと、後者の「なかなか定着しない知識」に関して、「わからなかった」をずっと選択し続けているのに、それを無視するように間隔が広がっていくんですよね。
例えば、最初に出題された時に「わからなかった」を選ぶと、次にその問題が出てくるのが3分後になります。
そして3分後にやはりまた「わからなかった」を選択すると、次にその問題が出てくるのは1日後になります。
その次にまた「わからなかった」を選ぶと、また1日後。
そしてその次にまた「わからなかった」を選ぶと、なんと次にその問題が出現するのは6日後に伸びてしまうのです。
以後、その問題はどんなにわからなくても6日ごとに出題されることになります。
しかし覚えにくい知識にとって、この6日という期間はいささか長すぎます。
このアプリにおいて最重要事項であろう「忘れかけたタイミング」よりも明らかに長期間なのです。
こちらとしては、何しろ7月第一日曜日の試験に向けて勉強しているわけですから、あまり呑気に学習をしているわけにはいかないのですが……。
この辺り、つまり適切なタイミングを決定するアルゴリズムについては、もっと改良の余地があるのではないかというのが個人的な感想です。
それでも悪くない
しかしアプリのコンセプトに関しては、本当に素晴らしいと思います。
すでに述べましたが、とにかく今の自分のあやふやな知識を機械的に集約できるだけでも大きなメリットがあります。
最悪の場合、アプリが提示するタイミングを無視して、インプットした問題を毎日片っ端から解いていくというやり方もあるわけですから。
紙の問題集を使いながら、常々夢想していたのです。
自分が知っているか知らないかに合わせて、問題が現れたり消えたりしてくれないかなあと。
この分散学習帳は、その願望の7割くらいを叶えてくれるアプリです。
やはり現代は、アナログのみにて勉強するにあらずでしょう。いろいろなテクノロジーを用いて「脳みそに良い」学習をしていくのが、2019年の当たり前のスタイルだと私は思います。
音声入力と組み合わせよう
ちなみに問題と解答のインプットには、音声入力を強く推奨します。というより、必須と言っていいのではないでしょうか。
手で入力しようとすると、一組の問題と解答を作るだけでも、テキストや過去問集とスマホの画面を交互に何度も見る必要が出てきます。
その点、音声入力だと、テキストや過去問集に視線を落としたまま、喋るだけでどんどん入力されていく。これは大きな時短でしょう。
また、「喋る」という行為自体、記憶の定着を僅かながら促進するのではないかと期待できます。
おわりに
少し話がそれましたが、そのようなわけで、アルゴリズムに若干の不満を抱えつつも、この分散学習帳は様々な人にオススメしたいアプリです。
無料なので、合わないなと思ったらすぐ削除してしまえばいい。その意味でも、トライするリスクはまったくありません。
おそらく一番向いているのは語学学習でしょう。
覚えやすい単語ほど後ろに行き、覚えにくいと思うほど手前に残って何度も出てくる単語帳を想像していただければ、このアプリの便利さがよくわかるのではないかと思います。
そもそも暗記という行為自体が時代遅れという見方もあるかもしれませんが、まだまだ世の中のシステム的に、頭に知識を詰め込むというのは自分の能力を示す上でとても重要なところに位置づけられています。
それを効率よく行うために、ぜひとも試していただきたいアイテムの1つです。
分散学習帳、どんな分野であれ、暗記と戦っている方は今すぐ勉強に組み込んでみましょう。
本アプリを使用する際には、効率的な勉強法についてDaiGoさんが書かれた、以下の本を読むことを強くおすすめいたします。